■第922回 食品安全委員会

日付:令和5年11月28日(火)
 

議題

 

(1)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・農薬 7品目(厚生労働省からの説明)

イソフェタミド

カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミル

ジンプロピリダズ

スピロテトラマト

ダゾメット、メタム及びメチルイソチオシアネート

フルキサメタミド

フルペンチオフェノックス

・動物用医薬品 1品目(評価申請の取下げ)(厚生労働省からの説明)

トビシリン

・農薬 2品目(農林水産省からの説明)

カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミル

ピペロニルブトキシド

・プリオン 1案件(農林水産省からの説明)

牛肉骨粉等の鶏・豚等飼料への利用再開について

(2)  汚染物質等専門調査会における審議結果について

・「カドミウム」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)  動物用医薬品専門調査会における審議結果について

・「フェノキシエタノールを有効成分とするすずき目魚類の薬浴剤(バイオネンネ)」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(4)  遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

・「JPAo006株を利用して生産されたリパーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(5)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・動物用医薬品「ブロフラニリドを有効成分とする鶏舎噴霧剤(リブケアFL)」に係る食品健康影響評価について

(6)  その他

 

審議の内容

 

(1)  リスク管理機関からの説明

 

本年11月21日付けで厚生労働大臣より農薬7品目、動物用医薬品の評価要請取下げ1品目、また農林水産大臣より農薬2品目及びプリオン1案件についてそれぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

「イソフェタミド」については過去に評価したことがあります(2022年6月28日に第3版を答申)。今回企業から、この農薬をはくさい、すいか等にも使用したいとの申請がありました。今回、毒性や代謝に関する試験成績の提出はなかったことから、薬事・食品衛生審議会でばく露評価を行った結果、これまで食品安全委員会が設定している許容一日摂取量(ADI)、急性参照用量(ARfD)を、ともに超えなかったとのことでした。

 

「カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミル」のうち、「チオファネートメチル」及び「ベノミル」については国内で農薬登録されています。

ポジティブリスト導入時に、「カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミル」の総和に対しても暫定基準値が設定されていますが、「チオファネートメチル」をぶどう、非結球レタスにも、「ベノミル」を大麦、ライ麦にもそれぞれ使用したいとの申請があったことや、「チオファネート」が国内外で使用されていない状況を踏まえ、改めて、「カルベンダジム、チオファネートメチル及びベノミル」として基準値を設定したいとのことです。

 

また、飼料についても、ポジティブリスト制度導入された際に、牧草及び穀類(えん麦、大麦、小麦、とうもろこし、マイロ及びライ麦)に対し、これら農薬の総和として暫定基準値が設定されていますが、食用作物と同様に「チオファネート」が国内外で使用されていない等の状況を踏まえて、今後、「カルベンダジム、チオファネートメチル及びベノミル」としての残留基準の改正を検討したいとのことです。

 

「ジンプロピリダズ」については、ばれいしょ、ブロッコリー等に使用する新たな農薬として登録申請があったとのことです。

 

「スピロテトラマト」については、過去に評価したことがあります(2018年5月22日に第4版を答申)。今回企業から、この農薬をだいこん、ねぎにも使用したいとのことです。

 

「ダゾメット、メタム及びメチルイソチオシアネート」については、過去に評価したことがあります(2019年8月27日に第2版を答申)。今回企業から、「タゾメット」を、らっかせいにも使用したいとのことです。

 

「フルキサメタミド」については、過去に評価したことがあります(2022年3月9日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬をかぶ、にんにくにも使用したいとの申請がありました。また、この農薬を使用した、その他なす科野菜を輸入する計画があるとのことです。

毒性や代謝に関する試験成績が提出されなかったことから、薬事食品衛生審議会でばく露評価を行った結果、食品安全委員会が既に設定しているADIを超えなかったとのことです。

 

「フルペンチオフェノックス」については、ぶどう、いちご等に使用する新たな農薬として登録申請があったとのことです。

 

「ピペロニルブトキシド」については、ポジティブリスト導入時に、飼料中の暫定基準として、穀類(えん麦、大麦、小麦、とうもろこし、マイロ及びライ麦)を対象とした残留基準が設定された農薬です。

 

以上の農薬のうち、「イソフェタミド」及び「フルキサメタミド」については、作物残留試験の結果のみ提出されており、薬事食品衛生審議会でばく露評価を行った結果ADI及びARfDを超えていないことが確認されていることから、評価書を改定せず「イソフェタミド」のADIを0.053 mg/kg 体重/日、ARfDを3 mg/kg 体重と設定、「フルキサメタミド」のADIを0.0085 mg/kg 体重/日と設定、ARfDについては設定する必要がないと判断して、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

また、「タゾメット、メタム及びメチルイソチアシネート」については、作物残留試験のほかに皮膚刺激性試験の結果が提出されましたが、これまでの評価で既に考慮されており、既存の評価結果に影響を及ぼすとは認められないことから、専門調査会による審議を経ることなく、今後委員会において審議することとしました。

 

「ジンプロピリダズ」及び「スピロテトラマト」については農薬第五専門調査会において、「フルペンチオフェノックス」については農薬第四専門調査会において、それぞれ審議することとしました。

