身近に潜む原因菌で夏に急増する食中毒!

~予防のキーポイントは加熱調理~

 

 気温が上昇する夏場は、食中毒原因菌にとっては繁殖しやすい季節です。

 食品が食中毒の原因菌に汚染されているかどうかは、においや見た目で判断することはできません。今回は、そんな食中毒原因菌の一つ、「腸管出血性大腸菌」について、その特徴と食中毒の予防対策をお伝えします。

 腸管出血性大腸菌は、人に下痢などを起こす病原性大腸菌の一種で、強い毒素(ベロ毒素)を出し、重症の場合、溶血性尿毒症症候群(*)などの合併症を引き起こします。腸管出血性大腸菌は、血清型という分類により多くの種類がありますが、食中毒の原因となっているものとしては、代表的なO157、他にO26、O111、O103、O145などが知られています。

  腸管出血性大腸菌は、動物の腸管内に生息し、糞尿を介して食品、飲料水を汚染することがあり、汚染された食品を生や加熱不十分で食べることにより感染します。家畜の場合、保菌していても下痢などの症状を示すことはほとんどないので、と畜検査で見つけることは困難です。日本では、牛レバー、牛肉、野菜の浅漬け、井戸水等を感染源とする食中毒事例が報告されています。

  この食中毒では、潜伏期間は1〜14日間(平均4~8日)、主な症状は腹痛と下痢です。全く症状がないもの、軽い腹痛や下痢のみのもの、頻回の水様便、激しい腹痛と血便を伴う出血性大腸炎を起こすものもありますが、高熱を発することは、あまりありません。乳幼児や高齢者では、重症化することがあり、死に至る場合もあります。

  腸管出血性大腸菌は比較的少ない菌数で食中毒が発生するため、食べ物に細菌をくっつけないことが重要です。また、腸管出血性大腸菌は加熱や消毒により死滅するため、食肉は中心部まで十分加熱する(75℃以上で1分以上)、野菜類はよく洗浄する、調理器具の使い分けや消毒などの対策、低温保存の徹底をすることで予防できます。これらの対策は他の食中毒原因菌にも有効な方法ですので、食中毒予防のために日常生活の中で是非実践してください。

 

*様々な原因によって生じる急性腎不全。貧血、血小板減少、腎機能障害を特徴とする。

 

(参考) 食品安全委員会ウェブサイトで公開している資料

・腸管出血性大腸菌 食中毒の概要について

http://www.fsc.go.jp/sonota/e1_bbq_food_poisoning_e2.data/01_ehec.pdf

・腸管出血性大腸菌 リスクプロファイル

http://www.fsc.go.jp/sonota/risk_profile/risk_ushi_o157.pdf

・報道関係者との意見交換会

http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20170112ik1