■第837回 食品安全委員会
日付:令和3年10月26日(火)
議題

(1)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見の聴取に関するリスク管理機関からの説明について

・肥料 1案件

肥料の品質の確保等に関する法律第3条第1項の規定に基づく普通肥料の公定規格の改正について

(草木由来のバイオマス燃焼灰及び熔成けい酸質肥料)

(農林水産省からの説明)

(2)遺伝子組換え食品等専門調査会における審議結果について

・「JPAN009株を利用して生産されたグルコアミラーゼ」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(3)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・農薬「テトラコナゾール」に係る食品健康影響評価について

・農薬「フロメトキン」に係る食品健康影響評価について

(4)令和3年度食品健康影響評価技術研究の2次公募における採択課題(案)について

(5)その他

 

審議の内容

(1)  肥料の公定規格の改正

 

肥料の公定規格を改正することについて、10月19日に農林水産大臣から食品健康影響評価を要請され、今回、説明を受けました。

 

〇草木由来のバイオマス燃焼灰

 

古くから農業で利用されている草木灰は植物の生育に必要なカリウムを含みますが、原料となる草木の種類や燃焼方法が様々で肥料の成分が安定しないことから、これまで「特殊肥料」として扱われてきました。

 

他方、再生可能エネルギーの利用を促進する観点から、草木由来のバイオマスを燃料とする発電施設等が増えており、こうした施設は十分な量の原料を専用の炉で燃焼させることから管理がしやすく、安定した肥料成分を含む燃焼灰が得られます。これらの燃焼灰は、成分保証ができる「普通肥料」の原料として有効利用できると考えられています。

そこで、肥料の原料規格のうち「動植物質燃焼灰」に「草木由来のものを専焼する設備で燃焼させて生じた加里含有物(塗料や薬剤を含む若しくはそのおそれがあるもの又はこれらに由来するものと混焼して生じた焼却灰を除く。)」を追加する改正案が示されました。

 

この改正は、長年農業で使用され、人の健康への悪影響が認められていない草木灰のうち、悪影響を及ぼす可能性が特に低いものを肥料の原料として利用するため、規格を追加するものです。

この改正により新たに使用できるようになる肥料は、重金属等の有害成分の含有について、既存の副産肥料等と同等の規定に従うこととなります。このため、この肥料を使った場合でも、現状と比較して農作物を通じてより多くの重金属にばく露されることはなく、現行規定と同等の安全性が確保されると判断しました。

 

〇「熔成けい酸質肥料」を公定規格として定める

 

近年、一般廃棄物や下水汚泥を処理する方法として、高温で熔融する方法が急速に普及しています。これまでこうした施設で生じた熔融物は建築資材などとして利用されてきましたが、特に高温(1700~1800℃)で熔融されるものについては、ダイオキシン類の含有量が極めて低いことに加え、有害な重金属も揮発して熔融物に残らず、さらに肥料成分であるけい酸やカルシウムを多く含むことから、肥料として有効に利用できると考えられています。

 

そこで、こうした施設から生じる熔融物を、肥料の公定規格のうち「けい酸質肥料」に分類し、肥料の種類として「熔成けい酸質肥料」を追加して有害成分の含有率等を規定する改正案が示されました。

 

この改正により新設する肥料は、有害成分について、原料および製法が類似する肥料と同等の規制を設けることとしています。このため、こうした肥料を使っても現状と比較して農作物を通じてより多くの重金属にばく露されることはなく、現行の規定と同等の安全性が確保されると判断しました。

 

○人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らか

 

今回、農林水産大臣から食品健康影響評価を要請された公定規格の改正は、いずれも改正に伴って人の健康への悪影響が増加することはないと判断し、食品健康影響評価を行わずに、農林水産大臣に対し「人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかである」という旨を通知することとしました。

 

(2)  JPAN009株を利用して生産されたグルコアミラーゼ

 

「JPAN009株を利用して生産されたグルコアミラーゼ」については、2021年3月18日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。グルコアミラーゼはデンプンを分解してブドウ糖を生成する酵素であり、デンプン糖の生産などに利用されています。

 

今回、糸状菌Aspergillus nigerに担子菌由来のグルコアミラーゼ遺伝子を導入して生産されたグルコアミラーゼの健康影響評価を行い、挿入遺伝子の安全性、挿入遺伝子から産生されるタンパク質の毒性及びアレルギー誘発性等について確認した結果、「ヒトの健康を損なうおそれはない」と判断しました。この審議結果(案)について、10月27日(水)から11月25日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(3)  農薬2剤の食品健康影響評価

 

〇テトラコナゾール

 

農薬(殺菌剤)テトラコナゾールは、2021年8月25日付で厚生労働大臣から食品健康影響評価を要請されました。この農薬については過去に評価を実施したことがあります(2018年3月6日に第2版を答申)。今回、この農薬を使用したとうもろこし等が輸入される計画があるため、残留基準値設定の申請があり、食品安全委員会に対して評価が要請されました。

 

提出された作物残留試験結果をもとに、テトラコナゾールの推定摂取量を算出し、許容一日摂取量(ADI)及び急性参照用量(ARfD)をいずれも下回ることを確認しました。

毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI及びARfDは第2版から変更していません。ADI=0.004 mg/kg体重/日、ARfD=0.05 mg/kg体重です。指標に変更がなかったことから、パブリックコメントは実施しないこととしました。

 

〇フロメトキン

 

農薬(殺虫剤)フロメトキンは、2021年8月31日付で厚生労働省から食品健康影響評価を要請されました。この農薬も過去に評価を実施したことがあります(2020年2月25日に第2版を答申)。今回、企業からこの農薬をきゅうり、にんにく、ししとう等にも使用したいとの申請が出され、使用した場合の作物残留試験の結果等が提出されました。

 

提出された作物残留試験結果をもとに、フロメトキンの推定摂取量を算出し、ADI及びARfDをいずれも下回ることを確認しました。

毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI及びARfDは第2版から変更していません。ADI=0.008 mg/kg体重/日、ARfD=0.044 mg/kg体重です。指標に変更がなかったことから、パブリックコメントは実施しないこととしました。

 

(4)令和3年度の食品健康影響評価技術研究の採択課題

 

令和3年度の食品健康影響評価技術研究の2次公募に応募のあった研究テーマについて審議し、「食品中の汚染物質のリスク評価手法に関する研究」を採択することとしました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20211026fsc