■第887回 食品安全委員会

日付:令和5年1月31日(火)
 

議題

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・農薬1品目(農林水産省からの説明)

グリホサート

 

(2)企画等専門調査会における審議結果について

・食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補の選定について

・令和5年度食品安全委員会運営計画について

・令和4年度食品安全委員会緊急時対応訓練結果及び令和5年度食品安全委員会緊急時対応訓練計画について

 

(3)添加物専門調査会における審議結果について

・「ポリビニルアルコール」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(4)農薬第四専門調査会における審議結果について

・「キザロホップエチル及びキザロホップPテフリル」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(5)肥料・飼料等専門調査会における審議結果について

・「次硝酸ビスマス」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「次硝酸ビスマスを有効成分とする牛の乳房注入剤(オルベシール)」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(6)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・農薬「グルホシネート」に係る食品健康影響評価について

・遺伝子組換え食品等「長鎖多価不飽和脂肪酸含有及びイミダゾリノン系除草剤耐性セイヨウナタネLBFLFK」

 

(7)その他

 

審議の内容

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

 

グリホサートについては、農薬取締法第8条第4項に基づき行われる農薬の再評価の要請があり、今回説明を受けました。

これに関して農林水産省より、公表文献ガイドラインに基づき、評価目的との適合性の確認を行った上で文献を提出する予定であるとの説明があったことから、事務局からも、公表文献の収集、選択プロセスを見つつ、妥当性を確認した上で評価を進めていく方針である旨、返答しています。

今後、農薬第1専門調査会で調査・審議を行うこととしました。

 

(2)企画等専門調査会の審議結果について

 

○ 食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補

 

令和5年度に食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補として、同専門調査会から報告のあった「有機フッ素化合物」を案件として決定しました。

 

○令和5年度の運営計画

 

リスク評価業務の効率化や評価技術の高度化を図るため、データベースやAI等デジタル技術の活用可能性について検討を推進することなどを内容として盛り込んだ同計画について了承し、今後意見・情報の募集を行います。

 

○令和5年度の緊急時対応訓練

 

前年度までの訓練の成果を活かしつつ、必要な改善を行った上で、令和5年度についても引き続き緊急時対応に係る研修及び確認訓練を実施することとしました。委員からは、実務者研修に関して、内容を精査する一方で、コンパクトでわかりやすくかつ実務的な内容とすべきとの意見がありました。

 

(3)添加物専門調査会における審議結果について

 

○ポリビニルアルコール

 

「ポリビニルアルコール」については、2022年6月22日付けで、厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。カプセルや錠剤等を対象にコーティング剤等として使用されます。

 

本添加物は、ポリビニルアルコール(PVA)のほか、不純物として酢酸メチル及びメタノールが挙げられ、さらに酢酸メチルについてはメタノールと酢酸に分解することから、PVAに加え、メタノール及び酢酸に係る知見を踏まえ、総合的に「ポリビニルアルコール」の評価を行いました。

 

PVAについては、一日摂取量が、国民平均で590 mg/人/日(11 mg/kg 体重/日)、小児で370 mg/人/日(23 mg/kg 体重/日)と推計されます。これと合わせて、消化管でほとんど吸収されないことや、毒性試験において最高用量である5,000 mg/kg 体重/日まで毒性所見が認められないことなどから、許容一日摂取量(ADI)を設定する必要はないと判断しました。

 

メタノールについては、「ポリビニルアルコール」由来の推定一日摂取量が0.15 mg/kg 体重/日(国民平均)、0.32 mg/kg 体重/日(小児)であり、通常の食習慣におけるメタノールの摂取量(国民平均:2.0 mg/kg 体重/日、小児:0.81 mg/kg 体重/日)及びFDAが設定したADI(7.1~8.4 mg/kg 体重/日)を考慮すると、「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、「ポリビニルアルコール」由来のメタノールは、安全性に懸念がないと判断しました。

 

酢酸については、「ポリビニルアルコール」由来の摂取量(国民平均:5.0 mg/kg 体重/日、小児:3.6 mg/kg 体重/日)が、食事由来の摂取量(130~520 mg/kg 体重/日)と比較して少ないことを評価した結果、「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、「ポリビニルアルコール」由来の酢酸は、安全性に懸念がないと判断しました。

 

以上から、「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断しました。

 

この審議結果(案)について、2月1日(水)から3月2日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(4)農薬第4専門調査会における審議結果について

 

○キザロホップエチル及びキザロホップPテフリル

 

キザロホップエチル及びキザロホップPテフリルについては、過去に評価したことがあります(2014年4月8日に第2版を答申)。企業から、だいず、ブロッコリー、ごぼう等にもこの農薬を使用したいとの申請があったほか、これら農薬を使用した大麦及び小麦を輸入する計画があることから、2022年10月19日付けで厚生労働大臣から残留基準設定の申請がありました。

キザロホップエチルとキザロホップPテフリルは、エステル部分の構造が異なり、同一の物として合わせて評価できないことから、個別に評価するとともに、動物体内及び植物体内での代謝経路は同様であることを考慮して総合評価を実施しました。

 

キザロホップエチルについては、新たに、作物残留試験(国内:ブロッコリー、ごぼう等、海外:小麦及び大麦)、家畜代謝試験(ヤギ及びニワトリ)及び畜産物残留試験(ウシ及びニワトリ)の成績が提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.009 mg/kg 体重/日と設定するものの、ARfDは設定する必要がないと判断しました。

