■第882回 食品安全委員会
日付:令和4年12月13日(火)
議題
(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
・添加物1品目(厚生労働省からの説明)
亜塩素酸水
・動物用医薬品1品目(農林水産省からの説明)
ツラスロマイシン及びケトプロフェンを有効成分とする牛の注射剤(ドラクシンKP)
(2)動物用医薬品専門調査会における審議結果について
・「クロステボル」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
・「トリブロムサラン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(3)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・農薬「インピルフルキサム」に係る食品健康影響評価について
・農薬「セトキシジム」に係る食品健康影響評価について
・農薬「ピカルブトラゾクス」に係る食品健康影響評価について
・農薬「フルキサピロキサド」に係る食品健康影響評価について
・農薬及び添加物「ジフェノコナゾール」に係る食品健康影響評価について
(4)その他
審議の内容
(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
○亜塩素酸水
亜塩素酸水は、塩化ナトリウム飽和溶液を塩酸酸性条件下で電解して得られる塩素酸ナトリウムに、硫酸及び過酸化水素水を加えて得られる塩素系殺菌料です。本年12月1日付けで厚生労働大臣から、使用基準の改正に向けた食品健康影響評価を要請され、今回説明を受けました。
今回、新たにアレルゲン性に関する資料が提出されたことから、現時点で既存の評価結果に影響を及ぼす可能性があるため、今後、添加物専門調査会で議論することとしました。
○ツラスロマイシン及びケトプロフェンを有効成分とする牛の注射剤(ドラクシンKP)
この製剤は、牛の発熱を伴う細菌性肺炎に効果があるとされています。本年12月7日付けで、農林水産大臣から動物用医薬品としての製造販売の承認に向けた食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。
今後、動物用医薬品専門調査会及び肥料・飼料等専門調査会に加えて、薬剤耐性菌ワーキングループでも審議することとしました。
(2)動物用医薬品専門調査会における審議結果
○クロステボル、トリブロムッサラン
「クロステボル」及び「トリブロムッサラン」は、ポジティブリスト制度導入時に暫定基準が設定された動物用医薬品で、2020年3月17日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。既に設定された暫定基準値が、リスク管理措置として妥当かどうかを問われています。
専門調査会は、厚生労働省から提出されたクロステボル及びトリブロサムランの資料に基づきそれぞれ評価を行いましたが、いずれも最小無毒性量(NOAEL)等を判断できる毒性試験は確認することができず、現行のリスク管理の妥当性を判断できませんでした。このため、これらの成分が食品を介して人の健康に及ぼす影響を評価することはできないと判断しました。
なお、審議において、厚生労働省が、これらの成分について今後暫定基準を廃止し、一律基準を設定して管理する等を検討する方針であることや、これらの成分は、既に国内で承認が取消され使用されておらず、また海外の主要国でも使用が確認されていないことから、消費者が家畜由来の食品を介してこれらの成分を摂食する可能性は低いと考えていることについて、事務局から補足がありました。
これらの審議結果(案)について、12月14日(木)から1月12日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(3)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
○インピルフルキサム(殺菌剤)
インピルフルキサムについては、過去に評価したことがあります(2018年10月23日に第1版を答申)。企業から、この農薬をばれいしょ、はくさい等にも使用したいとの申請がありました。
今回作物残留試験(ばれいしょ、はくさい等)の成績等のみが提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、許容一日摂取量(ADI)=0.06 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)=0.3 mg/kg 体重/日は、第1版から変更していません。
○セトキシジム(除草剤)
セトキシジムについても、過去に評価したことがあります(2018年12月4日に第1版を答申)。今回企業から、この農薬をキノアにも使用したいとの申請がありました。
今回作物残留試験(キノア)の成績等のみが提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.088 mg/kg 体重/日、ARfD=1.8 mg/kg 体重/日は、第1版から変更していません。
○ピカルブトラゾクス(殺菌剤)
ピカルブトラゾクスについても、過去に評価したことがあります(2019年7月30日に第2版を答申)。企業から、この農薬をさといも、いちご等にも使用したいとの申請がありました。
今回作物残留試験(さといも、いちご等)の成績等のみが提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.023 mg/kg 体重/日と設定するものの、ARfDについては設定する必要はないとの結論は、第2版から変更していません。
○フルキサピロキサド(殺菌剤)
フルキサピロキサドについても、過去に評価したことがあります(2017年12月12日に第3版を答申)。企業から、りんご、なし等に使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したしろうり、すいか等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。
今回作物残留試験(りんご、なし 等)の成績等のみが提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.021 mg/kg 体重/日、ARfD=1.2 mg/kg 体重/日は、第3版から変更していません。
○ジフェノコナゾール(殺菌剤)
ジフェノコナゾールについても、過去に評価を実施しています(2018年5月22日に第5版を答申)。企業から、かんきつに使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したとうもろこし、ラズベリー等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。
今回、植物代謝試験(小麦)、作物残留試験(国内:みかん、かぼす等、海外:とうもろこし、ラズベリー等)、動物体内動態試験(ヒト及びラットの肝ミクロソームを用いたin vitro比較代謝試験)、発がんメカニズム検討試験の成績等が新たに提出されましたが、専門調査会の結論と同じ、ADI=0.0096 mg/kg 体重/日、ARfD=0.25 mg/kg 体重/日と設定しました。
以上5つの農薬については、いずれも指標に変更がなかったことから、意見・情報の募集は行わずに厚生労働大臣に通知することとしました。
当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20221213fsc