食品健康影響評価書については、ハザードの毒性、特徴のみの記述で判断するのでなく、当該ハザードの推計摂取量も踏まえた、結論をご確認ください。

 

 一部の週刊誌のweb系記事において、トランス脂肪酸が紹介されており、「チョコレート類・米菓の成分に関する指摘」との表を示し、そのなかで、「なお、使用されている植物油脂にトランス脂肪酸が含まれていた場合、トランス脂肪酸は、『冠動脈疾患の発症については増加する可能性が高』く、『肥満、アレルギー性疾患についても関連が認められた』、と食品安全委員会が取りまとめている。」と記述されています。

 食品安全委員会では、食品に含まれるトランス脂肪酸について、2012年3月に食品健康影響評価の結果をとりまとめています。その中で上記web系記事に引用されたハザードの特徴に言及していますが、あくまで平均的な日本人よりも多いトランス脂肪酸摂取量を基にした諸外国における研究結果によるものであり、平均的な日本人の摂取量において、これらの疾患罹患リスク等と関連があるかは明らかではないとしています。

 さらに、日本人のトランス脂肪酸の摂取実態を示したうえで、その大多数はトランス脂肪酸の摂取量がWHO の勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられること、しかしながら脂質に偏った食事をしている個人においては、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると考えられるため、留意する必要があることを述べています(73ページ)。

 また、web系記事では、「アメリカでは、水素添加加工はすでに全面禁止されている。」と記述されていますが、米国食品医薬局(FDA)では2018年6月18日より部分水素添加油脂をGRAS(一般に安全とみなされる食品添加物)の対象から除外するとしており、2018年6月18日よりも前に製造された食品や、これまでに部分水素添加油脂の承認申請があった食品について一定の猶予措置を設定しています。詳しくはFDAの発表をご覧ください。

 

(参考)

・食品安全委員会ウェブサイト 食品健康影響評価書「食品に含まれるトランス脂肪酸」(2012年3月)

http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20120308001

 

・食品安全委員会ウェブサイト 報道関係者との意見交換会資料「脂質の摂取~トランス脂肪酸を理解するために~」(2018年5月)

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20180524ik1

 

米国食品医薬品局(FDA) 「部分水素添加油脂に関する最終決定」(トランス脂肪酸の除去)(2018年5月18日)

http://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabeling/FoodAdditivesIngredients/ucm449162.htm