彼と電話で話をした1週間後、

その心配は本当に起こってしまった。

39階とうい高さ。

そこから飛び降りる恐怖を超えるほど辛かったのだろう。

身体的、精神的にも限界に達してしまったのだろう。

いうなれば毎日拷問されているようなもの。

そんな苦しみが続いたら、

もう生きていられないと誰もが思うに違いない。

 

手術や抗癌剤治療の肉体的辛さ。

そして肉体への負荷がかかることによる自律神経の狂い。

さらに再発、転移という将来への恐怖。

鬱になる癌患者が多い理由は、

常に死を意識しながら生きなければならないことが原因だろう。

 

特に彼の場合はすべてにおいて人生の成功者だったのだから、

その落差は大きく、

「もう治らない、このまま生きてはいけない」

と思い込んでしまった(事実そうだったのかもしれない)のも理解できる。

そんな状態の彼に「頑張れ、生きろ!」というのが良いアドバイスとも思えない。

自分に置き換えても死への道を選んでいたかもしれない。

 

そして信じられない事が起こっていた。

39階からの投身だったので、

最期のお別れは写真だけになるだろうと思っていたのだが、

棺の中の彼は、何事もなかったかのようなきれいな顔をしていた。

奇跡的と表現するのが良いのかわからないが、

彼の家族への愛がそうさせ奇跡だったのか...

 

※画像は生成AIで作成したイメージです