トランス脂肪酸の健康影響について、今もなお、正確ではない情報が世の中にあふれています。どのように捉えたらよいのでしょうか?

 

トランス脂肪酸は脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがあり、トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種です。トランス脂肪酸には、牛などの反すう動物の胃の中の微生物によって天然に生成され乳製品や肉に含まれるものと、植物油などの食用油を液体から半固体又は固体にするための加工処理(部分水素添加)や脱臭処理の際に生成するものとがあります。

 

諸外国の研究でトランス脂肪酸の過剰摂取が冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)を増加させる可能性が高いとされ、WHO(世界保健機関)は2003年に食事からとるトランス脂肪酸の量を、総エネルギー摂取量の1%に相当する量より少なくするよう提示しました。世界各国は、トランス脂肪酸の摂取量を減らすため様々な取組みをしています。

日本国内でも、食品製造事業者が自主的にトランス脂肪酸の低減に向けた取組を進めています。

 

食品安全委員会は、2012年に食品中に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価を行い、日本人の平均的な食生活では、トランス脂肪酸の摂取量は、食事からとる総エネルギー摂取量の0.3%相当で、WHOの目標値より大幅に低く、健康への影響は小さいと考えられると発表しています。その一方で、脂質に偏った食事をしている人は、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると注意呼びかけています。

 

引き続き、脂質全体のとりすぎに注意し、動物、植物、魚由来の脂質をバランスよくとるとともに、栄養バランスのよい食生活を心がけることが何より大切なのです。

 

食品安全委員会の松永委員が、トランス脂肪酸に関する解説コラムを執筆しています。こちらもご覧ください。

https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/01_toransushibosan.html

 

なお、食品安全委員会は、トランス脂肪酸について、食品事業者における食品中のトランス脂肪酸含有量の低減化の取組みも進められていることや日本人の食生活の変化等を踏まえ、最新の国内の調査データに基づき、日本人における摂取量推計を行う調査研究を令和5~6年度に実施することとしています。トランス脂肪酸については、関係省庁が様々な情報を提供していますので、こちらもご参照ください。

 

食品安全委員会・評価書食品に含まれるトランス脂肪酸

https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20120308001

食品安全委員会・食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価について

https://www.fsc.go.jp/osirase/trans_fat.html

農林水産省・トランス脂肪酸に関する情報

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/index.html

厚生労働省・トランス脂肪酸に関するQ&A

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091319.html

日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書

https://a.msip.securewg.jp/docview/viewer/docN74728A975B7F66a1a4649ac0120ab68be03541647756356634afebcc6c2ceaea5a939cf574cc

 

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