雪の中、越境して向かった病院。

待合室のロビーにいる人たちは、ひとり、またひとりと姿を消して(再診の日だし、どなたも車椅子だったりで、厳密にはひとりではなくて付き添いのひとと2人づつ・・・去ってくんだけど)

私たち、ふたりだけになって。

先生、今日も長くなるの、わかってるんだなあ。

私、待ってる間中もう、帰りたくてしょぼん

帰りたくて仕方がなかった。

ようやく呼ばれて、第一声は

「この前から、何か変わったことはありますか?」って。

私、この数週間に出始めた症状のことを

全部、丁寧に話すことから・・・このバトルは幕開けだったんだね。

まず、舌の形がいびつになってきて、先端に溝が入って割れてきたこと

ろれつが回らなくて喋りつらいこと

食べてると、口の中、噛んじゃって口内炎がいっぱいなこと

熱いものをたべるとき、フーフーしたくても、震えてできないこと

そうやって、喋っててもロレツがまわらなくて喋りづらいのは、先生にも伝わったみたい。

舌を見せて

先生も納得。

口笛、吹ける?

って。

私、自慢じゃないけど、口笛、かなりうまかったんだ。曲がキレイに吹けるくらい。

もともと、音楽家だった母から、ピアノやら楽器やら・・・仕込まれてたから。

だから、吹いてみてって言われて吹いたんだけど

風がむなしく漏れるような・・・そんな感じにしかならなかった。

あとは、手や足の力比べ(打検器使ったりしての神経内科おきまりのもの)して

左の腱反射弱いね

足も、震えがくるねって。

握力も、右が9、左が5.7に低下。

これが、たった2~3週間の間に、前回から変わったこと。

この前の診察で、もしかしたら、他の病気はないか探って見ましょうとかって、筋肉系の病気の検査したけど、その結果

それも

「全く異常ありませんでした」

って。でしょ?

それ、わかってるし。

そこで、出た言葉が昨日書いた

「どうしましょう・・・」

だった。

そして、どうしてくれるのかなあって思ったら、

もしかして、確定について考えてくれるのかなあって思ったら

いきなりの告知のときとおんなじで

食べ物もむせるようだと、ちょっとしたことで気管支炎になったりしたら命取り。

そうなる今の体力のあるうちに、胃ろうを作っておいたほうがいい

そして

もし、気管支炎になったり、肺炎になったりしたら、もともと悪い呼吸状態だから、急に事態は変わるかもしれない。
前にも話したけど、今使ってる人口呼吸マスクのバイパップは一時しのぎ。いずれ、気管切開して人工呼吸器をつけて生きるか、の選択をしなきゃいけなくなります。

そのことは、この前から今で、考えは決まりましたか?

って。

もうね・・・

わけわかんない。なんでそっちにいくのかが。



「こちらの病院の圏内だと、介護や福祉やいろいろ整ってるかもしれないですけど、私の県ではかなり難しいですよ。そういう地域格差を考えると、望んでも難しいことがたくさんありますよ」

って。

そしたら先生・・・また

「家族構成や、システムは関係ないです。あなたが、生きてやり遂げたいことがあるかどうかです」
って。

うん。それも前、聞いた。

「私は、やり遂げたいことはたくさん、たくさんあります。今だってたくさんあります。だから、この状況で落ち込んでるわけじゃないです。呼吸器をつけて、生きるかの選択についてだって、私はできることなら、開拓していきたいです。ただ、今の・・・きちんとした病名さえつかない状況で、その、生きるかどうかの選択をしろといわれても、そのビジョンは描けません」

って。

先生、しばらく考えて

「そうですよね・・・」

って。

そうなのよ。それで、どうするの?

そしたら

「ALSの患者さんを在宅でケアするにあたって、その、経験が豊富とか、そういう人たちが回りに揃ってるひとなんてまず、ありません。みんな、自分がはじめてで、そこからはじめるんです」

「だから、家族がいないとか、そういうのは関係ありません」

「あなたが、生きたいかどうかです」


・・・・・・・

う・・・ん!?

私のこと、ALSって確定してないのに、なんで「ALSの患者さん」って限局したの?

でも、それはさておき、私はそういう話をしにきたわけじゃないから、必死で会話を戻そうと・・・言葉を選んで・・・

「そういう選択をする前に、今の、この、確定できない間に、たった2~3週間の間に出てくる症状に何も出来ないでいることのほうが辛いんですけど」

って。

そして、「前回、自費で飲みますかっておっしゃったリルテック、効果のほどは個人差もあるし、そんなに有効ではないとも・・・聞いていますが、口からの症状には効くと聞きますけど、どうなんでしょう?」

って。

「確かに、口からの症状には効くといいます。でも・・・進行をとめるわけではなくて、少し・・・数ヶ月遅らせるかどうかです。国が唯一認めた薬ですが。その数ヶ月は、そんなに大差はないですし、むしろ、そのために、確定するのも・・・どうかという問題になります。確定するということは、特定疾患として、国の公費を使うわけですから、税金が使われることになります。だから、その高額な費用を偏った考えで利用するわけにはいかないんです」

あの・・・

税金の講和を聞きにきたわけじゃないから、そこは悪いけど遮らせてもらっちゃった・・・

「結局、確定するため、申請するためには筋電図に捉えられるしかない、それを待つしかないってことですね?」

って私。

「症状が認められても、申請の基準がありますから、それを勝手に変えるわけには行きません。費用の面で負担がかかりますから、なんとかしたいという思いはありますが、それまでは・・・」

仕方ないからって言いたかったんだよね。

手のひらが痩せたと言っても、痩せれば、筋電図には出るはず。それが出ないなら・・・ただ、肉が痩せただけなのかもしれないしって

仰るから~

もう、ここで、ダンナさんがCDに記録してきた画像公開!!

先生、じっと・・・ずっと・・・今までの変化の画像を見続けて

言った言葉

「これは・・・筋肉が萎縮してますね」

って。

やっと・・・そこ、認めてくれたんだ。

そして、そこからまた長いバトル再開。

でも、もうさすがに今日はいったんここまでで。

長くなってごめんなさい。