 

「カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル及びベノミル」については、チオファネートを除いた「カルベンダジム、チオファネートメチル及びベノミル」として、農薬第二専門調査会で審議することとしました。

 

「ピペロニルブトキシド」については、今後、動物用医薬品専門調査会において審議を行った後に、農薬第三専門調査会で審議することとしました。

 

「トビシリン」については、2008年6月2日付けで、食品衛生法第13条第1項の規定に基づき、食品中の残留基準の設定に向けた食品健康影響評価の要請があったところです。今般企業から製造販売の承認を取消してほしいとの連絡があったことから、厚生労働大臣から評価要請を取り下げたいとのことです。

 

2001年9月のBSE初確認後、牛、めん羊及び山羊に由来する肉骨粉、加水分解たん白質、蒸製骨粉、血粉及び血しょうたん白質(以下「牛肉骨粉等」)を含む動物由来たん白質の飼料利用を禁止しています。

今般、2002年1月生まれの牛を最後にBSEの発生はなく、2013年以降、国際獣疫事務局による「無視できるBSEリスク」のステータスを10年以上維持するなどBSE発生リスクが低下していることから、新たな措置を含めたリスク管理措置の実施を前提として、牛肉骨粉等の鶏・豚等用飼料への利用再開を検討したいとのことです。

 

今後プリオン専門調査会で審議することとしました。

 

(2)  汚染物質等専門調査会における審議結果について

 

〇 カドミウム

 

カドミウムについては、過去に評価したことがあります(2010年4月28日に第2版を答申)。2008年9月5日付けで厚生労働大臣から、「ガラス製、陶磁器又はホウロウ引きの器具又は容器包装」についての溶出量等の改正に向けた食品健康影響評価の要請があったことから情報収集等を経て、2021年から汚染物質専門調査会で審議を行ってきました。

 

我が国における汚染地域と非汚染地域の住民を対象とした、食事からのカドミウム摂取量と近位尿細管機能障害の有病率との関連を調べた疫学調査の結果から、TWI(耐容週間摂取量)を7 μg/kg 体重/週と設定しました。また2022年の食事からの推定カドミウム摂取量は2.03 μg/kg 体重/週であり、TWIの約30%という低い値であったことから、一般の日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に影響を及ぼす可能性は低いと判断しました。

 

この審議結果(案)については、11月29日(水)から12月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(3)  動物用医薬品専門調査会における審議結果について

 

〇 フェノキシエタノールを有効成分とするすずき目魚類の薬浴剤(バイオネンネ)

 

バイオネンネについては、フェノキシエタノールを有効成分とするすずき目魚類に使用する薬浴剤として、本年3月8日付けで農林水産大臣から、動物用医薬品の製造販売の承認に向けた食品健康影響評価の要請があったことから、動物用医薬品専門調査会において審議を行いました。

その結果、

・フェノキシエタノールについては、これまでの評価でADIが0.46 mg/kg 体重/日と提案されていること

・ぶり及びまだいを対象とした残留試験において、ぶりでは浸漬1日後以降、筋肉、肝臓及び腎臓中のフェノキシエタノールは定量下限未満、まだいでは浸漬1日後において、筋肉5試料中1試料、肝臓5試料中3試料から微量で検出された以外は、全て定量下限未満であったこと

・ぶり及びまだいを対象とした安全性試験及び臨床試験の結果、常用量で適切に使用する場合、本製剤投与によるぶり及びまだいに対する安全性に問題はないと考えたこと

から、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断しました。

 

この審議結果(案)については、11月29日(水)から12月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(4)  遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

 

〇 JPAo006株を利用して生産されたリパーゼ

 

JPAo006株を利用して生産されたリパーゼについては、Aspergillus oryzae  IFO4177株を宿主とし、変異を導入したThermomyce lanuginosus CBS586.94株由来のリパーゼ遺伝子及びFusarium oxysporum DSM2672株由来のリパーゼ遺伝子を基に全合成した改変遺伝子の導入等を行ったJPAo006株を利用して生産されたリパーゼです。本年8月22日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会で審議を行いました。

今回挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性、アレルギー誘発性等について確認した結果、従来の添加物と比較して新たに安全性を損なうおそれのある要因は認められなかったことから、本添加物は「人の健康を損なうおそれはない」と判断しました。

 

〇 JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼ

 

JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼについては、Aspergillus oryzae IFO4177株を宿主として、Valsaria rubricosa ATCC24940株由来のホスホリパーゼ遺伝子の導入等を行った、JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼです。本年5月22日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことを受けて、遺伝子組換え食品等専門調査会で審議を行いました。

今回挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性、アレルギー誘発性等について確認した結果、従来の添加物と比較して新たに安全性を損なうおそれのある要因は認められなかったことから、本添加物は「人の健康を損なうおそれはない」と判断しました。

 

以上2品目の審議結果(案)については、11月29日(水)から12月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(5)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

 

〇 リブケアFL

 

本製剤については、企業から鶏舎に使用する新たな動物用医薬品の製造販売に向けた承認申請があったことを受けて、動物用医薬品専門調査会での審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中2件の意見が提出されましたが、専門調査会における結論と同様、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断し、農林水産大臣に通知することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20231128fsc