■第871回 食品安全委員会

日付:令和4年8月30日(火)
 

議題

(1)食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときについて

・ 食品衛生法第13条第1項の規定に基づき定められた、食品、添加物等の規格基準のニタルソン及びロキサルソン試験法の追加、ニフルスチレン酸ナトリウム試験法の追加及び酢酸トレンボロン試験法の削除及び追加

 (厚生労働省からの説明)

 

(2)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・添加物5品目(厚生労働省からの説明)

亜硫酸ナトリウム

次亜硫酸ナトリウム

二酸化硫黄

ピロ亜硫酸カリウム

ピロ亜硫酸ナトリウム

・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質2品目(厚生労働省からの説明)

次硝酸ビスマス

シンナムアルデヒド(ケイ皮アルデヒド)

・農薬6品目(厚生労働省からの説明)

アメトクトラジン

イミシアホス

ジフェノコナゾール

ジメトモルフ

ビフェントリン

メフェントリフルコナゾール

・動物用医薬品1品目(農林水産省からの説明)

次硝酸ビスマスを有効成分とする牛の乳房注入剤(オルベシール)

 

(3)遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

・「CIT-No.1株を利用して生産されたL-シトルリン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・農薬「ジエトフェンカルブ」に係る食品健康影響評価について

・農薬「バリダマイシン」に係る食品健康影響評価について

・農薬「ピリダクロメチル」に係る食品健康影響評価について

・遺伝子組換え食品等「Bacillus subtilis NTI05 (pHYT2Aopt) 株を利用して生産されたシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ」に係る食品健康影響評価について

・飼料添加物「25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有効成分とする飼料添加物」に係る食品健康影響評価について

・食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(対象外物質)「カルシフェロール及び25-ヒドロキシコレカルシフェロール」に係る食品健康影響評価について

 

(5)食品健康影響評価技術研究及び食品安全確保総合調査の優先実施課題(令和5年度)(案)及び令和4年度食品安全確保総合調査課題(案)について

 

(6)その他

 

審議の内容

(1)食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときについて

 

○食品衛生法第13条第1項の規定に基づき定められた、食品、添加物等の規格基準のニタルソン及びロキサルソン試験法の追加、ニフルスチレン酸ナトリウム試験法の追加及び酢酸トレンボロン試験法の削除及び追加(厚生労働省からの説明)

 

「ニタルソン及びロキサルソン試験法」並びに「ニフルスチレン酸ナトリウム試験法」追加することについては、新たに「食品中において『不検出』とされる農薬等の成分である物質」とされる物質が追加されることから、その検出に係る試験法を追加するものです。また、酢酸トレンボロン試験法の削除及び追加については、有害性の高い試薬(ジクロロメタン及びベンゼン)を使用しない試験法に変更するものです。

 

これらの改正によって人の健康に影響を及ぼすものではないことから、双方ともに食品安全基本法第11条第1項第1号に規定する食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときに該当すると判断し、厚生労働省に通知することとしました。

 

(2)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

 

厚生労働大臣から、2022年8月23日付けで添加物5品目、8月24日付けで「食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質」2品目及び農薬6品目、農林水産大臣から8月24日付けで動物医薬品1品目について、それぞれ食品健康影響評価の要請があり、それぞれ説明を受けました。

 

○添加物

 

食品添加物「亜硫酸ナトリウム」、「次亜硫酸ナトリウム」、「二酸化硫黄」、「ピロ亜硫酸カリウム」及び「ピロ亜硫酸ナトリウム」(以下「亜硫酸塩等」)については、いずれもぶどう酒中で亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン及び分子状二酸化硫黄を生じ、このうち亜硫酸水素イオンが酸化防止作用、分子状二酸化硫黄は抗菌作用を発揮するため、ぶどう酒の製造において、酸化及び腐敗の防止効果があるとされています。

今回の厚生労働大臣からの諮問は、現行の亜硫酸塩等の使用基準(亜硫酸塩の二酸化硫黄としての残存量が、ぶどう酒0.35 g未満/kg、ぶどう酒からアルコールを除去した清涼飲料水(ノンアルコールワイン)0.03 g未満/kg)のうち、ノンアルコールワインついてもぶどう酒と同程度亜硫酸塩を使用できるようにした場合の健康影響を問うものです。

