食中毒を引き起こす細菌の中には、加熱や乾燥に強い芽胞を形成する菌がいます。今回と次回はウエルシュ菌による食中毒を紹介します。

【細菌の特徴】
ウエルシュ菌は、酸素があると増殖できない偏性嫌気性細菌で、ヒトや動物の腸管内、土壌、下水、食品又はほこりなど広く分布しています。ウエルシュ菌は栄養不足、高温や乾燥など環境が悪くなると芽胞を形成し、芽胞は100℃で1~6時間で加熱しても生残します。栄養細胞(※)は酸素が少ないところで、広範囲の温度域(12~50℃)で増殖します。
食中毒はこの細菌の産生するエンテロトキシン(毒素)により起こります。エンテロトキシンは60℃ 10分の加熱で不活化します。
※栄養細胞:細菌などで活発に代謝を行っている体細胞や増殖中の細胞

 



【発生状況と症状】
ウエルシュ菌による食中毒は年間を通じて発生し、最近の数年間では、毎年20~30件程度の事件が発生し、その患者数は500人~2500人程度です。大量に調理した後に室内においておかれることが多いカレー、シチュー、煮物などが原因食品となることが多いです。このため1事件あたりの患者数が多くなりやすい傾向にあります。

 



主な症状は腹痛と下痢で、潜伏期間は6~18時間(平均10時間)です。殆どの場合1~2日で回復するとされていますが、疾患のある方、子どもや高齢者では重症化することがあるので注意が必要です。

・食品安全委員会ファクトシート ウエルシュ菌食中毒

http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_clostridiumperfringens.pdf
・厚生労働省 食中毒統計調査
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html