食品安全委員会公式オフィシャルブログではこれまで様々な食中毒の原因菌とともに、その予防対策をご紹介してきました。

 今回は、過去にオフィシャルブログでご紹介した「作った料理は早めに食べ切る」ことや「十分加熱をする」ことについて、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes、以下リステリア)という細菌の特徴を通して考えてみます。

 

■リステリアの特徴

 リステリアは、自然界に広く分布しており、国内における汚染状況調査では、ウシやブタ等の腸内容物や健常者等の便、下水、と畜場等からリステリアが検出されています。発育温度域は-0.4~45℃と広く、冷蔵庫内でも増殖します。他の細菌に比べて耐塩性が強く、10%の食塩濃度でも増殖します。そのため、冷蔵庫での保管や、10%の食塩濃度の塩蔵では、リステリア菌は増殖してしまいます。

 日本では、食中毒統計では、リステリアが食中毒の原因として報告された事例はありませんが、欧米では、リステリアに汚染されたナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン等の喫食を原因とした集団食中毒が発生したとする報告があります。

 このような特徴のあるリステリアですが、加熱殺菌は他の多くの食中毒菌と同様に有効であり、65℃、数分間の加熱で死滅させることができます。

 

■リステリア症の症状

 リステリアの潜伏期間は、24時間から数週間と幅が広く、健康な大人の場合は無症状で経過することが多いです。妊婦(胎児)、新生児、乳幼児、高齢者および基礎疾患を持つ方は、少量のリステリアでも重症化することがあるので特に注意が必要です。海外では、汚染された食品の喫食を介した感染症による死亡例も確認されています。非常に高濃度に汚染された食品を食べると、健康な大人の場合でも発症する可能性があります。

 発症した場合、急性胃腸炎症状よりもインフルエンザ様症状を示すことが多く、38~39℃の発熱、頭痛、おう吐などの症状がでます。重症化すると敗血症、髄膜炎、意識障害や痙攣などの中枢神経症状を引き起こす場合もあります。

 

■予防のポイント

 生ハム等の非加熱食肉製品やナチュラルチーズについては、食品衛生法に基づく規格基準が策定され、国産、輸入を問わずこの基準が適用されています。そのため、過敏になる必要はありませんが、食品の不適切な取扱いによってリステリアが増える可能性があることから、注意が必要です。

 予防のポイントは、前述のとおり冷蔵庫でも増殖しますので、冷蔵庫を過信することなく、生で食べる食品や購入後に加熱調理しないで食べる食品は期限内に使い切るように心がけることです。また、他の食中毒菌と同様、加熱することで予防できます。食べる前に、十分加熱してください。

 特に、妊娠されている方は、リステリアに感染しやすく、赤ちゃんに影響がでることもあります。ナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテなどは、妊娠中は避けるなどの注意が必要です。

 

■日常生活でのポイント

 日常生活の中での食中毒予防対策は、どれか一つだけを取り入れるのではなく、複数の対策を実践することで様々な原因菌による食中毒のリスクを減らすことができます。一般的な食中毒予防対策として、生野菜は食前によく洗うこと、生肉を扱った手や調理器具を洗浄や消毒しないまま他の食品を扱うことをしないことなども有効です。基本的なことばかりですが、今一度、日頃の食材の取り扱い方を見直してみることが大切です。

 

(参考)

食品安全委員会のウェブサイト「食の安全ダイヤルQ&A」

http://www.fsc.go.jp/dial/dialqa201703211.html

厚生労働省 リステリアによる食中毒

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html

厚生労働省 リステリア・モノサイトゲネスに関するQ&Aについて

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000070322.pdf

厚生労働省 これからママになるあなたへ

http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/ninpu.pdf