黄色ブドウ球菌による食中毒を防ごう

~手からの汚染を防ぐことがポイント~

 

 黄色ブドウ球菌は、私たちを取り巻く環境に広く分布し、健康な人の鼻やのど等でも検出されています。特に、手などの切り傷や化膿巣には大量に存在しています。そのため、素手で食品に触るなどすることにより食品に付着することがあります。黄色ブドウ球菌の場合、食品についた菌が食中毒を引き起こすのではありません。菌が付着した食品が一定時間、室温(最も菌が増殖する温度は30~37℃)に放置された場合、食品中で増殖した黄色ブドウ球菌が耐熱性の毒素(エンテロトキシン)を産生することがあり、このエンテロトキシンを食品と一緒に摂取することにより食中毒が起こります。エンテロトキシンは、耐熱性が高いので、通常の加熱調理では分解されず、食品中に残存します。そのため、加熱は予防対策にはなりません。

  食中毒症状は、摂食後0.5~6時間(平均3時間)の短い潜伏期間で現れ、吐き気、嘔吐、腹痛などで、下痢を伴うこともありますが、一般に高熱は出ません。症状には個人差がありますが、通常、1日か2日で回復します。まれに、ショック症状を伴うなど、重症化することがあり、その場合には速やかに医師の診察を受ける必要があります。

  以前から、黄色ブドウ球菌による食中毒の原因食品としてよく挙げられるものに「おにぎり」があります。調理時に直接手を触れたおにぎりを常温で携帯し、時間が経ってから喫食することで、増殖した黄色ブドウ球菌が、エンテロトキシンを産生し、そのおにぎりを食べて、食中毒になることがあるからです。その他にも、寿司、肉・卵・乳などの調理加工品や菓子類など、多岐にわたる原因食品が報告されています。

  黄色ブドウ球菌による食中毒の発生件数は、2000年以降、減少傾向にありますが、決して過去のものではありません。一事例あたりの患者数にはこの数年、増加傾向が見られます。夏休み期間は、野外活動やイベント等で、多くの人が調理に関わって、大人数で食事をするような機会も増加します。ひとりひとりが食中毒対策を行うことが大切です。

 

◆黄色ブドウ球菌による食中毒の予防方法◆

●ポイント1:黄色ブドウ球菌を食品につけない

・調理の前、トイレの後には、必ず手をよく洗い、手指を清浄にする。

・手指に切り傷や化膿巣がある時には、素手で食品に触れたり、調理をしたりしない。(例えば、ビニール手袋などを着用する)

●ポイント2:食品中の黄色ブドウ球菌をふやさない

・作った料理は早めに食べ切る。

・すぐ食べない時は、すみやかに冷蔵庫に入れて、10℃以下で保存する。

 

(参考)

・食品安全委員会 ブドウ球菌食中毒 ファクトシート(平成23年11月24日作成):http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/09staphylococcal.pdf