■第893回 食品安全委員会

日付:令和5年3月14日(火)
 

議題

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質1品目(厚生労働省からの説明)

発芽スイートルーピン抽出たんぱく質

・農薬3品目(厚生労働省からの説明)

1-メチルシクロプロペン

クロルフルアズロン

テブフェンピラド

・農薬及び動物用医薬品1品目(厚生労働省からの説明)

ブロフラニリド

・動物用医薬品1品目(厚生労働省からの説明)

フェノキシエタノール

・飼料添加物1品目(厚生労働省からの説明)

3-ニトロオキシプロパノール

・飼料添加物1品目(農林水産省からの説明)

3-ニトロオキシプロパノール

・動物用医薬品2品目(農林水産省からの説明)

バイオネンネ

リブケアFL

 

(2)農薬第三専門調査会における審議結果について

・農薬「1,4-ジメチルナフタレン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(3)肥料・飼料等専門調査会における審議結果について

・肥料「菌体りん酸肥料」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「酸化亜鉛」に係る食品健康影響評価について

・農薬「プロチオコナゾール」に係る食品健康影響評価について

・農薬「シフルフェナミド」に係る食品健康影響評価について

・農薬「フェナミホス」に係る食品健康影響評価について

・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「次硝酸ビスマス」に係る食品健康影響評価について

・動物用医薬品「次硝酸ビスマスを有効成分とする牛の乳房注入剤(オルベシール)」に係る食品健康影響評価について

 

(5)その他

 

審議の内容

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

 

本年3月8日付けで、厚生労働大臣から「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働省が定める物質」1品目、農薬3品目、農薬及び動物用医薬品1品目、動物用医薬品1品目及び飼料添加物1品目について、農林水産大臣から、本年3月7日付けで飼料添加物1品目、3月8日付けで動物医薬品2品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

○「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働省が定める物質」1品目

 

発芽スイートルーピン抽出たんぱく質については、今回企業から、野菜類、トマト等に使用する新たな農薬として登録申請があったことから、厚生労働大臣から残留基準の設定に向けた食品健康影響評価の要請がありました。海外では食用に使われているスイートルーピン豆から抽出したたんぱく質を有効成分としていることから、同項に該当するかについて問われています。

今後、農薬第四専門調査会で審議することとしました。

 

○農薬3品目

 

1-メチルシクロプロペンについては、過去に評価したことがあります(2020年9月1日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬をブロッコリーにも使用したいとの申請がありました。また、この農薬を使用したトマトやアボカドを輸入する計画があるとのことです。

 

クロルフルアズロンについても、過去に評価したことがあります(2022年4月21日に第2版を答申)。今回企業から、キャベツの追加資料の提出がありました。

 

テブフェンピラドについても、過去に評価したことがあります(2018年5月22日に第1版を答申)。今回この農薬を使用したとうがらしを輸入する計画があるとのことです。

 

以上3品目のうち、クロルフルアズロン及びテブフェンピラドについては、作物残留検査結果のみの追加であり、既存の評価結果に影響を及ぼすとは認められないとので、専門調査会の審議を経ることなく、今後委員会で審議することしました。

また、1-メチルシクロプロペンについては、安全性薬理試験等が提出されていることから、今後、農薬第三専門調査会で審議することとしました。

 

○農薬及び動物用医薬品1品目

 

ブロフラニリドについても、過去に評価したことがあります(2021年5月25日に第1版を答申)。今回企業から、この農薬を未成熟とうもろこし、だいず等にも使用したいとの申請がありました。また、鶏舎に使用する新たな動物用医薬品の製造販売に向けた承認申請がありました。

今後、動物用医薬品専門調査会で審議した後に、農薬第二専門調査会で審議することとしました。

 

○動物用医薬品1品目

 

フェノキシエタノールについては、すずき目魚類に使用したいとの承認申請がありました。今後、動物用医薬品専門調査会で審議することとしました。

 

○飼料添加物1品目

 

3-ニトロオキシプロパノールについては、牛の噯気(げっぷ)中のメタンガス削減を目的として飼料に使用する新たな添加物として指定するとともに、製造用原体及び製剤の成分規格及び基準等を設定したいとのことです。今後肥料・飼料等専門調査会で審議することとしました。

 

○動物用医薬品2品目

 

バイオネンネについては、フェノキシエタノールを有効成分とするすずき目魚類に使用する薬浴剤として、動物用医薬品の製造販売に向けた承認申請がありました。

 

リブケアFLについては、ブロフラニドを有効成分とする鶏舎内のワクモを駆除する噴霧剤として、動物用医薬品の製造販売に向けた承認申請がありました。

 

以上の2品目について、今後動物用医薬品専門調査会で審議することとしました。

 

(2)農薬第三専門調査会における審議結果

 

○農薬「1,4-ジメチルナフタレン」

 

1,4ジメチルナフタレンについては、これまで食品安全委員会で評価を行ったことはありません。今回、この農薬を使用したばれいしょが輸入される計画があることから、2021年12月8日付けで厚生労働大臣から、残留農薬基準の設定に向けた食品健康影響評価の要請がありました。

