■第900回 食品安全委員会

日付:令和5年5月30日(火)
 

議題

 

(1)令和5年度食品健康影響評価依頼予定物質について(食品中の暫定基準を設定した農薬等)(厚生労働省からの報告)

(2)令和5年度食品健康影響評価依頼予定物質について(飼料中の暫定基準を設定した農薬)(農林水産省からの報告)

(3)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に係るリスク管理機関からの説明について

・農薬4品目(厚生労働省からの説明)

イソピラザム

プロシミドン

フロニカミド

ポリオキシンD亜鉛塩

・農薬及び動物用医薬品1品目(厚生労働省からの説明)

フェニトロチオン

・遺伝子組換え食品等1品目(厚生労働省からの説明)

JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼ

(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「シンナムアルデヒド」に係る食品健康影響評価について

・動物用医薬品及び薬剤耐性菌「マルボフロキサシンを有効成分とする牛及び豚の注射剤(マルボシル2%、同10%)」に係る食品健康影響評価について

・遺伝子組換え食品等「Geobacillus stearothermophilus TP7株を利用して生産されたプロテアーゼ」に係る食品健康影響評価について

(5)その他

 

審議の内容

 

(1)令和5年度食品健康影響評価依頼予定物質について(食品中の暫定基準を設定した農薬等)

厚生労働省から、今年度食品安全委員会に評価を依頼する予定の物質について、説明を受けました。

 

厚生労働省は2006年5月、食品中に残留する農薬等に係るポジティブリスト制度の導入に伴い、760物質について暫定的な基準値を設定し、評価に必要な資料の収集及び整理ができたものから順次、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼してきました。

 

食品安全委員会では、本年3月31日までに760物質のうち701物質について評価依頼を受け、569物質について評価を終えています。まだ評価依頼が行われていない59物質のうち、厚生労働省において資料を収集できているもの、資料の有無を確認中のものが、合わせて35物質あり、今年度資料の準備ができたものから評価依頼が行われる予定です。

 

資料を収集できていない24物質については、一律基準によるリスク管理措置の実施等を検討するとともに、現在の暫定基準値の妥当性について評価を依頼することも検討するとしています。

 

このほか、2022年度に暫定基準値を見直した農薬等12物質について、推定摂取量の試算結果の報告を受けました。いずれの物質も許容一日摂取量(ADI)に対する推定摂取量の割合は80%を下回っていること等について報告されました。

 

(2)令和5年度食品健康影響評価依頼予定物質について(飼料中の暫定基準を設定した農薬)

 

農林水産省から、今年度食品安全委員会に評価を依頼する予定の8物質が示されました。

 

(3)リスク管理機関からの説明

 

厚生労働大臣より、本年5月24日付けで農薬4品目、農薬及び動物用医薬品1品目について、また本年5月22日付けで遺伝子組換え食品等1品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

イソピラザムについては、過去に評価したことがあります(2022年5月31日に第4版を答申)。今回企業から、この農薬をもも類にも使用したいとの申請がありました。また、この農薬を使用した、その他なす科の野菜を輸入する計画があるとのことです。

 

プロシミドンについても、過去に評価したことがあります(2021年2月16日に第3版を答申)。今回畜産物の追加資料の提出がありました。

 

フロニカミドについても、過去に評価したことがあります(2022年2月22日に第8版を答申)。今回企業から、この農薬を葉ごぼうにも使用したいとの申請がありました。

 

ポリオキシンD亜鉛塩についても、過去に評価したことがあります(2021年6月8日に第1版を答申)。今回企業から、この農薬をアスパラガスにも使用したいとの申請がありました。

 

フェニトロチオンについても、過去に評価したことがあります(2017年8月22日に第2版を答申)。今回企業から、てんさい及びにらにも使用したいとの申請がありました。

委員会では、フェニトロチオンについては再評価ではなくあくまでも適用拡大に関する評価要請であること、また、有機リン系の成分であることから発達神経毒性についても議論を行うことが確認されました。

 

以上5品目のうち、フロニカミド及びポリオキシンD亜鉛塩については、作物残留試験結果のみの追加であり、既存の評価結果に影響を及ぼすとは認められないので、専門調査会の調査審議を経ることなく、今後委員会で審議することとしました。

また、イソピラザム及びプロシミドンについては、農薬第四専門調査会において、フェニトロチオンについては、農薬第二専門調査会において、今後それぞれ審議することとしました。

 

JPAo011株から生産されたホスホリパーゼについては、Aspergillus oryzae IFO4177株を宿主して、Valsaria rubricosa ATCC24940株由来のホスホリパーゼ遺伝子の導入等を行った、JPAo011株を利用して生産されたホスホリパーゼです。本品目は、コムギ、鶏卵などを含むパン又は菓子パンの製造における物性の向上を目的として使用されます。今回企業から遺伝子組換え添加物の安全性審査の申請がありました。

 

今後、遺伝子組換え食品等専門調査会で審議することとしました。

 

(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見

 

○ シンナムアルデヒド

 

シンナムアルデヒドは、ポジティブリスト制度導入時に食品衛生法第13条第3項に基づく「人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定めるもの」として規定されています。

企業から、トマト、なす等に使用する新たな農薬(製剤)としての登録申請があり、2022年8月24日付けで、改めて厚生労働大臣から同規定に基づく人の健康を損なうおそれのないことが明らかである物質として定めることに関して、食品健康影響評価の要請がありました。その後、農薬第四専門調査会、肥料・飼料等専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。

 

期間中意見の提出はなく、専門調査会における結論と同じ、農薬及び飼料添加物として想定しうる使用方法に基づき通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○ マルボシル2%、同10%

 

マルボシル2%及び同10%については、企業から再審査の申請があったことを受けて本年5月17日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

 

リスク評価機関により提出された資料の内容から、新たに安全性について懸念される知見は認められず、本製剤の薬剤耐性菌を介した影響については、

・フルオロキノロン系抗菌性物質が、牛及び豚に使用された結果としてハザードが選択され、牛及び豚由来食品を介して人がハザードにばく露され、人用抗菌性物質による治療効果が減弱又は喪失する可能性は否定できず、リスクの程度は中等度であると判断するとともに、

・なお、薬剤耐性菌については、現時点では詳細な科学的知見や情報が必ずしも十分とは言えず、また、リスク評価の手法についても国際的にも十分確立されていないと考えられるため、国際機関における検討状況等を含め新たな科学的知見・情報の収集が必要であるとしました。

 

また、本製剤の安全性に係る評価については、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断しました。ただし、本製剤の使用に当たっては、薬剤耐性菌に関する食品健康影響評価の結果に留意する必要があるとしています。

 

これらの審議結果については、既存の評価結果に影響を与えるものではなかったことから、意見・情報の募集は行わずに農林水産大臣に通知することとしました。

 

○ Geobacillus stearothermophilus TP7株を利用して生産されたプロテアーゼ

 

本添加物は、Geobacillus stearothermophilus TP1株由来の変異育種株を宿主として、G.  stearothermophilus TP1株由来の別の変異育種株由来のプロテアーゼ遺伝子を導入して作製した組換え体を用いて生産されたものです。本添加物は、タンパク質のペプチド結合をエンド型で加水分解し、ペプチドやアミノ酸液を生成する酵素であり、食品加工に使用されます。

本年1月10日付けで厚生労働大臣から、食品健康影響評価の要請があったことから、遺伝子組換え食品等専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。

期間中1件の意見が提出されましたが、専門調査会における結論と同じ、「人の健康を損なうおそれはない」と判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230530fsc