ひと仕事おえて電車に揺られ、ちょっと良い気分になっていたところへ

“Excuse me. Excuse me.”

ハイ♪私にご用でしょうか?

って、英語やないかーい!

眠気が一気に吹っ飛びました。

ついでに、膝の上の携帯も吹っ飛びました。

落ち着け、私。

“I'd like to go to M station.”

と尋ねて来たのは、小さな男の子を連れた、アジア系と思われる女性でした。

M駅ならこの沿線だけど、どのへんだっけ、もう通り過ぎたかも。

っていうか、今、どのあたりを走ってるんだろう?

と思いながら、鞄の中をひっくり返して時刻表を探していたら

今度は、胸元に引っ掛けていたメガネも吹っ飛びました。

だから、落ち着けというに。

やっと時刻表が見つかって、次の次の駅であることが判明したのですが

「次の次の駅」って、どう言えば?

う゛うっ!と、詰まる私を見て、彼女は思ったにちがいありません。

「聞く相手を間違えた。」と。

そうこうする間にも電車は走り続け、次の駅に到着しました。

おかげで、彼女の目的地のM駅は“Next station”となり

晴れて私はそのことを彼女に告げることができたのでした。

やれやれ。



無事にミッションを遂行して、気持ちに少し余裕ができた私は

あなたの母国語は何ですか?

お子さんは何歳ですか?

日本にはどのくらい滞在しているのですか?

日本の食べ物は、いかがですか?

などと、根ほり葉ほり尋ねてみました。

意外と通じましたし、彼女の答えも、ほぼ聞き取ることができました。

彼女もネイティブではなかったせいか、話す英語はゆっくりめで

文法に忠実というか、英会話の教材に載っているような話し方でしたから。

おかげさまで、良い体験ができました。



何度か経験していることですが

お互いに母国語ではない言語で会話するのは、結構うまくいくものです。

双方がゆっくり話す、というより、ゆっくりしか話せないし

単語がわからなくて言葉に詰まっても

いいのよいいのよ、私もわからないんだから

と、お互いに寛容でいられます。

本場の方の話し方に触れるのも、もちろん勉強になりますが

今回、これはこれで、良かったなと思います。



よだれも垂らしてなかったみたいだし。



くれぐれも、電車の中での居眠りには気をつけなはれやっ!