■第911回 食品安全委員会
日付:令和5年9月5日(火)
議題
(1) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質1品目(厚生労働省からの説明)
アナカルド酸
・農薬 4品目(厚生労働省からの説明)
カルタップ、チオシクラム及びベンスルタップ
ジアフェンチウロン
フェンプロピジン
ブプロフェジン
・農薬及び動物用医薬品 1品目(厚生労働省からの説明)
シフルトリン
・動物用医薬品 1品目(厚生労働省からの説明)
モサプリド
・飼料添加物 1品目(農林水産省からの説明)
カシューナッツ殻液
・動物用医薬品 2品目(農林水産省からの説明)
アセトアミノフェンを有効成分とする豚の経口投与剤(アレンジャー30)
アセトアミノフェンを有効成分とする豚の経口投与剤(ピレキシン10%)
(2) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・動物用医薬品「マルボフロキサシン」に係る食品健康影響評価について
(3) 肥料・飼料等専門調査会における審議結果について
・「マルボフロキサシンを有効成分とする豚の注射剤(フォーシルS)」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(4) その他
審議の内容
(1) リスク管理機関からの説明
8月30日付けで、厚生労働大臣から「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質」1品目、農薬4品目、農薬及び動物用医薬品1品目、動物用医薬品1品目、また、同日付で農林水産大臣から、飼料添加物1品目、動物用医薬品2品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。
○ 食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質
アナカルド酸については、農林水産大臣からの牛用飼料として飼料添加物の指定に係る意見聴取を受けた厚生労働大臣から、食品健康影響評価の要請がありました。カシューナッツの殻液の主成分であるアルキルフェノールであることから、同項に該当するのではないかと問われています。
今後肥料・飼料等専門調査会において審議することとしました。
○ 農薬
カルタップ、チオシクラム及びベンスルタップについては、過去に評価したことがあります(2019年6月4日に第1版を答申)。企業から、カルタップをみかん、かぶ等にも使用したいとの申請がありました
ジアフェンチウロンについては、国内で農薬登録されていますが、ポジティブリスト導入時に暫定基準が設定された農薬です。既に設定された暫定基準がリスク管理措置として妥当かを問われています。
フェンプロピジンについては、我が国で登録されていませんが、今回企業からこの農薬を使用したバナナを輸入する計画があることから、残留基準の設定依頼があったとのことです。
ブプロフェジンについては、過去に評価したことがあります(2019年6月18日に第4版を答申)。今回企業から、この農薬をパイナップルにも使用したいとの申請がありました。
以上4品目のうち、「カルタップ、チオシクラム及びベンスルタップ」については農薬第五専門調査会、「ジアフェンチウロン」については農薬第二専門調査会、「フェンプロピジン」については農薬第三専門調査会においてそれぞれ審議することとしました。
○ 農薬及び動物用医薬品
シフルトリンについては、過去に評価したことがあります(2021年6月8日に第1版を答申)。農林水産省から鶏について追加資料の提出があり、鶏の脂肪、卵等への残留基準の設定依頼があったとのことです。
本品目については、今回、家畜残留試験及びばく露評価の結果のみの追加であり、既存の評価結果に影響を及ぼすとは認められないことから、専門調査会による調査審議を経ることなく、今後委員会において審議を行うこととしました。
○動物用医薬品
モサプリドについては、過去に評価したことがあります(2022年7月27日に第2版を答申)。新たに牛に対する消化器官用薬として使用したいとして、乳への残留基準の設定依頼があったとのことです。
本品目については、厚生労働省の説明内容から「新たな科学的知見の存在が確認できないとき」に該当するものとして、食品安全基本法第11条第1項第2号の「人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかであるとき」に該当すると判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。
○飼料添加物
上述したアナカルド酸を主成分とするカシューナッツ殻液について、飼料添加物としての指定、基準及び規格の設定並びに当該飼料添加物を含む飼料の基準及び規格の設定に向けた意見聴取がありました。
今後、肥料・飼料等専門調査会において審議することとしました。
○動物用医薬品
アセトアミノフェンを有効成分とする豚の経口投与剤(アレンジャー30)については、過去に評価しています(2010年6月3日に答申)。企業から再審査の申請があったとのことです。
アセトアミノフェンを有効成分とする豚の経口投与剤(ピレキシン10%)についても、過去に評価しています(2011年11月24日に答申)。企業から再審査の申請があったとのことです。
以上二品目については、今回新たに提出された使用成績に関する資料、安全性に関する資料及び外国における承認状況等に関する資料を確認したところ、新たに安全性について懸念されるような知見は認められず、既存の評価結果に影響を及ぼす可能性は認められないと考えられたことから、専門調査会による調査審議を経ることなく、今後委員会において審議を行うこととしました。
(2) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
○ マルボフロキサシン
フルオロキノロン系抗菌性物質である「マルボフロキサシン(MBFX)」については、過去に評価しています(本年5月17日に第2版を答申)。「マルボフロキサシンを有効成分とする豚の注射剤(フォーシルS)」の製造販売承認申請に合わせて、豚を用いた薬物動態試験及び残留試験の成績が提出されました。
各種毒性試験の結果から、毒性学的許容一日摂取量(ADI)は0.004 mg/kg 体重/日と設定された一方で、微生物学的ADIは0.0072 mg/kg 体重/日でした。
双方を比較すると、毒性学的ADIの値がより小さく、感受性が高いと考えられたことから、MBFXのADIは0.004 mg/kg 体重/日と設定しました。
この審議結果については、既存の評価結果を変更するものではないことから、意見・情報の募集は行わないこととしました。
(3) 肥料・飼料等専門調査会における審議結果
○ フォーシルS
上述のMBFXの評価結果のほか、
・本製剤に使用される添加剤は、その使用状況、既存の評価結果及び本製剤の用法・用量を考慮すると、本製剤の含有成分として摂取した場合の人への健康影響は無視できる程度と考えられたこと、
・豚における残留試験では、組織中濃度は腎臓で最も高値であり、投与2日後に最高値を示したものの、多くの組織では投与7日後には著しく減少し、腎臓では投与12日後に半数例で定量下限未満となったこと、
・豚の安全性試験及び臨床試験では、本製剤の豚への常用量の投与について、安全性に問題ないと考えられたこと
から、専門調査会は、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断しました。
合わせて、本製剤の使用に当たっては、MBFXがフルオロキノロン系抗菌性物質であることから、薬剤耐性菌に関する食品健康影響評価において、リスクの程度が中程度であると評価されていることに留意する必要があるとしています。
この審議結果(案)については、9月6日(水)から10月5日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230905fsc