「A型肝炎」のリスクに関する現時点の科学的知見をまとめたファクトシートを更新しました。今回は国内外の事例数等の統計情報を更新しています。

●概要
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)の感染によって引き起こされる一過性の急性肝炎を主症状とする疾患です。B型肝炎やC型肝炎とは異なり、慢性肝炎にはならないため死に至ることはほとんどありませんが、衰弱症状や劇症肝炎を起こすことがあります。
ヒトは、主にA型肝炎ウイルスに汚染された飲食物等を介して経口感染します。

日本における患者数は、食中毒として届けられた件数は15名と少ないのですが、経口感染を含む感染症として届けられた件数は926人となっています。

●症状など
潜伏期間は平均4週間(2~7週間)と長く、ほとんどの症例で38℃以上の発熱によって急激に発病するのが特徴です。このほか、半数以上の患者で全身倦怠、食欲不振、悪心、おう吐、黄だん、肝腫大等も認められています。
子どもでは不顕性感染(感染しても症状を示していない状態)や軽症ですむことがほとんどですが、成人では症状も肝障害の程度も重い傾向にあります。

●原因食品
2006年から2008年の感染症発生動向調査では経口・接触などによる642件の感染が報告され、このうち経口感染の感染源の記載のあったものは、多い順にカキ以外の海産物、カキ、寿司、肉類、水及び野菜・フルーツと推定されています。
一方、諸外国では、カキなどの二枚貝の他、レタスや青ネギなどの野菜、冷凍ラズベリーや冷凍イチゴなどの果物によるA型肝炎の集団感染事例も報告されています。

●予防方法
A型肝炎の予防には、A型肝炎ウイルスに汚染された飲食物を食べないようにすることと、感染調理従事者から飲食物への汚染を防止することが必要です。一般的な予防方法としては、食品は十分に加熱すること、調理・食事前には十分な手洗をすること等があります。
また、A型肝炎の常在地域となっている国や地域へ渡航する場合は、生水・生野菜などの非加熱食品の飲食を避けるだけでなく、ワクチン接種をすることも有効です。

(補足説明)
A型肝炎の常在地域は、アジア、サハラ砂漠以南のアフリカ、中南米等の国や地域です。
(国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2303-related-articles/related-articles-419/5323-dj4198.html)。

食品安全委員会 A型肝炎ファクトシート
http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_11hepatitis.pdf

ファクトシートとは、「科学的知見に基づく概要書」のことです。ハザード(危害要因)ごとに国際機関や国内外のリスク評価機関が公表した評価結果や研究成果及びリスク管理措置等の情報について、現時点での科学的知見を整理し、広く情報提供することを目的に作成しています。