■第926回食品安全委員会
日付:令和6年1月23日(火)
議題
(1) 食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときについて
・飼料添加物 2案件(農林水産省からの説明)
飼料添加物の名称の表示に関する省令改正について
飼料添加物(プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ギ酸及びフマル酸)の含有量の表示に関する省令改正について
・農薬 1案件(環境省からの説明)
食品衛生法改正に伴う農薬登録基準の改正
(2) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
・動物用医薬品 1案件(農林水産省からの説明)
ランピースキン病生ワクチン(Bovilis Lumpyvax-E)を接種した牛に由来する食品の安全性
(3) 薬剤耐性菌に関するワーキンググループにおける審議結果について
・「アミノグリコシド系抗生物質が家畜に投与された場合に選択される薬剤耐性菌」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(4) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・農薬「キノフメリン」に係る食品健康影響評価について
・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「発芽スイートルーピン抽出たんぱく質」に係る食品健康影響評価について
・遺伝子組換え食品等「JPAo006株を利用して生産されたリパーゼ」に係る食品健康影響評価について
・遺伝子組換え食品等「JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼ」に係る食品健康影響評価について
(5) その他
審議の内容
(1) 食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときについて
本年1月17日付けで、農林水産大臣より、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律に基づき定められた飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の改正に関して、食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する「食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないとき」への該当の是非について照会がありました。
照会があった、
・表示で用いることができる名称を通知で定めること、及び
・飼料中に含まれるプロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、ギ酸及びフマル酸については、原料又は材料となる飼料に含有量を表示すること
のうち、
・前者については飼料添加物や成分規格に関係しない規定の整備に伴う改正であり、食品健康影響評価の実施が必要な規格基準の改正には当たらないこと、
・後者については、現行のリスク管理措置に変更はなく、人の健康に影響を及ぼすことはないと考えられること
等から、いずれも同規定に該当すると判断し、農林水産大臣に通知することとしました。
また、同日付けで、環境大臣より、生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律に基づく告示の改正について、食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する「食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないとき」への該当の是非について照会がありました。
これについて、同法律の施行に伴う規定の整理のための改正であり、人の健康に影響を及ぼすものではないことから、同規定に該当すると判断し、環境大臣に通知することとしました。
(2) リスク管理機関からの説明
家畜伝染病予防法に基づく届出伝染病に位置付けられているランピースキン病について、これまで国内では発生は確認されていないものの、近年韓国等の近隣諸国で発生が継続していることを受けて、同病の予防に向けたランピースキン病生ワクチン(Bovilis Lumpyvax-E)の輸入・備蓄に向けて、本年1月17日付けで農林水産大臣より食品健康影響評価の要請があり、本日説明を受けました。
本品目については、今後動物用医薬品専門調査会で審議することとしました。
(3) 薬剤耐性菌に関するワーキンググループにおける審議結果
〇アミノグリコシド系抗生物質が家畜に投与された場合に選択される薬剤耐性菌
アミノグリコシド系抗生物質(アプラマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、ストレプトマイシン、フラジオマイシン)を動物用医薬品として家畜に投与した場合に選択される薬剤耐性菌について、2022年6月15日付けで、農林水産大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、薬剤耐性菌に関するワーキンググループで審議したものです。
同ワーキンググループが、リスクを発生、ばく露及び影響評価の結果を基に総合的に推定した結果、これまでに得られている科学的知見に基づく現時点での評価としては、
・アミノグルコシドが、動物用医薬品として牛、馬、豚及び鶏に使用された結果としてハザードである大腸菌又は腸球菌が選択され、牛、馬、豚及び鶏由来の畜産食品を介して人がハザードにばく露され、人用抗菌性物質による治療効果が減弱又は喪失する可能性は否定できない。ハザードである大腸菌及び腸球菌についてリスクの程度はいずれも低度であると考えるとともに、
・薬剤耐性菌については、現時点では詳細な科学的な知見や情報が必ずしも十分とは言えず、リスク評価の手法についても最新の知見を踏まえた見直しを随時行うことが重要と考えるため、国際機関における検討状況等を含め新たな科学的知見・情報の収集が必要である
としました。
この審議結果(案)については、1月24日(水)から2月22日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(4) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
〇 農薬「キノフメリン」
キノフメリンについては、企業からの、稲、トマト等に使用する新たな農薬として登録申請を受けて、2023年7月12日付けで厚生労働大臣から残留農薬基準の設定に向けた食品健康影響評価の要請があったことから、農薬第五専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。
期間中2件の意見が提出されましたが、専門調査会の結論と同様、許容一日摂取量(ADI)を0.03 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)を0.3 mg/kg 体重と設定し、厚生労働大臣に通知することとしました。
〇 食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「発芽スイートルーピン抽出たんぱく質」
発芽スイートルーピン抽出たんぱく質については、企業からの、野菜類、トマト等に使用する新たな農薬として登録申請を受けて、2023年3月8日付で、厚生労働大臣から残留基準の設定に向けて、「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質」に該当するかについて食品健康影響評価の要請があったことから、農薬第四専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。
期間中1件の意見が提出されましたが、発芽スイートルーピン抽出たんぱく質は、農薬として想定しうる使用方法に基づき使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれがないことが明らかであると判断し、一部字句の修正を加えるものの、専門調査会の結論を変えることなく厚生労働大臣に通知することとしました。
〇 遺伝子組換え食品等「JPAo006株を利用して生産されたリパーゼ」
JPAo006株を利用して生産されたリパーゼについては、Aspergillus oryzae IFO4177株を宿主とし、変異を導入したThermomyces lanuginosus CBS586.94株由来のリパーゼ遺伝子及びFusarium oxysporum DSM2672株由来のリパーゼ遺伝子を基に全合成した改変遺伝子の導入等を行ったJPAo006株を利用して生産されたリパーゼです。2023年8月22日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。
期間中意見の提出はなく、本添加物は「人の健康を損なうおそれはない」と判断し、一部字句の修正を加えるものの、専門調査会の結論を変えることなく厚生労働大臣に通知することとしました。
〇 遺伝子組換え食品等「JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼ」に係る食品健康影響評価について
JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼについては、Aspergillus oryzae IFO4177株を宿主として、Valsaria rubricosa ATCC24940株由来のホスホリパーゼ遺伝子の導入等を行った、JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼです。2023年5月22日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。
期間中意見の提出はなく、専門調査会における結論と同様、本添加物は「人の健康を損なうおそれはない」と判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。
当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20240123fsc