吾輩は猫ではない。




今日も7時10分に目覚まし時計が鳴る。7時ちょうどにセットしたつもりだったのに。

ベッドの中で一度伸びをしてから携帯の画面を確認する。
案の定誰からも連絡はきていない。目の前の世界から色を失って3ヶ月が経とうとしていた。


顔を洗い、コーヒーの準備をする。
朝ごはんはいつも食べない。一日活動するエネルギーが出ない?そんなもの知ったこっちゃねえ。もう成人だ。自分の体は自分が一番わかる。

コーヒーの香りが部屋に充満する頃、もう会社に行く準備は整った。あとはコーヒーを飲むだけ。


"特別"なんてない。いつも通りの日常が迫る。


8時30分に出勤し、12時にお昼の休憩1時間挟み、また仕事へ戻る。17時30分に仕事は終わるが上司の顔色を伺ってから、17時40分には空気のようにその場から立ち去る。
稀にパリピな先輩から「もう帰るんだ。早え〜。俺も早く仕事終わらせよ〜。」とイヤミではない嫌味を投げかけられるが、今日は何事もなく立ち去れた。



自分の自由な時間は休みの日のみ。
それまではやりたくないこともして、給料という形で自分の時間を会社に売る。
このままだと一生社会から首輪をつけられたイヌになってしまうな。

それなら自由な猫の方がましか。気分が落ち込んだ時に不意に道端で出会い、寂しいと思っている人の側にいて、用がない場所には行かない。
程よい距離感で、程よい清潔感。シルエットも美しい。あの目からは想像のつかない綺麗な声。



自由になりたい。



だが、吾輩は猫ではない。