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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】

誰もが食べている化学物質パート2~微生物や酵素による化学反応~その2 平成28年2月26日配信  
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前回(2月25日配信)のe-マガジン【読み物版】では、「食品を科学する-リスクアナリシス(分析)連続講座」の中から、「誰もが食べている化学物質パート2~微生物や酵素による化学反応~」(平成27年7月実施)の概要をお届けしました。
今号では、Q&Aをお送りします。

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微生物や酵素による化学反応Q&A
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Q1 発酵と腐敗の違いは何ですか?
Q2 酵素パワーとか聞きますが、「酵素」とは何ですか?また、「酵母」とは違うのでしょうか?
Q3 腐敗した食品は、臭いや見た目で分かりますが、食中毒菌が付着した食品かどうか、臭いや見た目で判断することはできますか?
Q4 うま味調味料である、グルタミン酸ナトリウムについて、ネットなどでは危険であるというような情報がありますが、食べても問題ありませんか。


Q1 発酵と腐敗の違いは何ですか?
A1 微生物が関与する食品の化学変化について、人間の生活にとって有益な反応を「発酵」と呼んでいます。そうではない反応を「腐敗」と呼び、酪酸などの嫌な臭いのもととなる物質を生産することがあります。どちらも、微生物の働きにより、食品中の物質が化学反応して、元の状態とは異なった状態になることです。

微生物の持つ酵素は、食品成分のタンパク質や炭水化物を分解して、アミノ酸やブドウ糖に変化させるのですが、このときに、微生物自身が必要なエネルギーや必要な成分を取り込みます。そして、残った分解産物が、人間の生活にとって有益なものであれば発酵食品になります。
 

Q2 酵素パワーとか聞きますが、「酵素」とは何ですか?また、「酵母」とは違うのでしょうか?
A2 自身は変化せずに、化学反応を進めやすくするものを触媒(しょくばい)と言いますが、生体内での化学反応を進めやすくする触媒を「酵素」と呼びます。タンパク質(アミノ酸)が主成分です。


例えば、食べ物を消化するための酵素には、唾液(つば)に含まれ炭水化物を分解する酵素であるアミラーゼ、胃液にある脂肪を分解する酵素であるリパーゼなどがあります。


人間は、有史以来、この酵素の持つ働きを食品に活用して発酵食品をつくってきました。特に、日本においては、麹(こうじ)と言う米、麦、大豆などに麹菌(麹カビ)などをはやしたものを利用して、日本酒、みそ、食酢、醤油などを製造してきました。麹菌は、増殖するために菌糸の先端から、デンプンやタンパク質などを分解する様々な酵素を分泌します。


なお、酵素自体は消化管でアミノ酸とペプチドに分解されることから、他のタンパク質と同様で、食べても特段の効果が期待されるものではありません。
「酵母」は、酵母菌とも言い、真菌類の単細胞性の微生物ですが、「酵素」は生物ではありません。
酵母には、パンをつくつくるためのイースト菌、ビールのアルコール発酵を行うビール酵母などが知られています。


Q3 腐敗した食品は、臭いや見た目で分かりますが、食中毒菌が付着した食品かどうか、臭いや見た目で判断することはできますか?

A3 できません。腐敗菌によって腐敗した食品は、嫌な臭いやねばりなどで腐っていると判断できます。


しかし、食中毒菌が食品中で増加し、菌の種類によっては毒素を産出していたとしても、見た目も変わらず、臭いもないものが多いので、危険であると判断することができません。調理して時間が経過した食品や保存方法が適切でなかった食品は食べるのを避けてください。


Q4 うま味調味料である、グルタミン酸ナトリウムについて、ネットなどでは危険であるというよう
な情報がありますが、食べても問題ありませんか。
A4 グルタミン酸ナトリウムは、アミノ酸の一種で、人間の体の中にも存在している物質です。魚や肉などのタンパク質を含む食品に含まれています。


過去に中華料理店で食事をした後に片頭痛が起きたという報告があり(「チャイニーズ・レストラン・シンドローム」と呼ばれました)、その原因がグルタミン酸ナトリウムではないかと疑われたことがありました。


しかし、科学的に食品の安全性を評価する各国の機関でグルタミン酸ナトリウムの評価が行われ、通常食事に添加する範囲では問題ないとされています。グルタミン酸ナトリウムはうま味調味料として現在も広く使用されています。

なお、ナトリウムが含まれているので、食塩と同様に控えめに使うことが必要です。


≪参考≫
・食品安全委員会;「食品を科学する-リスクアナリシス(分析)連続講座」 第1回「誰もが食べて
いる化学物質パート2~微生物や酵素による化学反応~」
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20150723ik1

・食品安全委員会;食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[食品の加工貯蔵中の化学変化と安全性
その1] (2014.11.14)
https://www.fsc.go.jp/sonota/e-mailmagazine/e-mailmagazine_h2611_r1.html