食品健康影響評価書については、特定箇所のみ抽出された文節で判断するのでなく、前後の文節や、まとめとしての「食品健康影響評価」の項もご確認ください。

 

 一部の週刊誌において、ソルビン酸と亜硝酸塩について相乗毒性があるとして、食品健康影響評価書 ソルビン酸カルシウム(2008年11月)P19ページ、「ソルビン酸が広範に使用される一方、亜硝酸塩も食肉製品の発色剤として多用され、両者がしばしば共存するという事実と、両者の加熱試験反応によりDNA 損傷物質が産生されることが報告されている」が引用されています。

 しかしながら、この加熱試験反応の根拠論文で確認されたソルビン酸と亜硝酸塩の反応生成物は通常の使用状況下とは異なる極めて限られた条件下で生成されたものです。食品安全委員会としては、ソルビン酸と亜硝酸塩の併用使用について、通常条件下ではヒトの健康に対する悪影響はないと結論付けています。

 週刊誌で引用された文節には続きがあり、

「しかしながら、この結果は特別なin vitro における実験条件下で得られたもので、ソルビン酸と亜硝酸ナトリウムが食品中に共存した場合に実際に形成されることを意味するものではないとされている。(参照15)」と記述しています。

 このなかで、「特別なin vitroにおける実験条件下」とは、参照15の論文によれば「亜硝酸ナトリウムの溶液を蒸留水中0.5モルのソルビン酸で懸濁した溶液に室温で加え、90℃の湯煎で1時間加熱した。」であり、このような条件はヒトの体内や食品加工の工程において起こりえないと考えられ、食品健康影響評価の項でも、「ソルビン酸と亜硝酸塩の反応生成物は通常の使用状況下とは異なる極めて限られた条件下で生成することに留意する必要があるとされており、SCF(欧州連合食品科学委員会)においてはソルビン酸類と亜硝酸塩の共存下における遺伝毒性物質の生成に関する試験結果の一部が相互矛盾のため信頼できず、また、通常条件下ではヒトの健康に対するハザードがないとしており、本調査会としては妥当と判断した。」と結論付けています。

 

食品健康影響評価書 ソルビン酸カルシウム

http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20070320001

 

参照15の論文

 Namiki M, Kada T. Formation of Ethylnitrolic Acid by the Reaction of Sorbic Acid with Sodium Nitrite. Agric. Biol. Chem. (1975) 39: 1335-1336