■第885回 食品安全委員会

日付:令和5年1月17日(火)
 

議題

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・動物用医薬品1品目(農林水産省からの説明)

馬鼻肺炎生ワクチン(エクエヌテクトERP)

・遺伝子組換え食品等3品目(厚生労働省からの説明)

Geobacillus stearothermophilus TP7株を使用して生産されたプロテアーゼ

Trichoderma reesei RF6197株を使用して生産されたペクチナーゼ

Trichoderma reesei RF6201株を使用して生産されたペクチナーゼ

 

(2)農薬第一専門調査会における審議結果について

・「フェナミホス」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(3)農薬第五専門調査会における審議結果について

・「酸化亜鉛」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(4)動物用医薬品専門調査会における審議結果について

・「シフェノトリン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

・「d・d-T-シフェノトリンを有効成分とする豚舎噴霧剤(カーボジェット、ファームクリン)」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(5)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・農薬「ピジフルメトフェン」に係る食品健康影響評価について

・農薬「ピリベンカルブ」に係る食品健康影響評価について

・飼料添加物「ギ酸を有効成分とする飼料添加物(水酸化ナトリウム混和製剤)」に係る食品健康影響評価について

 

(6)その他

 

審議の内容

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

 

エクエヌテクトERPについては、過去に評価を行ったことがあります(平成25年4月1日付けで農林水産大臣に答申)。企業から再審査の申請があったことから、本年1月11日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

本製剤については、再審査に向けて新たに提出された資料を確認したところ「安全性を懸念させる研究報告及び副作用いずれも認められない」ことから、食品安全基本法第11条第1項第2号の「人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかであるとき」に該当すると認められることを農林水産大臣に通知することとしました。

 

また、本年1月10日付けで、厚生労働大臣から、遺伝子組換え食品等の3品目についてそれぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。

 

プロテアーゼは、ペプチドやアミノ酸液等のタンパク質加水分解物を製造する目的で使用します。

Geobacillus stearothermophilus TP7株を使用して生産されたプロテアーゼ」は、Geobacillus stearothermophilus TP5株を宿主とし、G.  stearothermophilus TP3株由来のプロテアーゼ遺伝子の導入等を行った組換え体を用いて生産されたものです。用途及び使用形態は既存のプロテアーゼと違いはなく、米国等において食品添加物として使用実績があるとのことです。

 

ペクチナーゼは、ジュースやピューレにおける粘度低下や清澄作用、ワイン製造における清澄作用や抽出率の向上、小麦などから小麦粉を作る際の生産率の向上、コーヒーの抽出率の向上、香料製造時の植物原料からの抽出率の向上の目的で使用します。

Trichoderma reesei RF6197株を使用して生産されたペクチナーゼ」は、Trichoderma reesei QM6a株を宿主とし、Aspergillus tubingensis 由来のポリガラクツロナーゼ遺伝子の導入等を行い、形質転換を経て得られた組換え体を用いて生産されたポリガラクツロナーゼです。

また、「Trichoderma reesei RF6201株を使用して生産されたペクチナーゼ」は、Trichoderma reesei QM6a株を宿主とし、Aspergillus tubingensis 由来のペクチンエステラーゼ遺伝子の導入等を行い、形質転換を経て得られた組換え体を用いて生産されたペクチンエステラーゼです。

いずれも用途及び使用形態は既存のペクチナーゼと違いはなく、米国、デンマーク及びフランス等において承認等を受けているとのことです。

 

これら遺伝子組換え食品等3品目については、遺伝子組換え食品等専門調査会において、それぞれ審議することとしました。

 

(2)農薬第一専門調査会における審議結果

 

フェナミホスについては、我が国で承認されていませんが、ポジティブリスト導入時に暫定基準が設定された農薬です。2009年3月29日付けで、厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請を受けています。今回、海外の評価機関(JMPR、EFSA及びEPA)の作成した評価書等を参照して評価を行いました。

その結果、許容一日摂取量(ADI)、急性参照用量(ARfD)ともに、JMPR及びEFSAの評価が妥当と判断して、ADI=0.0008 mg/kg 体重/日、ARfD=0.0025 mg/kg 体重/日と設定しました。

