■第864回 食品安全委員会

日付:令和4年6月28日(火)

議題
(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・添加物 1品目
ポリビニルアルコール
(厚生労働省からの説明)

・遺伝子組換え食品等 1品目
JPBL013株を利用して生産されたα-アミラーゼ
(厚生労働省からの説明)

(2)農薬第二専門調査会における審議結果について
・「ピリダクロメチル」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)動物用医薬品専門調査会における審議結果について
・「ジミナゼン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(4)遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について
・「Bacillus subtilis NTI05(pHYT2Aopt)株を利用して生産されたシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(5)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について
・農薬「イソフェタミド」に係る食品健康影響評価について
・農薬「クロルフルアズロン」に係る食品健康影響評価について
・農薬「パラコート」に係る食品健康影響評価について
・動物用医薬品「オメプラゾールを有効成分とする馬の強制経口投与剤(ガストロガード)」に係る食品健康影響評価について

(6)食品安全モニターからの随時報告について(令和3年4月~令和4年3月分)

(7)第36回企画等専門調査会における審議結果について
・令和3年度食品安全委員会運営状況報告について
・令和3年度食品安全委員会緊急時対応訓練結果について

(8)その他

審議の内容

(1)リスク管理機関からの説明

○添加物「ポリビニルアルコール」

「ポリビニルアルコール」は、酢酸ビニルの重合物をアルカリ触媒存在下で部分的にけん化した水溶性ポリマーで、カプセルや錠剤等のコーティング剤等として使用すると、安定性の確保、嚥下性の改善等の効果があるとされています。6月22日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請され、今回、説明を受けました。

今回の厚生労働大臣からの諮問は、ポリビニルアルコールをカプセル・錠剤等の通常の食品形態でない食品に「食品1kgにつき45,000mg以下」で使用した場合の健康影響を問うものです。なお、本添加物は、欧州及び米国において、カプセル・錠剤のコーティングに使用されています。
今後、添加物専門調査会で調査・審議することとしました。

○α-アミラーゼ

「JPBL013株を利用して生産されたα-アミラーゼ」については、6月20日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請され、今回、説明を受けました。α-アミラーゼはデンプンを加水分解する酵素で、デンプンから糖を製造する際に加工助剤として使用します。
本品目はバクテリアBacillus licheniformis を宿主とし、他の菌由来のα-アミラーゼ遺伝子の導入等を行って生産されたα-アミラーゼです。

今後、遺伝子組換え食品等専門調査会で調査・審議を行うこととしました。

(2)農薬第二専門調査会における審議結果について

農薬(殺菌剤)「ピリダクロメチル」は、2022年3月23日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。各種の毒性試験結果等が提出され、審議を行った結果、ピリダクロメチル投与による影響は、主に体重(増加抑制)、甲状腺(重量増加等)、肝臓(重量増加、細胞肥大等)に認められ、繁殖能に対する影響、催奇形性及び生体にとって問題となる遺伝毒性は認められませんでした。

ラットを用いた試験で甲状腺ろ胞細胞腺腫/ろ胞細胞癌、肝細胞腺腫/肝細胞癌及び子宮内膜間質ポリープの発生頻度が増加したほか、マウスを用いた試験で肝細胞腺腫/肝細胞癌の発生頻度が増加しましたが、腫瘍の発生機序は遺伝毒性によるものとは考え難く、閾値を設定することは可能と考えました。また、発生機序に関する試験の結果等から、いずれの腫瘍もヒトへの外挿性は低いと考えました。

各試験で得られた無毒性量のうち最小値は、ラットを用いた2年間慢性毒性/発がん性併合試験の8 mg/kg体重/日であったことから、これを根拠として安全係数100で除した0.08 mg/kg体重/日を許容一日摂取量(ADI)としました。単回経口投与等による毒性影響は認められなかったことから、急性参照用量(ARfD)は設定する必要がないと判断しました。

これらの審議結果(案)について、6月29日(水)から7月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

(3)動物用医薬品専門調査会における審議結果について

動物用医薬品(抗原虫薬)「ジミナゼン」は、2011年3月25日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。ジミナゼンジアセチュレートを用いて実施された各種毒性試験の結果から、ジミナゼンには生体において問題となる遺伝毒性はなく、ADIの設定は可能と判断しました。また、ジミナゼンの投与による影響は主に脳(脳幹及び小脳の軟化)及び生殖器(精巣の萎縮)に見られ、催奇形性は認められませんでした。

各種毒性試験で得られた無毒性量のうち最小値は、イヌを用いた9カ月間慢性毒性試験の20 mg/kg体重/日であったことから、これをADIの設定根拠としました。安全係数は、発がん性試験が実施されていないこと、イヌを用いた試験で脳幹及び小脳に軟化病巣など器質障害を示唆する毒性が発現していること及び二世代繁殖試験が実施されていないこと等を勘案して1000としました。

