■第910回 食品安全委員会

日付:令和5年8月29日(火)
 

議題

 

(1)  食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・遺伝子組換え食品等2品目(厚生労働省からの説明)

JPAo006株を利用して生産されたリパーゼ

チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ(DP910521)

・遺伝子組換え食品等1品目(農林水産省からの説明)

チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ(DP910521)

(2)  農薬第一専門調査会における審議結果について

・「イソチアニル」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「チオベンカルブ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「チフルザミド」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「ブタクロール」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)  肥料・飼料等専門調査会における審議結果について

・「タイロシン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「3-ニトロオキシプロパノール」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「3-ニトロオキシプロパノールを有効成分とする飼料添加物」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(4)  食品健康影響評価技術研究及び食品安全確保総合調査の優先実施課題(令和6年度)(案)

(5)  その他

 

審議の内容

 

(1)  リスク管理機関からの説明

 

8月22日付けで、厚生労働大臣から遺伝子組換え食品2品目について、農林水産大臣からも遺伝子組換え食品等1品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

JPAo006株を利用して生産されたリパーゼは、Aspergillus oryzae  IFO4177株を宿主とし、変異を導入したThermomyce lanuginosus CBS586.94株由来のリパーゼ遺伝子及びFusarium oxysporum DSM2672株由来のリパーゼ遺伝子を基に全合成した改変遺伝子の導入等を行ったJPAo006株を利用して生産されたリパーゼです。本品目は、製パン工程で配合される乳化剤の代替として添加されるものであり、用途及び使用形態は既存のリパーゼと相違ありません。

 

チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グリホシネート耐性トウモロコシ(DP910521)は、イネ科トウモロコシ属のトウモロコシ(Zea mays subsp. mays (L.) Iltis)のデント種PH184C系統を宿主とし、チョウ目害虫抵抗性の付与を目的として、Bacillus thuringiensis由来の改変遺伝子を導入するとともに、除草剤グリホサート耐性を付与するため、Streptomyces viridochromogenes由来の遺伝子を導入して作出したものです。

本品目は、食品や飼料として、従来のトウモロコシと同じ目的・方法で使用されるものであり、遺伝子組換え食品及び飼料としての安全性を問われています。

 

以上三品目については、今後遺伝子組換え食品等専門調査会において、それぞれ審議することとしました。

 

(2)  農薬第一専門調査会における審議結果

 

イソチアニル、チオベンカルブ、チフルザミド及びブタクロールの農薬4品目については、農薬取締法第8条第4項に基づき行われる農薬の再評価に向けて、イソチアニルについては2022年12月14日付けで、その他3品目については2022年9月28日付けで、それぞれ農林水大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

 

イソチアニルは稲いもち病に防除効果を示す殺菌剤で、初回農薬登録は2010年です。再評価に当たり、新たに家畜代謝試験(ヤギ及びニワトリ)、遺伝毒性試験の成績、公表文献報告書等が提出されました。

各種試験結果から、ばく露評価対象物質をイソチアニル(親化合物)とした上で、ADI = 0.028 mg/kg 体重/日と設定し、ARfDについては設定する必要がないと判断しました。

 

チオベンカルブは、1970年に初回農薬登録された除草剤です。再評価に当たり、新たに家畜代謝試験(ヤギ及びニワトリ)、公表文献報告書等が提出されました。

各種試験結果から、ばく露対象物質をチオベンカルブ(親化合物)とした上で、ADI=0.009 mg/kg 体重/日、ARfD=1 mg/kg 体重と設定しました。

 

チフルザミドは、1997年に初回農薬登録された殺菌剤です。再評価に当たり、新たに遺伝毒性試験の成績、公表文献報告書等が提出されました。

各種試験結果から、ばく露評価対象物質をチフルザミド及びその代謝物とした上で、ADI = 0.014 mg/kg 体重/日、ARfD=0.25 mg/kg 体重と設定しました。

 

ブタクロールは、1973年に初回農薬登録された除草剤です。再評価に当たり、新たに作物残留試験(水稲)、急性毒性試験(経口投与、ラット)及び復帰突然変異試験の成績、公表文献報告書等が提出されました。

各種試験結果から、ばく露対象物質をブタクロール(親化合物)とした上で、ADI=0.01 mg/kg 体重/日、ARfD=0.49 mg/kg 体重と設定しました。

 

なお、事務局から以下の通り補足説明がありました。

・上記農薬に関する調査審議を行う過程においても、公表文献の収集・選択については、当時見直し作業中であった「公表文献の収集、選択等のためのガイドライン」(令和5年7月27日農林水産省農業資材審議会農薬分科会決定の一部改正)の内容を考慮して行っていること、

・再評価対象以外の農薬の評価を行う場合も同様に、使用者への影響評価を受けて検討された使用基準を踏まえて、厚生労働省に精緻なばく露評価を報告してもらう方針であること。

 

以上の審議結果(案)については、8月30日(水)から9月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(3)  肥料・飼料等専門調査会における審議結果

 

○    タイロシン

 

タイロシンについては、過去に評価したことがあります(2019年3月5日に第3版を答申)。この製剤は、現在牛、蜜蜂等に使用する動物用医薬品として承認されていますが、企業から蜜蜂への使用方法を追加したいとの申請があったことを受けて、本年7月13日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、JECFAレポート、動物用医薬品承認申請時資料等を用い評価を実施しました。

 

本有効成分については、今回、はちみつの残留試験成績が新たに提出されましたが、各種毒性試験の結果から、毒性学的ADI=0.39 mg/kg 体重/日と設定することが適当であると考えました。一方、微生物学的ADIは、0.011 mg/kg 体重/日でした。

双方を比較すると、微生物学的ADIの値がより小さく、毒性学的な安全性も担保していると考えられることから、本成分のADIを0.011 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

○    3-ニトロオキシプロパノール

 

3-ニトロオキシプロパノール(3-NOP)については、牛の噯気(げっぷ)中のメタンガス削減を目的として飼料に使用した場合の食品中の残留基準の設定に向けて、本年3月8日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

各種毒性試験の結果から、ADI=1 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

○    3-ニトロオキシプロパノールを有効成分とする飼料添加物

 

3-NOPを飼料に使用する新たな添加物として指定するとともに、製造用原体及び製剤の成分規格及び基準等を設定したいとのことで、本年3月7日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価の要請がありました。前の議題の3-NOPの評価結果のほか、

・3-NOPを有効成分とする飼料添加物に含まれている賦形物質等は、その使用状況及び既存の評価並びに本飼料添加物の用法・用量を考慮すると、本飼料添加物の含有成分として摂取した場合の人への健康影響は無視できる程度と考えられたこと、

・残留試験では、本飼料添加物を牛に混餌投与した結果、組織中においては、代謝物は定量下限未満であったが、乳中の濃度は用量依存的及び経時的に増加する傾向が見られたこと、

・牛(乳用牛及び肉用牛)の安全性及び飼養試験の結果から、本飼料添加物の推奨添加物量での添加について、牛に対する安全性に問題はないと考えられること

から、専門調査会は、本飼料添加物が、飼料添加物として適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断しました。

 

以上の審議結果(案)については、8月30日(水)から9月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(4)  食品健康影響評価技術研究及び食品安全確保総合調査の優先実施課題(令和6年度)(案)

 

冒頭、本課題案においては、新たなリスク評価手法(NAMs)や、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の研究課題を追加するとともに、「食品健康影響評価を担う若手専門家の育成枠」を設けている旨説明がありました。

 

本件については、案の通り決定することとし、今後、公募等の手続きを進めることとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230829fsc