上京したものの、仕事のストレスや悩みで退職を考えていました。周りを見てみれば、押し活やオタクな趣味を持っている人が一番充実した人生を送っているようにも見えました。自分もオタクになれば、仕事を続けられる、そう思った。

同期に相談しました。

彼は紙パックのコーヒー牛乳を片手に、真剣な眼差しで私の悩みを聴いてくれました。思いの丈をぶつけるが、複雑な悩みは上手く言葉に出来ない。張り詰めた空気は、コピー機から出てくる紙の焼けた匂いを孕んで、重く感じた。しじまを斬り裂くかのようにコーヒー牛乳のストローに空気が入り、「ボコボコ、ボコボコ」と彼は紙パックを飲み干す。そして、人差し指でメガネをクイッと上て、「ワイに任せろ」と頼もしい返事をくれた。

仕事を上がって、靴の踵が斜めに擦れ減った足で日比谷線に乗り、秋葉原に到着しました。

軽く食事をしながら、彼は私のオタクとしての素質を測りました。私はアニメに詳しく無い。アイドルも興味がない。ゲームは下手。

相談した結果、任天堂3DSとRPGゲーム「ドラゴンクエストXI」をお勧めされ、買いました。ドラクエの主人公は「はい」と「いいえ」しか言えない、でも「はい」と答えないと話が進まない職場の私の分身のようでした。