ビワ、アンズ、ウメ、サクランボなどのバラ科植物の未熟な果実や種子の部分には、アミグダリンやプルナシンという青酸配糖体※1が含まれています。この青酸配糖体が酵素の働きにより加水分解されると、毒性の強いシアン化水素(シアン化物※2)が発生します。シアン化物は細胞のミトコンドリアに存在する酵素に結合し、細胞の呼吸を阻害します。アミグダリンの大量摂取による有害作用としては、悪心、嘔吐、頭痛、めまい、血中酸素の低下による皮膚の青白、肝障害、異常な低血圧、眼瞼下垂、神経障害による歩行困難、発熱、意識混濁、昏睡、死亡などが知られています。

 

 欧州食品安全機関(EFSA)(日本の食品安全委員会にあたります)では、シアン化物の急性参照用量(ARfD)※3を20μg/kg体重と設定しています。国民平均体重55kgの人場合、急性参照用量に相当するシアン化物の摂取量は1.1mgとなります。

 ビワのシアン化物の含有量は、種子の中の胚乳で216mg/kg、果肉部で0.22mg/kgとの報告があります※4。

 これらの報告を採用するとすれば、ビワで1.1mgのシアン化物を摂取しようとすると、果肉部分のみで5kg摂取することになります。ビワは種子が大きく、廃棄率が30%※5であることから、果実全体では7.1kg摂取することになります。したがって、通常ビワの果肉を食べる量では健康影響の心配はありません。

 しかし、種子を乾燥した粉末については、シアン化物を一度に大量に摂取してしまうおそれがあるので食べないでください。 

 

※1 糖に青酸が結合したもの。

※2 シアンイオン(CN-)の結合したもの。シアン化水素、シアン化カリウムなど。

※3 急性参照用量(ARfD)とは、ヒトの24時間またはそれより短時間の経口摂取で健康に悪影響を示さないと推定される体重1kg当たりの摂取量のこと。

※4 白井ら ビワ中果皮のシアン化物代謝活性の部分精製.日本農芸化学会誌,1977.51(9): 527-530

※5 日本標準食品成分表2015年版

 

(参照)

食品安全委員会Facebook:「【お知らせ】農林水産省より「ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう」との情報提供がありました」

https://www.facebook.com/cao.fscj/posts/1987836038098951

 

食品安全委員会:欧州食品安全機関(EFSA)、生のアプリコットカーネル及び生のアプリコットカーネルに由来する製品中のシアン産生性配糖体に関する急性の健康リスクに関する意見書を公表

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04470590149

 

食品安全委員会:青梅の自然毒について

http://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07012000014

 

農林水産省:「ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう」

http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/loquat_kernels.html

 

医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(アミグダリン)

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail748lite.html

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail678.html

 

消費者庁リコールサイト

http://www.recall.go.jp/new/detail.php?rcl=00000018566
http://www.recall.go.jp/new/detail.php?rcl=00000018629
http://www.recall.go.jp/result/detail.php?rcl=00000018685
http://www.recall.go.jp/new/detail.php?rcl=00000018782