以上から、20 mg/kg体重/日を安全係数1000で除した0.02 mg/kg体重/日をADIとしました。

これらの審議結果(案)について、6月29日(水)から7月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

(4)遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

「Bacillus subtilis NTI05(pHYT2Aopt)株を利用して生産されたシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ」は、2022年2月21日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この酵素は、アミロースなどのα-1,4-グルカンに作用し、環状α-1,4-グルカンを生成するもので、シクロデキストリンの製造に用いられます。

今回、細菌Bacillus subtilisを宿主とし、他の細菌由来のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ遺伝子を含む発現プラスミドを導入して生産された当該酵素の健康影響評価を行い、挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性及びアレルギー誘発性等について確認した結果、「人の健康を損なうおそれはない」と判断しました。

この審議結果(案)について、6月29日(水)から7月28日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

(5)食品安全委員会の意見

○イソフェタミド

農薬(殺菌剤)イソフェタミドは2022年4月21日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この農薬は過去に評価を実施したことがあります(2019年8月27日に第2版を答申)。今回、この農薬を非結球レタス及びねぎにも使用したいと申請があり、食品安全委員会に対して評価が要請されました。

作物残留試験成績が提出されましたが、新たに安全性について懸念されるような知見は認められず、評価結果は前の版から変更していません。ADI=0.053 mg/kg体重/日、ARfD=3 mg/kg体重です。
指標に変更がなかったことから、パブリックコメントは実施することなく、結果を厚生労働大臣に通知することとしました。

○クロルフルアズロン

農薬(殺虫剤)クロルフルアズロンは、2022年4月21日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この農薬は過去に評価を実施したことがあります(2017年12月12日に第1版を答申)。

今回、この農薬をごぼうにも使用したいと申請があり、食品安全委員会に対して評価が要請されました。

作物残留試験成績が提出されましたが、新たに安全性について懸念されるような知見は認められず、評価結果は前の版から変更していません。ADI=0.033 mg/kg体重/日、ARfDは「設定の必要なし」です。

指標に変更がなかったことから、パブリックコメントは実施することなく、結果を厚生労働大臣に通知することとしました。

○パラコート

農薬(除草剤)パラコートは、2013年6月6日付けで農林水産大臣から、2013年6月11日付けで厚生労働大臣から、それぞれ食品健康影響評価を要請され、専門調査会での審議、パブリックコメントの手続きを行いました。パブリックコメント期間中に2件の意見がありましたが、専門調査会における結論と同じADI=0.0045 mg/kg体重/日、ARfD=0.0045 mg/kg体重として、農林水産大臣及び厚生労働大臣に通知することとしました。

○オメプラゾールを有効成分とする馬の強制経口投与剤(ガストロガード)

動物用医薬品「オメプラゾールを有効成分とする馬の強制経口投与剤(ガストロガード)」は、2022年6月15日付けで農林水産大臣から食品健康影響評価を要請されました。この動物用医薬品は過去に評価を実施したことがあります(2008年12月18日に第1版を答申)。今回、企業から再審査の請求があり、食品安全委員会に評価が要請されました。

再審査に係る資料が提出されましたが、再審査期間中に安全性が懸念される新たな知見はみられず、以前の委員会で決定した評価結果と同じ結論、すなわち「本製剤が適切に使用される限りにおいて、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度」と判断しました。

評価結果に変更がなかったことから、パブリックコメントは実施することなく、結果を農林水産大臣に通知することとしました。

(6)食品安全モニターからの随時報告(令和3年4月~令和4年3月分)

食品安全委員会では、食品安全モニターから日頃の生活の中で気づいた食品安全に関する課題や問題点について、随時、提案や報告を受け付けています。

今回は、2021年4月から2022年3月までの間に寄せられた28件の提案について委員会に報告しました。

食品安全モニターから寄せられた提案については関係省庁に共有し、施策の参考にしてもらうとともに、重篤で広範囲にわたる健康影響に発展する可能性が含まれる提案など、特に重要と考えられる5件の提案については関係省庁から回答をいただき、併せて委員会に報告しました。

(7)第36回企画等専門調査会における審議結果

○運営状況
令和3年度の食品安全委員会の運営状況について、食品健康影響評価やリスクコミュニケーション、調査・研究事業、食品安全情報の収集等の項目ごとに実績をとりまとめ、委員会に報告しました。

○緊急時対応訓練の結果
令和3年度に実施した緊急時対応に関する新任者研修、実務研修、確認訓練の実施結果をとりまとめ、委員会に報告しました。

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20220628fsc