食品安全委員会は、月に1回、季節に応じた食中毒の特徴や対策を紹介しています。
 今回は、カレーなどの煮込み料理で気をつけたい「ウエルシュ菌」による食中毒についてです。

 厚生労働省から発表された「食中毒統計資料速報」によると、平成30年のウエルシュ菌食中毒発生件数は24件であり、患者数は2,015人でした。原因食品は煮物やカレー等が挙げられており、原因施設は飲食店や仕出屋の割合が高くなっています。ウエルシュ菌による食中毒は、大量調理施設で多く、1事例あたりの患者数が数十人から数百人と大規模化しやすい傾向が続いています。

 ウエルシュ菌は、ヒトや動物の腸管内、土壌、下水、食品又はほこりなど自然界に広く分布しています。酸素の少ないところで、広範囲の温度域(12~50℃)で増殖することが知られています。加熱調理した食品を室温に長時間放置すると、温度低下が緩慢となり、増殖に適した温度帯に長時間さらされるため、菌が増殖しやすくなります。原因食品の中で増殖したウエルシュ菌が体内に入ると、腸管内でさらに増殖します。腸管内で増殖したウエルシュ菌は、エンテロトキシンという毒素を産生し、この毒素が食中毒を引き起こします。
 潜伏期間は6~18時間(平均10時間)で、主に腹痛と下痢等の症状を起こします。まれに発熱やおう吐がみられます。

 細菌性食中毒の予防の3大原則は「菌をつけない、増やさない、やっつける」です。
●つけない…食材をよく洗浄しましょう。
●増やさない…ウエルシュ菌による食中毒の予防の最大のポイントです。加熱調理した食品をやむをえず保存する場合は、小分けして迅速に10℃以下に冷却することで、菌の増殖に適した温度帯の時間をできるだけ短くしましょう。
●やっつける…増殖中の細菌の殺菌には有効な手段となります。一度加熱調理した食品を温めなおす際、特にカレーなどのとろみのある煮込み料理は加熱不十分になりやすいので、かきまぜながら加熱し、まんべんなく火を通してください。

(参考)
食品安全委員会 ファクトシート(ウエルシュ菌食中毒)

http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/03clostridium.pdf
食品安全委員会 食中毒の概要「ウエルシュ菌による食中毒について」

http://www.fsc.go.jp/sonota/clostridium_perfringens_e1.pdf
厚生労働省 食中毒統計資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html