■第877回 食品安全委員会
日付:令和4年10月25日(火)
議題
(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働省が定める物質1品目(厚生労働省からの説明)
酸化亜鉛
・農薬7品目(厚生労働省からの説明)
インピルフルキサム
キザロホップエチル
セトキシジム
ピカルブトラゾクス
ピジフルメトフェン
ピリベンカルブ
フルキサピロキサド
・動物用医薬品2品目(農林水産省からの説明)
鶏コクシジウム感染症(アセルブリナ、テネラ、ネカトリックス、ブルネッティ、
マキシマ)混合生ワクチン(エバロン)
鶏コクシジウム感染症(アセルブリナ、テネラ、プレコックス、マキシマ、ミチス)混合生ワクチン(エバント)
(2)動物用医薬品専門調査会における審議結果について
・「ヒドロコルチゾン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(3)肥料・飼料等専門調査会における審議結果について
・「オルメトプリム」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・農薬「アメトクトラジン」に係る食品健康影響評価について
・農薬「ビフェントリン」に係る食品健康影響評価について
・農薬「メフェントリフルコナゾール」に係る食品健康影響評価について
(5)その他
審議の内容
(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
本年10月19日付けで、厚生労働大臣から「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働省が定める物質」1品目及び農薬7品目について、農林水産大臣から動物用医薬品2品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、今回説明を受けました。
○「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働省が定める物質」1品目
酸化亜鉛については、企業から、ももに使用する新たな農薬として登録申請があったことから、厚生労働大臣から残留基準の設定に向けた食品健康影響評価の要請がありました。農薬として使用した酸化亜鉛を食品を介して摂取する量と通常の食生活で摂取する量を比較しつつ、同項に該当するかについて問われています。
今後、農薬第五専門調査会で審議することとしました。
○農薬7品目
インピルフルキサムについては、過去に評価したことがあります(2018年10月23日に第1版を答申)。今回企業から、この農薬をばれいしょ、はくさい等にも使用したいとの申請がありました。
キザロホップエチルについても、過去に評価したことがあります(2014年4月8日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬をだいず、ごぼう等にも使用したいとの申請がありました。
セトキシジムについても、過去に評価したことがあります(2018年12月4日に第1版を答申)。今回企業から、この農薬をキノアにも使用したいとの申請がありました。
ピカルブトラゾクスについても、過去に評価したことがあります(2019年7月30日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬をさといも、みかん等にも使用したいとの申請がありました。
ピジフルメトフェンについても、過去に評価したことがあります(2019年11月12日に第1版を答申)。今回企業から、かんきつ及びりんごに使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したてんさい、こまつな等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。
ピリベンカルブについても、過去に評価したことがあります(2021年6月15日に第4版を答申)。今回企業から、この農薬をはなやさい類にも使用したいとの申請がありました。
フルキサピロキサドについても、過去に評価したことがあります(2017年12月12日に第3版を答申)。今回企業から、りんご、なし等に使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したしろうり、すいか等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。
上記のうち、「インピルフルキサム」、「セトキシジム」、「ピカルブトラゾクス」及び「フルキサピロキサド」については、作物残留試験の結果のみの追加であり、既存の評価結果に影響を及ぼすと認められないので、専門調査会の審議を経ることなく、今後委員会において審議することとしました。
また、復帰突然変異試験等、作物残留試験以外の試験成績が提出された、「キザロホップエチル」については農薬第四専門調査会、「ピジフルメトフェン」及び「ピリベンカルブ」については農薬第三専門調査会において、それぞれ審議することとしました。
○動物用医薬品2品目
混合生ワクチン(エバロン)及び混合生ワクチン(エバント)については、動物用医薬品としての製造販売の承認に向けた評価要請がありました。
「エバロン」については、アイメリア・アセルブリナ、アイメリア・テネラ、アリメリア・マキシマ、アイメリア・ネカトリックス及びアイメリア・ブルネッティ、「エバント」ついては、アイメリア・アセルブリナ、アイメリア・テネラ、アリメリア・マキシマ、アイメリア・ミチス及びアイメリア・プレコックスによる鶏コクシジウム症に関連する下痢の症状や、消化管病変及びオーシスト排泄の軽減に効果があるとされています。
これら2品目について、
・主剤である病原体による「鶏コクシジウム症」は、人獣共通感染症とは見なされておらず、新たな知見も得られていないこと
・添加剤は、動物用ワクチンの添加剤として使用される限りにおいて、または、一用量中の含有量が所定の量を超えなければ、人への健康影響は無視できる程度と評価されていること
