最近、「交渉術」というものについて、
改めて勉強してみようという気になっている。
学部時代に参加していたサークルの性質上、交渉というものについ
てある程度の経験があるとはいえ、それを鉛筆や包丁といった、普
段使いの道具に近いほどにまで使いこなせるかと言われれば、全く
の自信を持ってYESと言うことまではできないからである。
そこで、まず、過去の交渉体験を振り返ってみることにした。失敗も
成功も、それを糧にすることができて初めて、人は成長するものだ。
と、多少大げさなことを書いてみたが、実際のところ、これから先の
交渉体験についての以下の文章は、大学院の「交渉術」という授業
の第1回目の講義で課された課題への答えとして提出したものであ
る。なぜそんなものをこのブログにつらつらと載せる必要があるのか
と言われれば、確かにはっきりと的を得た返答はできないかもしれな
いが、まぁ端的に言ってみれば、過去の交渉体験を掘り起こして文
章にしてみると、意外に面白いものができたという、ただ単にそれだ
けのことである。
であるからして、ここで既に以下を読む気をなくしている人は、全くも
ってここから先を読む必要性はない。なぜなら、下の文章を読んだ
ところでわかることと言えば、せいぜい、私が過去にどのような窮地
に追い込まれたかということ(しかもそれも、生死を左右するような大
した窮地では全くない)と、その経験から得た私にとってのほんのわ
ずかの教訓ぐらいだからである。
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● 観光先の露店でのディスカウント(成功体験)
観光で訪れた中国で、露店の土産物を値切る。1度目のディスカウントで自分が友達より高い値段で買わされたことを後で知り、そのときに、相手が譲れるボトムラインの値段を予め知っておくことが必要だと感じた。
また、自分が納得いかないときは、安易に譲らず帰ろうとしてみた。すると、少しでも売りたい相手は、折れて譲歩してきた。このように、相手の出方を見るためにいろんな姿勢を演じてみることも交渉にとっては有益なのだと学んだ。
● レストランとの交渉(成功体験)
懇親会の幹事を担当した時、ある数人のメンバーが当日になって来られなくなったので、当日キャンセルについてレストラン側と交渉した。通常なら、コース予約の当日キャンセル分は、全てこちら客側の負担である。なので、本来であればその負担を受け入れなければならないが、しかし、もしその負担を受け入れるとなれば、懇親会参加者の出費が増えるか、あるいは不参加者から参加費用を集めることになる。できればこのような気分の良くない事態は避けたい。
そこで、レストラン側に話をしてみることにした。それはあくまで、交渉というよりはお願いに近い姿勢で、である。なぜなら、初めから互いに対等な立場にいるのではなく、当日キャンセルが出た点で、私達客側のほうが立場は弱いものとなっていたからである。
しかし、立場は弱いながらも話をしてみた甲斐はあった。というのも、払わなければならない3人分の当日キャンセル費用を、最終的には1人分にしてもらえたからである。
おそらく、レストラン側は、この話し合いがうまくいかないことで客が来なくなることを懸念したのだろう(実際にはそんなことにはなっていなかっただろうけれど)。例えば、もし予約の全員が来ないとなると、コースのために用意した食材の費用について余分なコストがかかってしまう。彼らが想定していたであろうその最悪の事態を避けるために、あのとき彼らが妥協できるところまで譲ってくれたのだと、今になって再び感謝する。
● 空港・搭乗受付口での交渉(失敗体験)
フィリピンへ発つ日。成田の搭乗受付口へと到着すると、受付時間を2分ほど過ぎてしまっていた。成田まで来る電車での移動に、予想以上に時間がかかってしまったためだ。「数分の遅れだし席に予約はしてあるから大丈夫だろう」と、友人と共に搭乗受付口へと急いだ。すると、もう既に私達のシートはキャンセル待ちの人に売ってしまったのだと受付員が話す。つまり、彼がそのとき言っていたのは、私達が銃数万円をかけて成田までの旅行を楽しむチケットを買ったということだった。
そこで、少しいや結構な時間、私達を飛行機に乗せてもらえないか、いや載せるべきだと、二人がかりで話をしてみたが全く聞き入れてもらえない。なぜなら、彼らの利益はもう既に、私達ではなく他の客によって満たされていたからである。彼は、私達が飛行機に乗れないことで何の不利益も被らない。そのことが、あのとき交渉にもならなかったことの大きな要因だったと思う。
● 模擬国連活動(成功体験)
学部時代に所属していたサークル模擬国連で、問題解決を目指す様々な分野について各国大使を模擬するという活動を行っていた。
なかでも一番心に残っているのは、平和構築の議題において、グルジアとしてロシアと交渉したときのことだ。グルジアにとって脅威の隣人であるロシアとどう対峙すればよいのか、初めはとても悩んだが、結果的には、ロシアの利害を予めきちんと調査しておくことで、交渉の土台に乗ることができたうえ、加えてグルジアにとって望ましい結果も得ることができたのだった。