なお事務局より、国内、米国及びEUでは当該農薬が登録されていないので、日本人のばく露量は小さいと考えられるものの、今後暫定基準値見直しの際に確認する旨、補足説明がありました。

 

(3)農薬第五専門調査会における審議結果

 

酸化亜鉛については、2022年10月19日付けで、厚生労働大臣から評価要請がありました。企業から、ももに使用する新たな農薬として登録申請があったことから、農薬として使用した場合に、食品を介して摂取する量と通常の食生活で摂取する量を比較しつつ、「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働省が定める物質」に該当するかについて問われています。

各種毒性試験や亜鉛の推定摂取量等の結果から、酸化亜鉛を、農薬として想定しうる使用方法に基づき通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかであると判断しました。

 

(4)動物用医薬品専門調査会における審議結果

 

シフェノトリンについては、残留基準値設定に向けて、昨年7月19日付けで厚生労働大臣から評価の要請がありました。また、d-d-T-シフェノトリンを有効成分とする豚舎噴霧剤(カーボジェット、ファームクリン)についても、動物用医薬品としての製造販売についての承認に向けて、同日付で農林水産大臣から評価の要請がありました。

 

各種毒性試験の結果から、d-d-T-シフェノトリン及びd-T80-シフェノトリンを含む、シフェノトリンのADIを0.015 mg/kg 体重/日と設定しました。また、カーボジェット、ファームクリンについては、この評価結果に加えて、

①本製剤に使用されている添加剤について、その使用状況、本製剤の用法・用量等を考慮すると、本製剤の含有成分として摂取した場合の人への健康影響は無視できる程度と考えられること

②本製剤は、豚を全頭搬出後に使用して、使用後に豚を入舎する際には、必ず豚舎を水洗することとしており、水洗後の豚舎内の構造物において有効成分d-d-T-シフェノトリンの量は微量であるとの試験結果が確認されていることから、豚に移行するd-d-T-シフェノトリンも微量であると推察されたこと

等から、本製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断しました。

 

(2)~(4)の審議結果(案)については、1月18日(水)から2月16日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(5)食品安全委員会の意見

 

○ピジフルメトフェン

 

ピジフルメトフェン(殺菌剤)については、過去に評価したことがあります(2019年11月12日に第1版を答申)。企業から、かんきつ及びりんごに使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したてんさい、こまつな等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。

今回、作物残留試験(国内:温州みかん、りんご等、海外:てんさい、こまつな等)、動物体内動態試験(肝ミクロソームによるin vitro代謝試験)、28日間亜急性毒性試験、遺伝毒性試験の成績等が新たに提出されましたが、農薬第三専門調査会の結論と同じ、ADI=0.099 mg/kg 体重/日、ARfD=0.3 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

○ピリベンカルブ

 

ピリベンカルブ(殺菌剤)についても、過去に評価したことがあります(2021年6月15日に第4版を答申)。企業から、この農薬をはなやさい類及び畜産物にも使用したいとの申請がありました。

今回家畜代謝試験(ヤギ及びニワトリ)、作物残留試験(ブロッコリー)、畜産物残留試験(ウシ)、急性毒性試験、遺伝毒性試験の成績等が新たに提出されましたが、農薬第三専門調査会の結論と同じ、ADI=0.039 mg/kg 体重/日、ARfD=1.1 mg/kg 体重/日と設定しました。

 

これら農薬二品目については、いずれも既存の評価結果に影響を与えるものではなかったことから、意見・情報の募集は行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○ギ酸を有効成分とする飼料添加物(水酸化ナトリウム混和製剤)

 

本製剤は、2022年6月29日付けで農林水産大臣から、飼料添加物の基準及び規格の改正に向けた食品健康影響評価を要請がありました。その後肥料・飼料等専門調査会の審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

パブリックコメントの期間中に2件の意見が提出されましたが、「飼料添加物として適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度」と判断し、農林水産大臣に通知することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230117fsc