■第840回 食品安全委員会
日付:令和3年11月30日(火)


議題

 

(1)遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

 ・「除草剤ジカンバ耐性セイヨウナタネMON94100系統」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(2)肥料・飼料等専門調査会における審議結果について

 ・「ナイカルバジン」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)ぶどう酒の製造に用いる添加物に関するワーキンググループにおける審議結果について

 ・「フェロシアン化カリウム」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(4)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

 ・動物用医薬品「塩化ジデシルジメチルアンモニウム」に係る食品健康影響評価について

 ・動物用医薬品「ニタルソン」に係る食品健康影響評価について

(5)その他

 

審議の内容

 

(1)  遺伝子組換え等専門調査会における審議結果について

 

「除草剤ジカンバ耐性セイヨウナタネMON94100系統」は、2021年8月17日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この系統は、除草剤ジカンバを分解する細菌由来の酵素の遺伝子を従来品種のセイヨウナタネに導入して作出されたものです。

 

今回、この系統について挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性及びアレルギー誘発性、交配後の世代における挿入遺伝子の安定性等について確認した結果、非組換えセイヨウナタネと比較して新たに安全性を損なうおそれのある要因は認められなかったことから、「ヒトの健康を損なうおそれはない」と判断しました。

この審議結果について、12月1日(水)から12月30日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

 

(2)  肥料・飼料等専門調査会における審議結果について

 

動物用医薬品及び飼料添加物である「ナイカルバジン」は、2021年2月9日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。

ナイカルバジンは日本では動物用医薬品及び飼料添加物として使用されています。動物用医薬品としては、肉養鶏及び卵用鶏(採卵鶏を除く)のコクシジウム病の予防を目的として、飼料1トン当たり100~200gを配合する飼料添加剤が承認されています。

また、飼料添加物としては、飼料中の栄養成分の有効利用を目的として、肉用鶏用飼料のうち前期のみに添加を限定し、1トン当たり100gまでの添加が認められています。

 

ナイカルバジンは単一の化合物ではなく、構成成分であるDNCとHDPが水素結合を含む分子間力で結合したコンプレックスです。

 

今回、ナイカルバジンを使用した肉が輸入されるため、残留基準値設定の申請(インポートトレランス申請)があり、食品安全委員会に対して評価が要請されました。

畜産物での残留データや毒性試験データなどが提出され、審議を行った結果、許容一日摂取量(ADI)をDNCとして0.2 mg/kg体重/日としました。

微生物学的ADIについては、ナイカルバジン、DNC及びHDPのいずれも抗菌活性が見られなかったことから設定は不要と判断しました。

ばく露量については、今回の評価結果を踏まえて残留基準値の設定を行う際に確認します。

これらの審議結果(案)について、12月1日(水)から12月30日(木)までの間、意見・情報の募集を行います。

 

 

(3)  ぶどう酒の製造に用いる添加物に関するワーキンググループにおける審議結果について

 

ぶどう酒の製造時に用いる添加物であるフェロシアン化カリウムは、2021年5月26日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。ぶどう酒製造時にフェロシアン化カリウムを添加すると、フェロシアン化物イオンとカリウムイオンに解離し、フェロシアン化物イオンがぶどう酒中の鉄イオン(Fe3+)と結合して不溶性のフェロシアン化鉄(Ⅲ)を形成し、おり引きやろ過により除去されることで、ぶどう酒中の過剰な鉄を除去する効果があるとされています。

 

審議の結果、フェロシアン化カリウムはぶどう酒中でフェロシアン化物イオン及びカリウムイオンに解離し、また、シアン化物イオンが生じる可能性があることから、フェロシアン化カリウムに加え、カリウムイオン及びシアン化物イオンについても食品健康影響評価を行いました。

 

○フェロシアン化カリウム

 

毒性試験の結果から、フェロシアン化カリウムの最小のNOAELは5.3 mg/kg体重/日(無水フェロシアン化カリウムとして)であり、フェロシアン化カリウムが最終製品からほとんど取り除かれることを踏まえると、NOAELと推定摂取量(1.5×10-3 mg/kg体重/日)との間に十分なマージンが存在することから、フェロシアン化カリウムが添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はないと判断しました。

 

○カリウムイオン

 

カリウムイオンについては過去に評価を行っており、その後、新たな知見は認められていません。カリウムがヒトの血中、尿中及び各器官中に広く分布する物質であること、栄養素として摂取すべき目標量(18歳以上の男女で2600~3000 mg/人/日以上)が定められていること並びに「フェロシアン化カリウム」からのカリウムの一日摂取量(1.97×10-2 mg/人/日)が現在のカリウム摂取量(2299 mg/人/日)と比較して非常に少ないことを総合的に評価し、添加物として適切に使用される場合、フェロシアン化カリウムに由来するカリウムは安全性に懸念がないと判断しました。

 

○シアン化物イオン

 

フェロシアン化物イオンからシアン化物イオンが生じる可能性について、ぶどう酒中、消化管内及び体内での生成を考慮して検討した結果、

①水溶液中でのフェロシアン化物イオンの解離定数が非常に小さく、シアン化物イオンと鉄イオンの結合が強固であるため、シアン化物イオンの生成は無視できると考えられること、

②ヒト、ラット及びブタにおける体内動態試験の結果から、フェロシアン化カリウム経口投与時のシアン化物イオンの吸収は低く、体内での生成も少ないと考えられること、

③ぶどう酒中に添加されたフェロシアン化カリウム由来のシアン化物イオンの一日摂取量は、使用基準案における最大残存量のフェロシアン化カリウムがぶどう酒中に残存し、その全てがシアン化物イオンに分解した場合を仮定しても0.358 µg/kg体重/日であり、シアン化物イオンのTDI(4.5 µg/kg体重/日)の8.0%であること、

から、フェロシアン化カリウムから生じるシアン化物イオンについては安全性に懸念がないと判断しました。

 

これらを踏まえ、フェロシアン化カリウムが添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はないと判断しました。

 

これらの審議結果(案)について、12月1日(水)から12月30日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

 

(4)  食品安全委員会の意見

 

〇動物用医薬品「塩化ジデシルジメチルアンモニウム」

 

「塩化ジデシルジメチルアンモニウム」は、2020年3月17日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請され、専門調査会での審議、パブリックコメントの手続きを行いました。

パブリックコメント期間中に1件の意見が提出されましたが、「現行のリスク管理の範囲で使用される限りにおいて、その食品健康影響は無視できる程度」と判断し、厚生労働省に通知することとしました。

 

〇動物用医薬品「ニタルソン」

 

「ニタルソン」は、2020年3月17日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請され、専門調査会での審議、パブリックコメントの手続きを行いました。

パブリックコメント期間中に1件の意見が提出されました。

 

提出された資料等より、本成分は、遺伝毒性発がん物質であることが否定できず、毒性学的な閾値の設定はできないと判断しましたが、本成分は、現在、食品衛生法の規格基準において「食品に含有されるものであってはならない。」とは規定されておらず、不検出として管理されていません。

そのことから、現行のリスク管理措置は妥当ではないと判断し、「その食品健康影響は無視できる程度と考えることはできない」として厚生労働省に通知することとしました。

 

本評価を受け、厚生労働省では本成分について、食品衛生法の規格基準において、「食品に含有されるものであってはならない。」と規定する等、適切なリスク管理が実施されることと承知しています。なお、現在、本成分は日本では動物用医薬品として承認されていません。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20211130fsc