■第920回 食品安全委員会

日付:令和5年11月14日(火)
 

議題

 

(1)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・動物用医薬品 1案件(農林水産省からの説明)

動物用ワクチンの添加剤として使用する成分(植物性ペプトン、鶏卵の卵黄成分)

(2)  動物用医薬品専門調査会における審議結果について

・「フェノキシエタノール」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)  遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

・「Raα3114株を利用して生産されたプロテアーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(4)  微生物・ウイルス専門調査会における審議結果について

・「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の改正について」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(5)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・農薬及び動物用医薬品「フェニトロチオン」に係る食品健康影響評価について

(6)  令和6年度食品安全モニター募集について

 

審議の内容

 

(1)  リスク管理機関からの説明

 

動物用医薬品の治験に当たっては、治験使用薬が残留していることにより人の健康を損なうおそれのある動物の肉、乳その他の生産物が食用に供されることのないよう、必要な措置を講じなければなりません。

他方、治験使用薬に含まれる添加剤が、食品安全委員会によって評価済みの成分のみである場合には、動物用ワクチンとして休薬期間を不要とする一方で、評価済み成分以外の成分を含む場合には、治験の実施までに食品安全委員会の評価を受け、その評価を踏まえて休薬期間を判断する運用としています。

 

これに関連して、本年11月8日付けで農林水産大臣より、植物性ペプトンと鶏卵の卵黄成分について評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

委員会は、食用の豆類由来タンパク質源を酵素で加水分解した植物性ペプトン、鶏卵の卵黄成分はいずれも食品に該当するものとして、動物用ワクチンの添加剤として使用される限りにおいて人の健康に及ぼす影響が変わるものではないと考えました。

よって、食品安全基本法第11条第1項第2号の「人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかであるとき」に該当すると判断して、農林水産大臣に通知することとしました。

 

(2)  動物用医薬品専門調査会における審議結果について

 

〇 フェノキシエタノール

 

魚類の麻酔剤である「フェノキシエタノール」を、すずき目魚類に使用したいとの承認申請があったことを受けて、本年3月8日付けで厚生労働大臣から残留基準の設定に向けて評価の要請があったことから、動物用医薬品専門調査会で審議しました。

各種毒性試験の結果から、毒性学的許容一日摂取量(ADI)=0.46 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

この審議結果(案)については、11月15日(水)から12月14日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(3)  遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

 

○Raα3114株を利用して生産されたプロテアーゼ

 

本添加物は、Bacillus subtilis Marburg 168株由来を宿主として、Thermus aquaticus YT1株由来のプロテアーゼ遺伝子を導入して作製した組換え体を用いて生産されたプロテアーゼです。本添加物は、グルテンを分解する酵素であり、製パン・製菓の生地の品質向上を目的として使用されます。2020年9月28日付けで厚生労働大臣から、食品健康影響評価の要請がありました。

今回挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性、アレルギー誘発性等について確認した結果、従来の添加物と比較して新たに安全性を損なうおそれのある要因は認められなかったことから、本添加物は「人の健康を損なうおそれはない」と判断しました。

 

この審議結果(案)については、11月15日(水)から12月14日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(4)  微生物・ウイルス専門調査会における審議結果

 

〇 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の改正について

 

乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品については、食品衛生法第13条第1項に基づく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により規格基準が定められています。

事業者団体から摂氏10度以下での保存を要しない製品に係る規格基準を設定することについて要望があったことを受けて、本年8月31日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、微生物・ウイルス専門調査会で審議しました。

 

10℃以下での保存(冷蔵)が必要な牛乳等については、既に省令に基づき管理・製造が行われているところですが、常温かつ長期間の保存を目的に、製品の商業的無菌状態を確保するための殺菌条件等を追加・変更するものです。

現行の規制に基づく衛生管理を前提とすれば、この改正に伴うリスク管理措置以外は、現状と変わるものではないため、リスク要因となることはないと判断しました。

 

また、現状の牛乳等に対して、今般の改正による新たなリスク管理措置を導入したとしても、以下の理由から人の健康へのリスクが高まるとは考え難いと判断しました。

 

・成分規格の改正は、製品中に微生物の増殖を認めないことが確認され、適切な管理の下に製造されたことを検証するものであること。

・殺菌後重点製品及び充填後殺菌製品に係る製造基準及び保存基準の改正は、商業的無菌状態を確保するための条件等を明確化したものであり、「120℃で4分加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する殺菌方法」は、製品中の微生物に対して十分な加熱殺菌効力を有するものであること。

・記録の保存の改正については、常温で長期間保存する製品の特性を踏まえた上で適正化を図るものであること。

 

この審議結果(案)については、11月15日(水)から12月14日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(5)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

 

〇 農薬及び動物用医薬品「フェニトロチオン」

 

フェニトロチオンについては、過去に評価したことがあります(2017年8月22日に第2版を答申)。企業から、てんさい及びにらにも使用したいとの申請があったことを受けて、本年5月24日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、農薬第二専門調査会で審議を行いました。

これに際して、厚生労働省から、作物残留試験(てんさい及びにら)、家畜代謝試験(ヤギ、ニワトリ及びうずら)、畜産物残留試験(ウシ及びニワトリ)の成績等が新たに提出されましたが、各種毒性試験の結果から、ADI=0.0049 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)=0.036 mg/kg 体重と設定しました。

 

なお、本件の諮問理由は、農薬の適用拡大のみであり、動物用医薬品の審議結果に影響を及ぼすものではないと考えられることから、動物用医薬品専門調査会での審議は必要ないとしました。

 

また、この審議結果は、既存の結果を変更するものではないことから、意見・情報の募集は行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。

 

(6)  令和6年度食品安全モニター募集について

 

食品の安全確保に関する施策について食品安全委員会に直接ご意見をお寄せいただく「食品安全モニター」の募集要項について確認し、令和6年度の食品安全モニター130名程度を、12月1日(金)から来年1月25日(木)まで公募することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20231114fsc