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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
生活の中の食品安全 -ノロウイルス食中毒に気を付けよう[1]

平成28年12月16日配信
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今月のe-マガジン【読み物版】は、ノロウイルス食中毒についてお送りします。
ノロウイルスによる食中毒は、年間を通して発生していますが、毎年11月頃から増え始め、冬季(1月~3月)に多く発生するので、これからが特に注意が必要です。

 

ノロウイルスは、食品から感染する食中毒のほか、人から人へ感染する感染症も引き起こします。小さなお子さんやご高齢の方、免疫の低下した方などが感染した場合、症状が重くなることがあるのでご家庭でも予防対策をしっかりすることが大切です。

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1.ノロウイルス食中毒の発生状況とその感染力 -とても小さく、

感染力が強い-
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■発生状況
ノロウイルス食中毒は、患者数について、過去10年間以上にわたって食中毒原因の一位となっています。これは、1事件当たりの患者数が多いことによります。
昨年(2015年)についてみると、事件数481件(全体の40.0%)、患者数14,876人(全体の65.5%)で、ともに食中毒の原因の中で第一位でした。1事件当たりの平均患者数は、30.9人でした。

 

■感染力
ノロウイルスは、球形で、直径30〜40nm(※)前後と、とても小さなウイルスです。手洗いが不十分だと、感染の原因になることがあります。少量(10~100個程度)が口に入っただけでも、感染、発症するとされています。このように、感染力が強いことが特徴です。

※1nm(ナノメートル)は、1m(メートル)の10億分の1。

 

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2.感染経路 -食品からと、人から-
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ノロウイルスの感染経路は、ほとんどが経口感染です。ノロウイルスの感染様式は大きく分けて二つあります。一つは、ウイルスに汚染された食品からの感染(食中毒)で、もう一つは、人の手や飛沫などを介することによる人から人への感染です。


■食品からの感染:ウイルスに汚染された食品を、生や十分に加熱調理しないで食べたり、ウイルスに感染した食品取扱者を介してウイルスが食品につき、そのウイルスに汚染された食品を食べることによって感染します。
 

■人から人への感染:患者の便やおう吐物に触れ、手指などを介してウイルスが口から入ったり、家庭や施設の中などの人と人が接触する機会の多い所で、ウイルスを含んだ飛沫が口から入ったりすることにより感染します。

 

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3.原因食品 -特定できないことが多い-
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ノロウイルスは、食品から直接ウイルスを検出することが難しく、過去のノロウイルス食中毒事例をみると、約7割で原因食品を特定できていません。原因食品が特定された事例では、二枚貝などがあります。また、ウイルスに感染した食品取扱者を介して、食品が汚染されるケースも多いと考えられています。

 

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4.主な症状 -おう吐、吐き気、下痢など-
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ノロウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は、24〜48時間程度です。
ノロウイルスに感染すると、人の腸管内で増殖し、ノロウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎の症状とされる、おう吐、吐き気、下痢、腹痛、発熱(一般的に37〜38℃程度)などがみられます。

 

おう吐は、突然、抑えることができないほど急激に強く起こるのが特徴的です。これらの症状が、1〜2日程度継続してから、治癒するとされています。
後遺症はありませんが、乳幼児、高齢者、免疫の低下した方などでは、脱水症状などが起こり、症状が重くなることがあります。また、おう吐物を気道に詰まらせるなどの二次的な影響で死亡した例が報告されています。


食中毒の症状がおさまった後でも、通常1週間程度、長いと1か月程度ウイルスを便中に排出する場合があります。症状が改善した後も、しばらくの間は、直接食品を取り扱うことは避けた方がよいでしょう。

 

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5.予防対策のポイント
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予防対策のポイントは、

(1)食品の加熱はしっかりと

(2)手洗いの励行

(3)煮沸や塩素による調理器具の消毒

の3点です。

特にこれからの季節は、これらを家庭において実践し、感染予防を図ることが大切です。

 

■(1) 食品の加熱はしっかりと: 食品中のノロウイルスの感染性を失わせるためには、中心温度85〜90℃で90秒間以上の加熱が必要です。できるだけ、食品は中心部までしっかりと「加熱」しましょう。


■(2) 手洗いの励行: 「手洗い」をしっかりと行いましょう。
 (一) 食事前、
(二)トイレの後、(三)調理前後は、必ず手を洗いましょう。手洗いは、石けんで手首まで(30秒程度)よく洗浄し、流水で十分すすぎをしてください。2回繰り返すとより効果的です。
 

■(3) 煮沸や塩素による調理器具の消毒: 調理器具や調理台は「消毒」して、いつも清潔にしましょう。
まな板、包丁、食器、ふきんなどは使用後すぐに洗浄しましょう。調理器具や調理台の消毒には、煮沸や、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)(※)で浸すように拭いたりして消毒することが効果的です。

 

※次亜塩素酸ナトリウム消毒液(塩素濃度200ppm)の作り方
市販の塩素系漂白剤(塩素濃度約5%)を250倍希釈して作ることができます(例:5Lの水に漂白剤を20ml入れる。)。塩素系漂白剤を使用する際は、「使用上の注意」をよく確認してください。

 

≪参考≫
・食品安全委員会;「食中毒予防のポイント ノロウイルスによる食中毒にご注意ください」

http://www.fsc.go.jp/sonota/e1_norovirus.html
・厚生労働省;「食中毒の原因(細菌以外) ノロウイルス」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/03.html
・国立感染症研究所感染症情報センター;「ノロウイルス感染症」
http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html