「希望退職が実施されるらしい」

 

そんな噂がたってから2~3日しないうちに全社員が集められる。社長から淡々と希望退職を募るに至った理由とその概要が説明される。その後、会長から再度説明があった。会長は、親会社から送られてきた者。言い出したのは「従業員がバカだから、無能だからこうなった」と。違うはずだ!違法行為が繰り返されていたのは従業員の一部。ほとんどの従業員は被害者だ。にもかかわらず、従業員が無能だからこうなったと言い放った。

 

「やめるのも地獄、残りのも地獄。よく考えて決断しろ。」と言い放たれる。

 

もちろん、この発言ですぐに退職を決断する人もいた。僕はこの挑発に簡単には乗らないと思っていた。

 

その後の説明会等で、とある役員が言ったのは「計画通りにいけば、2年後には元に戻る」という話。先に結果を述べてしまうが、2年どころか5年が経過しても全く戻っていない。これも従業員が無能だからという。違う、経営責任が不明確だからだ、経営者の判断ミスだからだ。

 

結果として僕の今の決断はこうした経緯によるものだが、希望退職者を募集した時に退職しない選択をした理由はこれだ。

 

「自分は社外で自らの力で仕事を切り開くことができるだろうか?」

「自分を売り込んだことで今の自分を買ってくれる会社があるだろうか?」

「その会社が自分の今の最悪な現状を良くするだけの会社となる保証はあるのだろうか?」

「今やめることで家族への影響は最小限で抑えられるだろうか?」

 

そうしたことを何度も自問自答した。その答え場すべて「No」だった。

これでは辞めることはできない。

 

よってこのときは希望退職に応じないことにした。