『リンさんの小さな子』 | small planet

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日々の散文。
もしくは 独り言。

フィリップ クローデルと言う人が書いた小説。

戦争で家族を失い故国を追われた老人が生まれて間もない赤ん坊を抱いて難民となった…。

そう帯に記されている。
何気なく購入し読んだのだが
私には 一人のお婆ちゃんを思い起こさせた。

いつも大事にプリモプリエルと言うかわいい人形を抱き
『めんこちゃん』と呼びながらほほえむ かわいい人。

小説の中の老人は 終始 赤ん坊を抱きながら 色々な場所で生き続ける。出会う人々は 訝しそうに老人を眺め 時には 心ない仕打ちを受ける。
それでも 老人は めげずに人生を感じながら日々を過ごすのだ。最後に この赤ん坊が 人の子では なく 『人形』だったと言う事実がさりげなく表現されている。
私は 最後まで気がつかずに読みふけり最後の行で涙がでた。
たぶん 老人の目にも
私が知るお婆ちゃんの目にも
『人形』など映っては いない。目に映るのは愛らしい『子供』なのだ。

その人を 認めると言うことは
その人の事実を受け入れると言うこと。

今の現場に飛び込んだばかりの時にこの本を見つけた。

私にとって バイブルみたいに響いた一冊。

認知症を持つ人たちは
持たない人には 想像がつかない世界観を表現したりする。
時々 そんな人たちを
『弱い人』とみなして関わろうとする人もいる。

私には 認知症を持つ人も
近所のお年寄りも みんな同じ人にみえる。
だから どんな人とも普通の会話しかしない。
はたからみたら 専門職なんて言葉が一番似合わないのかもしれない。たぶん 何も考えてないように見えるだろう。

リンさんと言う老人が私に伝えたのは 『差別と偏見のない世界』だ。

私の周りには リンさんがいっぱいいます。
でもそれは 別段 不思議な事じゃない。

もしかしたら 私も誰かの
リンさんかもしれない。

小説は 『本』は 私に
メタファーをくれます。

記憶が交差して
新たな感情を生み 自分を構築する材料をくれます。

文字を考えた古代の人々に
敬意をはらいたいです。