食品衛生法上の基準値を超えて殺菌剤が検出された豪州産輸入大麦を原料とするシリアル食品(グラノーラ等)が自主回収されていますが、万が一召し上がった場合でも、健康に影響を及ぼす恐れはないと考えられます。

 

 農林水産省の4月3日の公表によれば、豪州産大麦について殺菌剤であるアゾキシストロビンが食品衛生法上の基準値を超えて検出されたこと、これを踏まえた事業者へ対する措置が報告されています。

 

 また、これに関連して、上記大麦を原料とするシリアル食品について、消費者庁のリコール情報サイト、製造業者のHPにおいて自主回収のお知らせが掲載されています。

 

 アゾキシストロビンは、豪州、米国、EU及び日本を含む約50か国で、穀物、果実、野菜等の殺菌剤として農薬登録されています。

 

 食品安全委員会では、平成25年7月にアゾキシストロビンについて、一生涯食べ続けても健康に影響がない量として一日摂取許容量(ADI)を0.18 mg/kg体重/日と設定しています。

 

 農林水産省によれば、精麦業者に保管されている大麦の現品の分析結果は、アゾキシストロビンが大麦1 kg当たり2.5 mgで、食品衛生法上の基準値0.5 mg/kgの約5倍であったと報告されています。

 

 食品安全委員会としては、今回、検出された基準値を超えた大麦を含む食品を摂取してもただちに健康への有害な影響はないと考えています。その理由として下記の3点があげられます。

1.アゾキシストロビンは、女性や子どもも含め、人が短期間食べても影響が出る可能性は低い農薬であるとFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)(2008)で既に評価されています。

2.長期間摂取した場合の影響の試算として、ADI(0.18 mg/kg体重/日)に相当する、今回検出された濃度のアゾキシストロビン(2.5 mg/大麦kg)を含む大麦の摂取量は、

    大人(国民平均体重55 kg)で4.0 kg

    1~6歳の子ども(16.5 kg)で1.2 kg

となります。

  この量を自主回収されているシリアル食品の一つ(グラノーラ)に当てはめると(製品50 g中、大麦12 gとの記述がHPにあることから)、

   大人で17 kgの摂取

   1-6歳の子どもで5 kgの摂取

となり、このような量を毎日、食べ続けることはまず不可能です。

3.アゾキシストロビンはいろいろな野菜に使用されていますが、仮にすべての野菜に最大の量が残留する、加熱調理での減少もしない、という過剰な見積もりをしても、私たちがアゾキシストロビンを毎日摂取している量は大人で0.0076 mg/kg体重/日、子どもで0.013 mg/kg体重/日であり、ADIの数%に過ぎません。今回、基準値を超えたアゾキシストロビンを含む大麦(2.5 mg/大麦kg)の摂取量を加えたとしても、アゾキシストロビン全体の摂取量はADIの数%のままと考えられます。

 

 農薬のリスク評価は、作物に使用する基準が適切に守られるという前提で行われています。農薬の残留基準値は食品衛生法上、私たちが生涯にわたり摂取しても健康への影響がでないとされる量であるADIから十分な余裕をもって設定されています。

 今回の案件については、仮にこれまでに食べてしまっていた場合でも健康面で心配される必要はありません。なお、当該食品がお手元に残っている場合には、食品衛生法上、流通してはいけないものですので、食べることはせずに消費者庁のリコール情報サイトなどを参考に、返品などの対応をとっていただければと考えます。

 

 (参考)

・農林水産省「豪州産輸入大麦に関する食品衛生法違反事案について」

http://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/boeki/180403.html 

・消費者庁 リコール情報サイト(大麦案件以外も掲載されています)

http://www.recall.go.jp/index.php 

・食品安全委員会 農薬・添加物評価書 アゾキシストロビン(第5版)

http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kya20130612153&fileId=201