がん専門A病院に入院したのは、2014年4月7日。
夫とタクシーで病院に向かいました。
4月7日から数日検査をしてから、その1週間後に手術をするという話です。
執刀は医療ジャーナリストのBさんにご紹介いただいたC医師ではなく、M医師が担当することに決まりました。
4月7日の検査の結果、M医師からはこんなお話がありました。
・ある程度進行しているがん
・進行しているので、腹腔鏡での手術だと撮りきれない可能性があるため開腹手術を行う
・ステージは2もしくは3が疑われる。リンパへの転移がある場合、ステージ3になる
・しかし、お腹を開いてみないと本当のステージは分からない。もしかすると腹腔内の他の臓器に転移しているかもしれない。その場合は残念ながらステージは4。手術はできない。ただしその可能性は現時点ではあまり高くないと思われる
・手術する場合、胃は2/3は切除する予定
・切除した胃と小腸をつなげるバイパス手術を行う
もうここまで来たら、ドクターにお任せするしかありませんが、安堵と不安がないまぜになっていたことを覚えています。
安堵:夫の体調不良の原因が判明し、手術も決まり、このA病院にお世話になることができた
不安:開腹してみないと手術ができるか分からないと言われた、予後はどうなるのか etc...
そしてさらなる問題は、私たちには幼い子どもがいることです。
当時子どもはまだ4歳、パパが具合が悪いのは分かっていましたが、がんがどんな病気なのかは理解はできません。
でも私は、4歳の我が子に分かる範囲で「告知」をしました。
「パパがいなくてさびしいね。パパはね、お腹が痛くなる病気なんだよ。お腹の中にがんという悪いものができているので、それを取る手術をするんだ。だからしばらく病院で暮らすけど、手術が終わって少し元気になったらおうちに帰ってくるからね」
「うん、わかったよ」
幸い保育園に通っていたので、毎日延長保育をお願いし、夫の見舞いと両立させていました。
なにか重たいものを背負わせてしまった気がして、心が痛みます。。。
そして手術当日、4月14日を迎えました。
快晴。
朝9時から手術が始まります。
「手術はだいたい4時間はかかりますから、奥さんは病室でお待ちください。術後、もしくは奥さんのご判断が必要なことがあれば携帯に電話をしますから」と言われていた。
「奥さんのご判断」というのは、がんが腹腔内に転移して手術ができないときに「手術できませんがいいですか?」と判断を求められるということだ。
そんな電話が来たらと思うと緊張する。
長い待ち時間のあるこの日のために、私は以前から読みたかった本を選んでおきました。
ジェイムズ・ヒルマン著
ヒルマンは、ユング派の心理学者。
人は生まれながらにして誰でも「魂」がある。
その魂とは何か。みたいな内容の本。
最初の2時間くらいは興味深く読んでいたのですが、だんだん内容がつかみづらくなり「これはどういう意味なんだろう?」と考え込んでいたところ突然私の携帯が鳴り、ビクっと飛び上がるほど驚きました。
(そのくらい読書に集中していた)
電話はM医師と共に手術に臨んでくださっているI医師からでした。
「医師のIです。まだ手術の途中です。順調に進んでいますがあと2時間くらいはかかりそうです。悪いところは取れると思います」
「そうなのですね。ありがとうございます!引き続きよろしくお願いいたします」
よかった!
「開腹してお腹全体にがんが散らばっていたら手術できない」と言われていたんだもの。
2時間経過した段階で電話がなかったから大丈夫だとは思っていたけど、ドクターから手術を継続していると言われたら安心したわ。
それから約2時間経過したら看護師さんが病室に来てくれました。
「手術は無事終わりましたよ」
「ありがとうございました!!」
夫は術後のリカバリーに入るのでしばらく会えないそうですが、その間に執刀医のM医師から私のみにフィードバックがありました。
内容はざっとこんな感じでした。
・予定通り胃の2/3を切除した
・胃の周囲のリンパにもがんがあったので、リンパも取り除いた
・それ以外の臓器には肉眼で見える範囲では転移がなかった
・よってステージは3
・術後は取りきれない(目に見えない)がんを叩くため抗がん剤治療を勧める。抗がん治療は内科のドクターが担当するが別の日に一度話をしてください
といって、切除した胃を広げた写真を見せられました。
黄色かったり赤っぽかったり、色が均一でなく、胃の表面がデコボコしているように見えました。
それにしても、いまできる治療(がんの切除)ができて本当に良かった!
術後3〜4時間して夫が麻酔から目を覚ましました。
開口一番
夫:「手術はできたのか?」
私:「うん、できたよ、安心して。ステージは3。リンパに転移がありそれも取ってもらったよ」
夫:「そうか、よかった」
夫はそう言ってまた目を閉じ、眠りの世界に戻って行きました。
よほど安心したのでしょう。
寝顔は赤ちゃんのように安らかでした。
(続く)