などを勘案すれば、「本製剤が適切に使用されている限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる」と考えられることから、食品安全基本法第11条第1項第2号の「人の健康に及ぼす影響の内容及び程度が明らかである」に該当すると認められる旨を農林水産大臣に通知することとしました。
(2)動物用医薬品等専門調査会における審議結果
○ヒドロコルチゾン
動物用医薬品「ヒドロコルチゾン」については我が国で承認されていませんが、ポジティブリスト制度導入時に暫定基準が設定された動物用医薬品であり、2020年3月17日付けで、厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。既に設定された残留基準値が、リスク管理措置として妥当かどうかを問われています。
各種毒性試験の結果から、最小毒性量(LOAEL)はラットを用いた7日間亜急性毒性試験でみられた1 mg/kg 体重/日でした。また、現行のリスク管理における体重1 kg当たり及び1日当たりの推定摂取量は、最大と試算された幼小児で0.00020 mg/kg 体重/日と算定されています。
したがって、
・LOAELと上記推定摂取量の比較による暴露マージン(MOE)は5,000であり、PODがLOAELであること、評価に用いた資料に慢性毒性試験、発がん性試験及び生殖発生毒性試験が不足していることを考慮しても、両者の間には十分な余裕があること
・現行のリスク管理における1人当たり及び1日当たりの推定摂取量は、最大とされる妊婦でも、生体内で分泌されるヒドロコルチゾンの1/7,000~1/4,000であること
などから、専門調査会は「現行のリスク管理措置の範囲で使用される限りにおいて、食品健康影響は無視できる程度」と判断しました。
この審議結果(案)について、10月26日(水)から11月24日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(3)肥料・飼料等専門調査会における審議結果
○オルメトプリム
動物用医薬品「オリメトプリム」については我が国で承認されていませんが、ポジティブリスト制度導入時に暫定基準が設定された動物用医薬品であり、2020年3月17日付けで、厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。既に設定された残留基準値が、リスク管理措置として妥当かどうかを問われています。
各種毒性試験の結果から、最小無毒性量(NOAEL)はラットを用いた30日間亜急性毒性試験でみられた12.5 mg/kg 体重/日でした。また、現行のリスク管理における体重1 kg当たり及び1日当たりの推定摂取量が、最大と試算された幼小児で0.00032 mg/kg 体重/日と算定されています。
したがって、NOAELと上記推定摂取量の比較によるMOEは39,000であり、慢性毒性試験、発がん性試験及び生殖毒性試験が不足していることや、ウサギの発生毒性試験で児動物のNOAELが設定できないことを考慮しても、両者の間には十分な余裕があると判断しました。また、本成分の推定摂取量は微生物学的ADIを超えるものではありませんでした。
これらのことから、「現行のリスク管理措置の範囲で使用される限りにおいて、食品健康影響は無視できる程度」と判断しました。
この審議結果(案)について、10月26日(水)から11月24日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(4)食品安全委員会の意見について
アメトクトラジン(殺菌剤)、ビフェントリン(殺虫剤)及びメフェントリフルコナゾール(殺菌剤)の農薬3品目は、本年8月24日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。
○農薬「アメトクトラジン」に係る食品健康影響評価について
アメトクトラジンは、過去に評価を実施したことがあります(2019年7月9日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬をキャベツ及び非結球レタスにも使用したいとの申請がありました。
新たに作物残留試験の成績等が提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、許容一日摂取量(ADI)=2.7 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)は設定する必要はないとの結果は、第2版から変更していません。
○農薬「ビフェントリン」に係る食品健康影響評価について
ビフェントリンも、過去に評価を実施したことがあります(2019年4月16日に第6版を答申)。今回企業から、この農薬を玄米にも使用したいとの申請がありました。
新たに作物残留試験の成績等が提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、許容一日摂取量(ADI)=0.01 mg/kg 体重/日、及び急性参照用量(ARfD)=0.05 mg/kg 体重/日は第6版から変更していません。
○農薬「メフェントリフルコナゾール」に係る食品健康影響評価について
メフェントリフルコナゾールも、過去に評価を実施したことがあります(2020年1月14日に第1版を答申)。今回企業から、ぶどう、りんご等に使用する新たな農薬(製剤)として登録申請、及びこの農薬を使用したさとうきび、たまねぎ等を輸入する計画があることから残留基準設定の申請がありました。
新たに、土壌吸脱着作物試験、土壌残留試験及び作物残留試験の成績等が提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、許容一日摂取量(ADI)=0.035 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD)設定する必要はないとの結果は、第1版から変更していません。
以上の結論については、既存の評価結果に影響を及ぼすものではないことから、意見・情報の募集は行わずに、厚生労働大臣に通知することとしました。
当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20221025fsc