今後、添加物専門調査会で調査・審議することとしました。

 

○食品衛生法第13条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質2品目

 

・次硝酸ビスマス

次硝酸ビスマスは、乳頭管を物理的に塞ぐことにより、乾乳期の乳房炎を予防する効果があるとされています。今回は、牛に対する乳房注入剤として使用したいとのことですが、体内にほとんど吸収されないことや、海外でも残留基準値が設定されていないことなどを考慮して、同項に該当するかについて問われています。

今後肥料・飼料等専門調査会において調査・審議することとしました。

 

・シンナムアルデヒド(ケイ皮アルデヒド)

ケイ皮アルデヒドとして、ポジティブリスト制度導入時に食品衛生法第13条第3項に基づく「人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定めるもの」として規定されています。今回企業から、この農薬を「シンナムアルデヒド」と名称を変更した上で、トマト、なす等に使用する新たな農薬(製剤)としての登録申請があったことから、改めて、「シンナムアルデヒド」としてポジティブリストの対象外物質として設定して良いかについて問われています。

今後農薬第四専門調査会で調査・審議を行った後、肥料・飼料等専門調査会で調査・審議することとしました。

 

○農薬6品目

 

アメトクトラジンについては、過去に評価を実施したことがあります(2019年7月9日に第2版を答申)。今回、企業からキャベツ及び非結球レタスにも使用したいとの申請がありました。

 

イミシアホスについても、過去に評価を実施しています(2008年11月13日に第3版を答申)。今回、企業からだいこん類の根、にんじん等にも使用したいとの申請がありました。

 

ジフェノコナゾールについても、過去に評価を実施しています(2018年5月22日に第5版を答申)。今回企業から、かんきつに使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したとうもろこし、ラズベリー等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。

 

ジメトモルフについても、過去に評価を実施しています(2013年11月11日に第3版を答申)。今回企業から、キャベツ及び非結球レタスに使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したこまつな、パパイヤ等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。

 

ビフェントリンについても、過去に評価を実施しています(2019年4月16日に第6版を答申)。今回企業から、玄米にも使用したいとの申請がありました。

 

メフェントリフルコナゾールについても、過去に評価を実施しています(2020年1月14日に第1版を答申)。今回企業から、ぶどう、りんご等に使用する新たな農薬(製剤)として登録申請があったことや、この農薬を使用したさとうきび、たまねぎ等を輸入する計画があることから、残留基準設定の申請がありました。

 

これらのうち、アメクトラジン、イミシアホス及びビフェントリンについては、作物残留試験の結果のみ、メフェントリフルコナゾールについては、作物残留試験、土壌吸着試験及び土壌残留試験の結果のみの追加であり、既存の評価結果に影響を及ぼすとは認められないので、専門調査会の審議を経ることなく、今後委員会において審議を行うこととしました。

 

ジフェノコナゾール及びジメトモルフについては、急性神経毒性試験等が追加されており、既存の調査結果に影響を及ぼす可能性があることから、前者は農薬第2専門調査会、後者は農薬第4専門調査会で、それぞれ審議することとしました。

 

○動物用医薬品1品目(次硝酸ビスマスを有効成分とする牛の乳房注入剤(オルベシール)

 

前述した次硝酸ビスマスを有効成分とするオルベシールについて、動物医薬品としての製造販売の承認に向けた評価要請がありました。

これについては、肥料・飼料等専門調査会において審議することとしました。

 

(3)遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果

 

○「CIT-No.1株を利用して生産されたL-シトルリン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

「CIT-No.1株を利用して生産されたL-シトルリン」は、2021年9月28日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この食品は、Escherichia coli K-12株由来の突然変異株であるNo.55株を宿主として、L-シトルリンの生合成に関与する遺伝子等の挿入を行って作製されたCIT-No.1株を利用して生産されたものです。

今回、「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物のうち、アミノ酸等の最終産物が高度に精製された非タンパク質性添加物の安全性評価の考え方」(平成17年4月28日食品安全委員会決定)を準用して評価を行った結果、改めて「遺伝子組換え食品(微生物)の安全性評価基準」(平成20年6月26日食品安全委員会決定)による評価を行う必要はなく、使用形態が現行と同等である場合に限り、比較対象とした従来食品と同等の安全性が確認されたと判断しました。

