私より20歳くらいは年上だろうか?
品の良い優しそうな同室の女性
仮に南さんとしましょうか
彼女のベッドの横の椅子に座り
3月にしこりに気がついた事
そこからの今日までの出来事を話しました
これは個人情報
けれど私は初対面の南さんに話しました
中途半端になった彼女の自己紹介の時
彼女の中に嵐のような何かを感じたからです
普通の挨拶ではない違和感
怒りや戸惑いのようなもの
そしてそれを聞いてほしいのだと
そんな気がしたので自然と
自分から彼女に歩み寄ったのだと思います
南さんの横には
もう一人の入院患者のBさんがいます
だから話したら筒抜けです
無防備な愚か者かもしれません
それでも今、必要だと思うから私は話しました
一通り話すと今度は南さんが自分の話をしてくれました
スマホを開いて写真を見せてくださいました
少し前までは元気で四国に旅行に行ったこと
それは、四国のお遍路旅の下見だったこと
帰ってきて具合が悪くなり、診察をしたら
そのまま入院になったこと
彼女の病名は内臓の癌でした
家から近い病院だから、診察に来たけど
いきなり入院になったこと
検査で食事が出来なくて
やっと食事が出来るようになったこと
当たり前の毎日が、当たり前じゃなくなる
ああ、この人も私と同じ、嵐の中なのだ
不安と戸惑いと怒りと悲しみ
それを誰かに聞いてほしい
ただ、ありのままを受け入れてほしい
聞いてもらうことで
自分の心を落ち着かせたいのでしょう
一通り話してから
金毘羅さんに行った写真を見せてもらい
私も行きましたよ
五人百姓の飴好きなんです
なんて楽しく話しました
家族を大事にして生きていて
月日を重ね、少し自由になった時の罹患
私は無力だけど、同じ罹患した立場の者として
南さんの話を聞くことで彼女の整理がつくのなら
もう少しお話を聞こう
そしてそれは多分
私自身の気持ちの整理にもなると思いました
夕食
パジャマもピンク
どんだけピンク好きなのか![]()
食事の後
お茶が飲めるスペースへ行きました
すると同室のBさんが先にいらっしゃいました
ああ!という感じで挨拶して、無料のお茶を汲み
やはり促されるように隣の椅子に座りました
彼女は整形で入院していて
股関節の問題を不安に思っておられました
そんな話をしていたら、南さんもお茶を取りにこられ
3人で家族の話とか、まあ色々話して盛り上がりました
それを見た看護師さんがもうそんな仲良しになったんだね![]()
と言われたので
そこで私が発したのは
「そうよ、私達ガールズトークしているの!」
でした![]()
罹患したことも
股関節のことも
自分が辛い、でも家族に迷惑かけたくない
それは、2人と話して痛いほどわかりました
私も同じですから
短い時間でしたが
笑ったり励ましあったりと
楽しい時間が過ごせました![]()
翌朝
朝食を食べたら
主人が迎えにくるので帰る用意をします
Bさんも私も今日、退院
南さんだけが残ります
4人部屋に一人きり
寂しいだろうな・・・
私は南さんが席を外している時に
主人が来たので挨拶は出来ませんでした
主人の後に続いて病院から出て駐車場へ
ふと、何気に振りかえって
先ほどまでいた病院を眺めると
なぜか、その時の私には病院には見えませんでした
私の目に映ったのは
果てしない砂漠だったのです
どうして気づいてしまったのか
そこには1本の境界線があるのです
健康だった時の自分がいた所と
今、私のいる場所
間にある境目
私だけ、こちら側に来てしまった
なぜ、こちら側に来てしまったのだろう
泣くのを我慢する変わりに
私は唇を嚙みました
越境してしまった私
私はこれから
どこへ向かっていくのでしょう
えりにゃ![]()