各種毒性試験の結果から、許容一日摂取量(ADI)=0.10 mg/kg 体重/日と設定し、急性参照用量(ARfD)は設定の必要なしと判断しました。

 

この審議結果(案)については、3月15日(水)から4月13日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(3)肥料・飼料等専門調査会における審議結果

 

○肥料「菌体りん酸肥料」

 

汚泥資源を原料として使用する肥料のうち、品質管理を徹底し、含有すべき主成分としてりん酸を保証できるものについて、「菌体りん酸肥料」として公定規格を新たに定めるとともに、これに使用可能な原料として、原料規格に「排水処理活性沈殿物」を追加することについて、2023年2月8日付けで、農林水産大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

原料及び製造方法が同一の汚泥肥料等の知見を整理し、汚泥肥料との比較による評価を行った結果、

・原料、製品、施肥後の土壌中の重金属類(ヒ素、カドミウム、ニッケル、クロム、水銀及び鉛)の濃度及び係る管理措置が講じられることを踏まえ、この肥料が含有する可能性のある重金属類について、この肥料を施用して栽培した農作物の摂取を通じて人の健康に悪影響を及ぼす可能性は低い、

・公定規格の設定は、既に使用が認められている汚泥肥料の規格に含有すべき主成分の最小量を追加するとともに、農林水産大臣による事前確認を受けた品質管理計画に基づき、肥料成分や重金属類濃度に関する定期的な分析等の品質管理を導入する規格を新設するものである。また、有害成分に関しては、汚泥肥料と同等の規制を設けることとされていることなどから、この肥料が適切に使用される限りにおいては、汚泥肥料と比較して、食品を通じて人の健康に及ぼす影響が変わるものではない

と判断しました。

 

なお、事務局より、品質管理の徹底等のリスク管理措置の適切な実施と併せて、重金属類以外の危害要因について原料となる汚泥資源に係る最新の知見の収集を行っていくよう、リスク管理機関に伝達する旨補足説明がありました。

 

この審議結果(案)については、3月15日(水)から4月13日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

 

○食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「酸化亜鉛」

 

酸化亜鉛については、2022年10月19日付けで、厚生労働大臣から評価要請があったことから、農薬第五専門調査会における審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中意見の提出はなく、専門調査会における結論と同じ、酸化亜鉛を、農薬として想定しうる使用方法に基づき通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○農薬「プロチオコナゾール」

 

プロチオコナゾールについては、過去に評価したことがあります(2019年6月18日に第4版を答申)。企業から、小麦への使用時期を変更したいとの申請があったことから、2022年12月14日付けで、厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

その際、土壌中運命試験、作物残留試験(小麦及びてんさい)、急性毒性試験(マウス、代謝物M17)の成績等が新たに提出されましたが、各種毒性試験の結果から、ADI=0.011 mg/kg 体重/日、一般集団に対してARfD=0.02 mg/kg 体重/日、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対してARfD=1 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

なお、この審議結果は既存の評価結果に影響を与えるものではなかったことから、意見・情報の募集は行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○農薬「シフルフェナミド」

 

シフルフェナミドについては、過去に評価したことがあります(2020年1月14日に第3版を答申)。企業から、この農薬をなし、さやえんどう等にも使用したいとの申請があったことから、2022年12月14日付けで厚生労働大臣から、食品健康影響評価の要請がありました。その際、作物残留試験(なし、さやえんどう等)、家畜代謝試験(ヤギ及びニワトリ)、畜産物残留試験(ウシ及びニワトリ)、急性毒性試験(代謝物D、E及びP、ラット)、遺伝毒性試験(代謝物D、E及びP)の成績等が新たに提出されましたが、各種毒性試験の結果から、ADI=0.041 mg/kg 体重/日と設定し、ARfDは設定の必要なしと判断しました。

 

この審議結果も既存の評価結果に影響を与えるものではなかったことから、意見・情報の募集は行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○農薬「フェナミホス」

 

フェナミホスについては、我が国で承認されていませんが、海外で使用されていることからポジティブリスト制度導入時に暫定基準が設定された農薬です。

2009年3月24日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、海外の評価機関(JMPR、EFSA及びEPA)の作成した評価書等を参照して農薬第一専門調査会で審議を行った後、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中1件の意見が提出されましたが、専門調査会における結論と同じ、ADI=0.0008 mg/kg 体重/日、ARfD=0.0025 mg/kg 体重/日と設定し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「次硝酸ビスマス」

 

牛に対する乳房注入剤として使用したいとして、2022年8月24日付けで厚生労働大臣から評価要請がありました。食品衛生法第13条第3項の規定に基づく、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)に該当するかについて問われたものです。その後、肥料・飼料等専門調査会における審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中意見の提出はなく、専門調査会の結論と同じ、動物用医薬品として通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なう可能性は無視できる程度と判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○動物用医薬品「次硝酸ビスマスを有効成分とする牛の乳房注入剤(オルベシール)」

 

オルシベールについては、動物用医薬品としての製造販売の承認に向けて、次硝酸ビスマスと同日付で農林水産大臣から評価要請があったことから、肥料・飼料等専門調査会における審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中意見の提出はなく、専門調査会の結論と同じ、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断し、農林水産大臣に通知することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230314fsc