なお、この評価は、当該食品のリスクが従来食品に比べて増加しないことを確認したものであることから、リスク管理機関に対して、設定した製品規格の適合遵守等について事業者への指導を徹底することを求めています。

この審議結果(案)について、8月31日(水)から9月29日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(4)食品安全委員会の意見について

 

○ジエトフェンカルブ

 

農薬(殺菌剤)ジエトフェンカルブは、2022年7月13日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この農薬は、過去に評価を実施したことがあります(2019年7月30日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬を豆類及び非結球レタスにも使用したいとの申請がありました。

新たに作物残留試験成績が提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、許容一日摂取量(ADI)=0.42 mg/kg 体重/日、及び急性参照用量(ARfD)=2 mg/kg 体重/日は第2版から変更していません。

 

○バリダマイシン

 

農薬(殺菌剤)バリダマイシンは、2022年7月13日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この農薬は、過去に評価を実施したことがあります(2020年9月29日に第1版を答申)。今回企業から、こんにゃく及びチンゲンサイ等にも使用したいとの申請がありました。

新たに作物残留試験成績が提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.36 mg/kg 体重/日及びARfD=3.2 mg/kg 体重/日は第1版から変更していません。

 

ジエトフェンカルブ及びバリダマイシンについては、いずれも指標に変更がなかったことから、パブリックコメントは実施せずに厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○ピリダクロメチル

 

農薬(殺菌剤)ピリダクロメチルは、企業から、だいず、トマト等に使用する農薬として新規登録の申請があったことを受けて、2022年3月23日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されたことから、農薬第2専門調査会での審議、パブリックコメントの手続きを行いました。

パブリックコメント期間中に2件の意見がありましたが、専門調査会における結論と同じADI=0.08 mg/kg 体重/日、ARfDについては「設定の必要なし」として、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ

 

2022年2月21日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請された、食品添加物「Bacillus subtilis NTI05 (pHYT2Aopt) 株を利用して生産されたシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ」について、遺伝子組換え食品等専門調査会での審議、パブリックコメントの手続きを行いました。

パブリックコメント期間中に6件の意見がありましたが、専門調査会における結論と同じ、「人の健康を損なうおそれはない」と判断し、厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有効成分とする飼料添加物

 

この飼料添加物の有効成分は、ビタミンD3の代謝物で、飼料に添加することで栄養成分補給の効果が期待できます。我が国では、豚と鶏の飼料添加物として指定されていますが、今回牛にも使用したいとして、2022年2月17日付けで農林水産大臣から、当該飼料添加物を含む飼料の成分規格等の改正向けた食品健康影響評価の要請がありました。

専門調査会は、後述の有効成分の評価結果を参照するとともに、本製剤に含まれる賦形物質等についても、その使用状況や既存の評価、用法・用量から、本製剤の含有成分として接種した場合の人への健康影響は無視できる程度と考えました。

以上のことから、「飼料添加物として適切に使用される限りにおいては、食品に残留することにより人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度」と判断しました。

 

○カルシフェロール及び25-ヒドロキシコレカルシフェロール

 

上記飼料添加物の本有効成分を、食品衛生法第13条第3項の規定に基づく「人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるもの」(対象外物質)とすることについては、2022年3月16日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請され、専門調査会で審議を行いました。

新たに提出された飼料添加物の牛への適用に関する試験成績等を用いて新たに知見を再整理した結果、「動物医薬品及び飼料添加物として通常使用される限りにおいて、食品に残留することにより人の健康を損なうおそれのないことが明らかである」と判断しました

 

審議の結果、これらの結論については、既存の評価結果に影響を及ぼすものではないことから、パブリックコメントを実施せずに、農林水産大臣及び厚生労働大臣にそれぞれ通知することとしました。

 

(5)食品健康影響評価技術研究及び食品安全確保総合調査の優先実施課題(令和5年度)(案)、令和4年度の食品安全確保総合調査課題(案)について

 

これら課題を承認し、今後、公募等の手続きを進めることとしました。

 

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20220830fsc