キザロホップPテフリルについては、EU(EFSA)及び豪州(APVMA)が作成した評価書等を参照して評価しました。その結果から、ADI=0.013 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)=0.3 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

以上の結果を総合的に判断して、キザロホップエチル及びキザロホップPテフリルのグループADIを0.009 mg/kg 体重/日、同じくグループARfDを0.3 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

この審議結果(案)について、2月1日(水)から3月2日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(5)肥料・飼料等専門調査会における審議結果について

 

○次硝酸ビスマス

 

次硝酸ビスマス(BSN)については、乳頭管を物理的に塞ぐことにより、乾乳期の乳房炎を予防する効果があるとされています。牛に対する乳房注入剤として使用したいとして、2022年8月24日付けで厚生労働大臣から評価要請がありました。食品衛生法第13条第3項の規定に基づく、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)に該当するかについて問われています。

 

動物用医薬品の製造販売承認申請書等を用いた評価の結果、

・乳房注入剤を投与した牛が生産する牛乳・乳製品由来のビスマス推定摂取量が、最大と試算された7~14歳において17.0 μg/人/日であったこと、

・BSNは、人用医薬品として主に下痢症に対して1日2 gの経口投与で使用されていること、

・欧州では、人の食品由来ビスマスの摂取量は5~20 μg/人/日であるとされ、その大部分は吸収されず、糞便に直接排泄されると報告されていること

などから、動物用医薬品としてBSNを投与された牛に由来する牛乳・乳製品中のビスマス濃度は、人の健康に影響を与える濃度ではなく、動物用医薬品として通常使用される限りにおいて、食品に残留することより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると判断しました。

 

○次硝酸ビスマスを有効成分とする牛の乳房注入剤(オルシベール)

 

オルシベールについては、動物用医薬品としての製造販売の承認に向けて、BSNと同日付で農林水産大臣から評価要請がありました。

上述した評価結果に加えて、

・添加剤の使用状況、既存の評価及び本製剤の用法・用量を考慮すると、本製剤の含有成分として摂取した場合の人への健康影響は無視できる程度であると考えられたこと、

・牛の安全性試験及び臨床試験の結果、本製剤を常用量で適切に使用する場合、牛の安全性に問題はないと考えられたこと

などから、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断しました。

 

これら審議結果(案)について、2月1日(水)から3月2日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(6)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

 

○農薬「グルホシネート」(除草剤)

 

グルホシネートは、過去に評価したことがあります(2022年3月9日に第4版を答申)。企業から、この農薬をごまにも使用したいとの申請があったことから、厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

 

グルホシネートには、光学異性体(L体及びD体)が存在し、ラセミ体であるグルホシネートと活性本体であるL体を選択的に含有するグルホシネートPがあります。これらは同一のものとして合わせて評価できないことから、個別に評価した上で、これらが使用される実場面を考慮して総合評価を実施しました。

 

グルホシネートについては、今回新たな毒性に関する試験成績等の追加提出はなく、ADI=0.019 mg/kg 体重/日、ARfD=0.055 mg/kg 体重/日は第4版から変更はありません。

グルホシネートPについては、今回作物残留試験(ごま)の成績等が新たに提出されましたが、毒性に関する試験成績等の追加提出はなく、ADI=0.0091 mg/kg 体重/日、ARfD=0.01 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

したがって、総合評価としても、グルホシネートのADI=0.0091 mg/kg 体重/日、ARfD=0.01 mg/kg 体重/日に変更はありません。このため、意見・情報の募集は行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○遺伝子組換え食品等「長鎖多価不飽和脂肪酸含有及びイミダゾリノン系除草剤耐性セイヨウナタネLBFLFK」

 

本系統は、セイヨウナタネ(Brassica napus L.)のキャノーラ品種のKumilyを宿主とし、卵菌類、海洋微生物藻類、コケ等に由来する7種のデサチュラーゼ遺伝子及び3種のエロンガーゼ遺伝子を導入して作出されたものです。

2020年10月20日付けで厚生労働大臣から、食品の安全性に係る食品健康影響評価を要請されたことから、遺伝子組換え等食品専門調査会での審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

期間中に1件の意見が提出されましたが、専門調査会における結論と同じ、「人の健康を損なうおそれはない」と判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

また、同系統を用いた遺伝子組換え飼料の安全性について、2020年10月19日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、同専門調査会での審議を行いました。その結果、

・本系統では、新たな有害物質が生成されることはないため、畜水産物中に新たな有害物質が移行することは考えられないことや、

・遺伝子組換えに起因する成分が畜産物中で有害物質に変換される可能性、人の健康に影響に影響を与えるような、意図した成分以外の成分が蓄積・濃縮される可能性及び家畜の代謝系に作用した新たな有害物質が生成される可能性は考えられないこと

から、「遺伝子組換え飼料及び飼料添加物の安全性評価の考え方」に照らして、改めて安全性評価を行う必要はなく、当該飼料を摂取した家畜等に由来する畜水産物については、人の健康を損なうおそれはないと判断されることから、意見・情報の募集は行わずに

農林水産大臣に通知することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230131fsc