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増水した川



幸いなことに私の実家は高台にあり、浸水冠水の被害に遭うことは無いのですが

帰省途中の甥っ子がやられました。

大幅な電車の遅れの末、途中の駅で足止めされ

自宅まであと数十kmのところで、身動きが取れなくなりました。

姉夫婦も仕事で身動きが取れず

帰省中で暇な私が、車を飛ばして迎えに行くことになりました。


駅へと向かう国道は、蛇行するY川(揚子江ではありません)と何度も交差しており

川はある時は右側に、ある時は左側に

生木まるごと一本やトタンなどを巻き込み

ごうごう唸りながら、濁流となって流れていました。

川沿いの田んぼや畑は浸水し

橋のたもと近くの家屋も浸水していました。


そのうち橋も冠水するのでは?無事帰れるだろうか?

などと心細く思っていた所へ

「駅付近に車は入れないから、近くまで来たら連絡して。」と甥っ子から。

なんか不穏だわと思いつつ、車を走らせると

「7km先冠水により完全閉鎖」の表示。

怖いわ~駅までたどり着けないかも。

でも、とりあえず行ける所まで行ってみようと、更に車を走らせると

やっと駅の表示が見えて来ました。


近くの駐車場に車を入れ、甥っ子に連絡し、無事合流できたわけですが

なんと、彼は下半身ずぶ濡れでした。

駅構内が腰の高さまで浸水し、周辺は30mほどのプールになっていたそうです。

入って来る車は軒並み被害に遭い

無理にアクセルをふかすと、マフラーから水が噴出。

特に軽自動車は、プカプカ浮かんでいたそうです。

「服脱いで泳いでた高校生もいた。」

そっか。30mプールだもんね。

甥っ子も、あと数歳若ければ、一緒に泳いでいたかも。

大人になったものです。


とはいえ、泳がなくとも、泥水のプールを歩いて脱出すればずぶ濡れです。

着替えはすべて使い果たしたとのこと。

冷たくて気持ち悪いし、車のシートを汚したくもなかったのでしょう。

彼は後部座席でビショビショのズボンを脱ぎ

「足さみー!」と、タオルを膝にかけて凌いでいました。(変質者状態)

もしも、私ではなく彼のお母さんが迎えに行っていたのなら

遠慮なく助手席でやったでしょうに、叔母にはちゃんと気を遣うところが

ちょっとかわいい甥っ子です。


しかも、ぎこちない運転の私を心配してか

「俺が運転しましょうか。何度も通ってる道だから。」

長旅でトラブルに遭い、疲れているところを申し訳ないとは思いましたが

私の運転をハラハラしながら見てると、余計に疲れるかもしれないので

素直にお願いすることに。

でも、どうやって前に来るの?その格好で。

「シートの間から移動すれば…」

なるほど。


というわけで、帰り道は私が後部座席で楽々帰って来ました。

一カ所だけ、冠水して通行止めになり、迂回した所もありましたが

甥っ子がうまく迂回してくれたので、順調でした。

落ち着いてハンドルを握る彼を、成長したものだと頼もしく思うと同時に

不埒な私はついつい膝のタオルが気になり

会話の途中で突如吹き出しそうになるのを、必死でこらえたのでした。


私たちの場合は、そんな程度で済んだわけてすが

車の窓から見えた、浸水していたお宅や田んぼ

濁流に押し流された作業小屋などなど

深刻な被害に遭ってしまった皆さまは、本当にお気の毒です。

畑や田んぼをじっと見つめている方々もお見かけしました。

おそらく、田畑のオーナーさんでしょう。

収穫間近の野菜や穂を実らせ始めた稲が、溺れていくのを目前に

心中いかばかりかと思います。


そんな水害をかいくぐって市場に並ぶ野菜やお米を見つけたら

率先して買って、おいしくいただこうと思います。