■第842回 食品安全委員会
日付:令和3年12月14日(火)
議題
(1) 食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について
・農薬8品目
1,4-ジメチルナフタレン、アセキノシル、トリネキサパックエチル、トリフルミゾール、ピラジフルミド、フルエンスルホン、フルトリアホール、フロニカミド
(厚生労働省からの説明)
・動物用医薬品1案件
動物用ワクチンの添加剤として使用する成分(硫酸マンガン)
(農林水産省からの説明)
(2) 動物用医薬品専門調査会における審議結果について
・「オルトジクロロベンゼン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(3) 遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について
・「JPBL008株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
・「JPBL009株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
・「JPBL010株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(4) 肥料・飼料等専門調査会における審議結果について
・「クロキサシリン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
(5) 食品健康影響評価の結果に基づく施策の実施状況の調査結果について
(第26回:令和3年9月30日時点)
(6)その他
審議の内容
(1) リスク管理機関からの説明
○ 農薬8品目
これらの農薬については、いずれも12月8日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請され、今回、説明を受けました。
1,4-ジメチルナフタレン(植物成長調整剤)は、これまで食品安全委員会で評価を行ったことはありません。今回、この農薬を使用したばれいしょが輸入される計画があることから、残留基準値設定の申請がありました。
アセキノシル(殺虫剤)は、過去に評価を実施したことがあります(2012年3月29日に第3版を答申)。今回、企業から未成熟とうもろこし、しそ等にも使用したいとの申請がありました。
トリネキサパックエチル(植物成長調整剤)も過去に評価を実施したことがあります(2009年10月22日に第1版を答申)。今回、この農薬を使用したコメ、小麦等が輸入される計画があることから、残留基準値設定の申請がありました。
トリフルミゾール(殺菌剤)も過去に評価を実施したことがあります(2018年3月27日に第3版を答申)。今回、企業からかんしょにも使用したいとの申請がありました。
ピラジフルミド(殺菌剤)も過去に評価を実施したことがあります(2017年3月28日に第1版を答申)。今回、企業からにんじん、にんにく等でも使用したいとの申請があったほか、ピラジフルミドが使われた作物を家畜が食べることも想定し、畜産物についても残留基準値設定の申請がありました。
フルエンスルホン(殺虫剤)も過去に評価を実施したことがあります(2017年11月7日に第2版を答申)。今回、この農薬を使用したぶどう、パッションフルーツ等が輸入される計画があることから、残留基準値設定の申請がありました。
フルトリアホール(殺菌剤)も過去に評価を実施したことがあります(2018年5月22日に第2版を答申)。今回、この農薬を使用したホップが輸入される計画があることから、残留基準値設定の申請がありました。
フロニカミド(殺虫剤)も過去に評価を実施したことがあります(2019年4月16日に第7版を答申)。今回、企業からマンゴーにも使用したいとの申請がありました。
これらの農薬のうち1,4-ジメチルナフタレンについては、農薬第三専門調査会で審議することとしました。
また、トリフルミゾール、フルエンスルホン、フルトリアホールについては、作物残留試験結果の提出がありましたが、毒性に影響するような試験結果ではないことから、既存の評価結果に影響はないと判断し、専門調査会で審議することなく委員会で審議し、必要に応じて評価書を改定することとしました。
アセキノシル、トリネキサパックエチル、ピラジフルミド、フロニカミドについては、作物残留試験結果に加えて、毒性試験等の結果が提出されたことから、いずれの農薬も既存の評価結果に影響を及ぼす可能性があると判断し、農薬に関する専門調査会で審議することとしました。
○動物用ワクチン添加剤 硫酸マンガン
動物用ワクチンの添加剤として硫酸マンガンを使用することについて、12月8日付で農林水産大臣から食品健康影響評価を要請され、今回、説明を受けました。
農林水産省では、動物用医薬品の治験を実施する際、治験使用薬に含まれる添加剤が「ワクチンの添加剤として使用される限り人の健康に悪影響を及ぼすおそれはない」と食品安全委員会が評価した成分のみである場合は、ワクチン接種後の休薬期間を不要とし、それ以外の成分を含む場合には、食品安全委員会の評価結果を踏まえて休薬期間を判断することとしています。
硫酸マンガンについては、これまで食品安全委員会で評価したことがないため、今後、動物用医薬品専門調査会で調査・審議を行うこととしました。
(2) 動物用医薬品専門調査会における審議結果
〇オルトジクロロベンゼン(消毒剤)
オルトジクロロベンゼンについては、2020年3月17日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。
この剤は既に残留基準値が設定され、リスク管理が行われており、厚生労働省からは現在行っているリスク管理が妥当かどうかを問われています。現行のリスク管理の下で推定される摂取量は、諸外国が設定している許容一日摂取量(ADI)を大幅に下回ることから、現行のリスク管理の範囲で使用される限りにおいて、健康影響は「無視できる程度」と判断しました。
この審議結果について12月15日(水)から令和4年1月13日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(3) 遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果
〇「JPBL008株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
〇「JPBL009株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
〇「JPBL010株を利用して生産されたα-アミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について
これらのα-アミラーゼについては、いずれも2021年7月14日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。
これらα-アミラーゼはグルコース重合体のα-1,4結合を加水分解し、デキストリン及びオリゴ糖を生成させる酵素で、パンの老化防止に効果があるとされています。
今回審議したα-アミラーゼは、いずれも細菌Bacillus licheniformisを宿主とし、好熱性細菌Geobacillus stearothermophilus由来のα-アミラーゼ遺伝子を導入して生産されたα-アミラーゼであり、それぞれについて食品健康影響評価を行い、挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性及びアレルギー誘発性等について確認した結果、いずれも「人の健康を損なうおそれはない」と判断しました。
これらの審議結果(案)について、いずれも12月15日(水)から令和4年1月13日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(4) 肥料・飼料等専門調査会における審議結果
〇クロキサシリン(抗生物質)
クロキサシリンは牛の乳房炎の治療に使われる動物用医薬品で、暫定基準値が設定されています。今回の厚生労働省からの諮問は、現在行っているリスク管理が妥当かどうかを問うものです。
提出された資料等から、クロキサシリンは生体にとって特段問題のある遺伝毒性はないと判断しました。また、各種毒性試験の結果から、最も低い無毒性量(NOAEL)は500 mg/kg体重/日であり、現行のリスク管理における推定摂取量は、最大と試算された幼小児(1~6歳)で0.0021 mg/kg体重/日であることから、NOAELと推定摂取量には十分な余裕があると判断しました。
さらに、クロキサシリンの推定摂取量は微生物学的ADI(0.01994 mg/kg体重/日)を超えないことから、現行のリスク管理の範囲でクロキサシリンが使用される限りにおいて、食品健康影響は「無視できる程度」と判断しました。
この審議結果(案)について、12月15日(水)から令和4年1月13日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。
(5) 食品健康影響評価の結果に基づく施策の実施状況の調査結果
食品安全委員会では、食品健康影響評価が関係行政機関におけるリスク管理措置に適切に反映されているかを把握するため、毎年、リスク管理機関における施策の実施状況を調査し、公表しています。今回は令和3年9月30日を基準日として、それ以前に食品健康影響評価結果を通知した181件についてリスク管理措置の実施状況を報告しました。
当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20211214fsc