■第865回 食品安全委員会


日付:令和4年7月5日(火)
 

議題

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・飼料添加物 1品目

  ギ酸

 (農林水産省からの説明)

 

(2)ぶどう酒の製造に用いる添加物に関するワーキンググループにおける審議結果について

・「フィチン酸カルシウム」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

 

(3)その他

 

審議の内容

 

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

 

○飼料添加物「ギ酸」

 

今回、要望のあったギ酸製剤は、ギ酸原体に水酸化ナトリウム水溶液を加えて一部中和することにより、人の皮膚や金属に対する腐食性を緩和する効果があるとされています。6月29日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価を要請され、今回、説明を受けました。

今回の農林水産大臣の諮問は、水酸化ナトリウム水溶液を混和したギ酸製剤を、ギ酸として0.5%を上限に、牛、豚、鶏及びうずらを対象とした飼料に使用した場合の食品健康影響を問うものです。今後、肥料・飼料等専門調査会で調査・審議することとしました。

 

(2)ぶどう酒の製造に用いる添加物に関するワーキンググループにおける審議結果について

 

ぶどう酒の製造時に用いる添加物である「フィチン酸カルシウム」は、2022年1月25日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。ぶどう酒製造時にフィチン酸カルシウムを添加するとフィチン酸イオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンに解離し、フィチン酸イオンがぶどう酒中の鉄イオンを結合して沈殿するため、これを滓(おり)引き等の工程で除去することにより、過剰量の鉄によるぶどう酒の混濁を防止する効果があるとされています。

フィチン酸、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンそれぞれについて評価を行い、総合的にフィチン酸カルシウムの食品健康影響評価を行うこととしました。

 

○フィチン酸

現在のフィチン酸の一日摂取量(10.7 mg/kg 体重/日)、及び使用基準案における最大使用量のフィチン酸カルシウムが全量ぶどう酒中に残存した場合を仮定した場合の、ぶどう酒からの「フィチン酸カルシウム」の一日摂取量(6.75×10-2 mg/kg 体重/日)をそれぞれ推計しました。これに加えて、フィチン酸カルシウムのほか、フィチン酸並びにそのマグネシウム塩及びナトリウム塩を被験物質とした体内動態、遺伝毒性、急性毒性、発がん性、生殖発生毒性、ヒトにおける知見等の試験成績を用いて検討した結果、

 (ア)フィチン酸は食品中に含まれており、また、「フィチン酸カルシウム」からの摂取量(3.72 mg/人/日)は現在の摂取量(591 mg/人/日)と比べて少ないこと

 (イ)ヒトが600~3,000 mg/人/日を摂取した試験において毒性影響が認められていないこと

 (ウ)毒性試験成績からNOAEL(母動物の一般毒性750 mg/kg 体重/日、胎児の発生毒性750 mg/kg 体重/日)が得られているものの、NOAELの根拠とした発生毒性試験での母動物の一般毒性所見及び胎児の発生毒性所見は、いずれも最高用量群でのみ認められた軽度の所見であり、毒性影響は重篤でないこと

 

から、「フィチン酸カルシウム」が添加物として適切に使用される場合、「フィチン酸カルシウム」に由来するフィチン酸は安全性に懸念がないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断しました。

 

○カルシウムイオン

カルシウムイオンについては過去に評価が行われており、その後新たな知見が認められていません。また「フィチン酸カルシウム」由来のカルシウ推定摂取量(1.01 mg/人/日)が、現在の通常の食事由来の摂取量(499 mg/人/日)と比べて少ないことを総合的に評価した結果、添加物として適切に使用される場合、「フィチン酸カルシウム」に由来するカルシウムは安全性に懸念がないと判断しました。

 

○マグネシウムイオン

マグネシウムイオンについては過去に評価が行われており、その後新たな知見が認められていません。また「フィチン酸カルシウム」由来のマグネシウムの推定摂取量(0.684 mg/人/日)が、現在の食事由来の摂取量(255 mg/人/日)と比べて少ないことを総合的に評価した結果、添加物として適切に使用される場合、「フィチン酸カルシウム」に由来するマグネシウムは安全性に懸念がないと判断しました。

 

上記を踏まえ、「フィチン酸カルシウム」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断しました。

 

これらの審議結果(案)について、令和4年7月6日(水)から令和4年8月4日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20220705fsc