プラハ国立歌劇場「椿姫」









プラハ国立歌劇場「椿姫」

2015.10.17 東京文化会館・上野
指揮:マルティン・レギヌス
管弦楽:プラハ国立歌劇場管弦楽団
出演
ヴィオレッタ;デジレ・ランカトーレ
アルフレード;アレシュ・ブリスツェイン
ジェルモン;スヴァトブルク・セム

 毎度お馴染みのようにやってきては全国を巡業しているプラハ国立、いつもは6月だったと思うが、今年は10月、日本が一番いいときだから、楽しいだろうな。全国各地でおいしいもの食べられそう。ついて回りたいくらい。ほとんど寅さんの気分。

 メイやテオドシュウのヴィオレッタを聴いたのもこの歌劇場だったが、今回は推し中の推しソプラノのランカトーレ。最初のルチアからずっとつきあっているが、そろそろデジレちゃんなんて言ってられない年齢か。それでもあいかわらず、キュート。やっぱりデジレちゃんだな。

 いよいよ、ヴィオレッタが歌えるようになったよう。一幕のアリアは、前半がよかった。深みのあるしかも純度の高い響きで、心情を的確に表現。後半は持ち前のテクニック全開でさすがに文句なし。今このアリアをここまで歌えるソプラノはそうはいないだろう。ここだけで元をとった。終わって大ブラヴァー。私もお付き合い。

 レッジェーロには鬼門の二幕。確かにもう少しヴォリュームが欲しいところもあるが、無理をしないで無難にこなしていた。ジェルモンが声がでかいだけなんで、感動までには到らないが、これはしょうがないところ。ヌッチに脳内変換しようと思ったが、うるさくてうまくできなかった。ずっと抑えていた感情を、後半の「アルフレード、アルフレード」で爆発させた。といっても特に無理に強調するのではなく、天国的でしかも人間的な中音域の響きで表現していた。苦しみの中から、ヴィオレッタが人間的に一段上がったのがよくわかる。ここには落涙。

 三幕のアリアは、繰り返しがなかったのが残念だが、技術と表現が結びついた見事なもの。周りがもう少しよければ、落ち入りももう少し感動的だったかもしれないが、これも仕方がないだろう。デヴィーアやメイと並んで、トップ・クラスのヴィオレッタであることがわかって大満足。二人に比べて等身大で人間的なところが魅力だといえよう。

 ジェルモンはともかく、意外にアルフレードは悪くなかった。声はいいし、品がある。チェコの若手テノールのようで、ネットで調べたらザルツブルグで「マクロプロス事件」歌っているよう(しかし渋いな)。二幕後半でのキレ振りはなかなかで、ヴィオレッタのスカートの中にまで札束入れていて、そこで急に盛り上がった。モーツァルトは当然いいとして、本人にやる気があればだがローエングリンなんかよさそう。名前は覚えられないが、これから出てくるかもしれない。

 残念ながら客席はかなり寂しかったが、コアなデジレちゃん・ファンがいたようで(私もそう)、カテコはブラヴァー大会で盛り上がっていた。

27日の武蔵野市民文化会館での彼女のリサイタルもますます楽しみです。。