ハンス・ジマーの音楽と映像の一体感に鳥肌
『ダンケルク』
第2次世界大戦の実話を『メメント』『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督が映画化。民間船も動員して海岸線に追い詰められた兵士を救出するというワンテーマで106分間終始、心臓がドキドキするほどの緊迫感や臨場感を生み出し続けるのはあっぱれの一言。生きるためには逃げるしかないという差し迫った状況を、陸・海・空の3つの視点からこだわりのアングルでカメラに収めている。無名の若手をメインに起用したキャスティングや実際の場所での撮影が功を奏し、リアリティーも申し分ない。セリフが必要最低限に抑えられているため、長めの無言シーンは心の葛藤を表しているようで際立つ。映画音楽の巨匠ハンス・ジマーが、警鐘を鳴らすようなメロディーをピタリと映像に合わせてくるあたりは鳥肌ものだ。音楽がフィルムを昇華させ、精魂込められた贅沢な仕上がりに。なんとなく無骨な魅力を醸し出すトム・ハーディのファンも大満足間違いなし! 観て損のない力作。(編集部・小松芙未)
映画『ダンケルク』は9月9日より公開
何だこの爽やかさは!万人に響くオスカー候補作
『ドリーム』
北米では『ラ・ラ・ランド』を上回り、第89回アカデミー賞作品賞ノミネート作品で最大のヒットを記録したことが証明しているように、本作の爽快感は観る者を選ばない。まだ人種差別法という法律が存在した1960年代初頭のアメリカ・NASAを舞台に、3人の黒人女性がアメリカ初の有人宇宙飛行という一大プロジェクトに多大なる貢献をする姿を追った本作でセオドア・メルフィ監督(『ヴィンセントが教えてくれたこと』)たちが強調したのは、彼女たちの才気と明るさとひたむきさ。暗くなりがちな「人種差別」「性差別」といった題材を扱いながら、万人に響く爽やかさ、ユーモア、エネルギーが全編に満ちあふれている。「Empire 成功の代償」のタラジ・P・ヘンソン、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』のオクタヴィア・スペンサー、『ムーンライト』のジャネール・モネイの3人組のコンビネーションも、人気アーティストのファレル・ウィリアムスが書き下ろしたポップでポジティブな音楽も心地よい。タラジふんするキャサリンの魂の叫び、ケヴィン・コスナー演じる上司の男気あふれる行動に泣かされる。(編集部・市川遥)
映画『ドリーム』は9月29日より公開
こういう実写化もっと欲しい!アクション“全振り”のノレる作品
『亜人』
「東京喰種」「銀魂」「ジョジョ」と実写化大作フィーバーが続いた今夏。原作の世界観や登場人物の再現、そして1~2時間の限られた時間の中で原作のどのエピソードを選びドラマ性あふれる「劇場版」にするか。製作陣にとって取捨選択は常に悩みの種のはず。だが、『亜人』はアクションに“全振り”したのが功を奏した。原作やアニメ版で主人公・永井に人間味を与えていた友人の存在をカットし、ラスボスとの戦いまでをほぼ一本道化。個人的に原作の再現&説明に振り回されてあいまいな結果になる実写化が一番残念に感じるのだが、『亜人』は「とにかくアクションを見てくれ!!」と勢いでたたみかけてくるので、鑑賞後の爽快感が非常に心地よい。ドラマ部分で主人公に感情移入できるチャンスは少なくなってしまったが、ポイントに特化した作品なので観やすさは◎。ほぼ途切れることがない音楽も全く邪魔にならず、むしろ映像のテンポを助長させている。本広克行監督の手腕もだが、主演の佐藤健の役者としての魅力もわかりやすく伝わる。(編集部・井本早紀)
映画『亜人』は9月30日より公開