「最近、いろいろあって、試験勉強に対するモティヴェーションが上がりません。何かやる気の出る方法を教えてください」という質問がありました。


プライヴェートな出来事であれば、先人たちが編み出しているものをいろいろと試せばいいと思います。


しかし、試験勉強をする目的を考えたら、やる気が出ないのであれば、やめればいいということになります。


冷たい言い方になるかもしれませんが、それが心身のリフレッシュを図る最良の方法です。





教養を深めるためでない限り、試験を受けるということは、合格して専門家又は専門部署の要員となり、実務に就くためにやることです。

あなたのアドヴァイスを受けて、トラブルや悩みが解決した時、煩わしい手続が無事に終わった時のクライアントたちの笑顔を早く見たくはありませんか?

そうであれば、個人的な悩みとは切り離し、合格出来るだけのレヴェルを本試験終了まで維持する段取を粛々と進めるだけのことです。


ですから、敢えて答えるなら、強い使命感こそがモティヴェーションUPの鍵ということになるでしょう。



そうは言っても、きついものはきついという方もいると思います。その場合は、気持の切り替えが難しいということですので、一旦勉強から離れて、悩み解決に全力を注いだ方がいいでしょう。

その年は試験を断念せざるを得ないかもしれませんが、「急がば回れ」と言いますか、懸案事項を払拭してから取り組んだ方が、そういった方にとっては合格への近道となります。


試験勉強をすることに迷いが生じている方は、今一度、その趣旨・目的を思い起こして、自分の置かれた状況に合った的確な判断を下していただきたいと思います。
前回のテーマについて、もうひとつ注意点を書いておきます。

それは、抱える情報量が多ければ多いほど、その中身は薄くなるということです。

情報をぎっしり詰め込んで勉強すると、心地よい疲労感と安心感、充実感が生まれますが、それを合格レベルまで高めたまま本試験終了まで維持するのがどれだけ大変か。

全体を回す時間について、基本+応用で10とした時に、基本+応用+αも同じ10だとしたら、見た目は情報量も充実して効率的に回しているようですが、実際はその「効率」の名の下に必要な基本知識と応用力が削ぎ落とされることになります。

基本が疎かになると、そこからの応用力も養われませんので、初見の問題に当たったときにパニックになります。

しかし、「自分は充実した勉強をしている」という錯覚があるので、答練や模試で間違った部分は知識の上積みでカバーしようとし、本試験当日までそうしたことに気づかないことが多いのです。

その結果、本試験の問題が以前テキスト等で見た文章と似ている表現だと正解が分かった気になるのですが、基本+応用の部分がカットされていると、消去法が使えないので何の対策も立てられず、見当はずれの知識を当てはめてみたりヤマカンで答えてしまったりして、「AとBのどちらかだというところまでは分かったのに・・・」と試験終了後に後悔することになります。で、実際の答えはDだったりするのです。

基本に徹していると、初見の問題が出た時に、そこからの応用であるものか、そうでない枝葉末節のものかは、簡単に見分けがつくようになります。

ですので、前回の通り、変な誘惑に負けることなく、基本知識の習得の徹底とそこから応用する思考力の鍛錬に努めて下さい。
「答練などを受けたり、新聞の記事を読んだりして、知らない知識が出てくると、どれも試験に出そうで、覚えなくてはという不安感でいっぱいになります。」という悩みを訴える方がいらっしゃったので、お答えいたします。



本試験に必要な知識は過去問を繰り返しこなすことで身につけ、それを基本として未知の問題に対処する応用力を答練や新作問題で養うということは、以前の記事に書いてありますので、一読すると御理解いただけると思います。

とはいえ、いろいろと未知の知識が出てくると、それをどんどん吸収していった方が、試験対策としての安心感と「私はこんなことまで知っている」という優越感が生まれるのも理解できます。


実は、そうした誘惑に負けることなく、「基本に徹する」という方針がブレないようにすることこそが、試験合格への重要なカギとなります。もちろん、法改正部分が新知識として必要なのは言うまでもありませんが、それ以外の枝葉末節にはこだわるなということです。特に白書や統計関連は深入りしすぎると大変なことになりますので注意してください。


知識は増えれば増えるほど、合格するためのレベルを本試験終了まで維持する努力を更に足していかなければならなくなります。

そんな時間の余裕が、この直前期にあるのでしょうか。

それよりも、基本知識を固めてそこから応用できる思考力を養う方が、効率的な上に実務で必要な事務処理能力の向上に直結します。

新聞の記事も、選択式問題の「一般常識」に関して、白書等を読んでいない場合に役に立つ時がありますが、それも時代の流れや世間が持っている問題意識を把握することで問題文の趣旨の理解が早くなるという程度のことで、得られる知識としては基本的内容を超えるものではないので、特に気を張って読む必要はなく、さらっと読み流すくらいで構いません。


今後、実務でいろいろなタイプの相談を受けることになると思いますが、社労士としての専門領域だけでは収まらないことが多く、そのひとつひとつについて専門知識を正確に持って臨む余裕はありません。

もちろん分からないことがあれば、その場で相手に教えてもらったり、資料を調べて提示したり、預かりにして調査の上後日回答したりしますが、まずは相手の気持ちや考えを十分聴いて、そこから自分の知識や経験をもとにアドバイスをしたり、相手が持っている知識や想いにアレンジを加えて気づきを得てもらったりということをすることになります。

そして、そこで新知識を得た場合は、今後も実務に直結するものに関しては業務時間外でしっかり勉強してフォローすればいいし、そうでなければ、一般的事例に引き直して、資料としてストックしておけばいいと思います。

試験もその予行演習だと思って、まずは基本の徹底、そこから応用力の鍛錬というプロセスで勉強していってみて下さい。