今回は、絶対王政下にあった16世紀末から18世紀末のフランスの社会・政治体制、「アンシャン・レジーム(旧体制)」のフランス語と、

それに関連するフランス語の表現にを紹介します🇫🇷

 

「アンシャン(ancien:古い)・レジーム(régime: 体制)」とは、フランス革命以前のルイ王朝下の絶対王政の社会・政治体制のことです。

 

 

学校の教科書などで、こんな風刺画に見覚えのある人も多いのではと思います。
右から、貴族、聖職者、平民が描かれており、当時の税金制度や政治参画など、さまざまな点においての身分間での不平等が表されています。
アンシャンレジームは国王を最高位とし、第一身分、第二身分、第三身分の3つの身分階層が位置づけられています。
 
第一身分は聖職者(clergé:クレージェ)、第二身分は貴族(noblesse:ノブレス)で、この二つは特権階級、全人口の約2%で、納税の義務などが免除されていました。
貴族:noblesseは、当時の状況とは違い現在では「身分の高いものには社会的責任と義務がある」という意味の「ノブレス・オブリージュ」などの言葉でも知られています。
 
第三身分は « Tiers état (ティエーゼタ)»と呼ばれ、市民や農民などの平民でした。
第三身分には色々な層がいましたが、その中で権力を持ったブルジョワジー達がフランス革命をきっかけに権力を握ります。
 
 
聖職者: clergéに関連する単語に"clerc"(クレー。最後のcは発音せず、clairと同音異義語)があり、
これも聖職に携わるもの、聖職者という意味。

clerc : ①教会の業務に携わるもの。聖職者。
② (公証人、弁護士、執行官)の書記。
この単語の対義語は"laïc"…聖職にかかわらない者。
 
clercを使った表現に"pas de clerc"という16世紀の表現があります。
↓フランス語での詳しい説明。
 
このページを参考にさせていただくと、
本来は①の聖職者の意味だったが、この表現では②、法律関係の職業での書記の意味。
彼らは一人前になるため書記の業務に従事しるが、novice(初心者、見習い)とみなされている。
したがって、経験不足の彼らは、勉強していく中で多くのミスをおかす存在だと考えられる。
"pas de clerc"で"pas(一歩)"の単語が使われているのは、
他の実在する表現"faux pas": (社交上の言動の)過ち、過失、失策ーこのフランス語の表現は英語でも使われているーに擬えているから。
 
要するに、失態、ミスを犯す、という意味です。
 
現在読んでおり、この記事を書くきっかけになった谷崎潤一郎の『痴人の愛』仏語版の該当する節を引用します。
 
"Si demain je n'avais aucune nouvelle, j'irai la rechercher ; il n'y avait pas lieu, si j'en arrivais là, de continuer à faire l'obstiné, ni de tenir en compte du qu'en-dira-t-on; c'est cette obstination-là qui m'avait fait faire un pas de clerc.
明日までに誰からも連絡がなければ、彼女に会いに行こう。状況がこのままなら、意固地になっていてもしようがない。他人がどう言おうと関係ないのだ。このつまらない意地のせいで私は失態をおかしてしまった。
 
こんな感じでしょうか。原文が手元にないので確認できず...