適格インボイスは悩みのタネ。下請けイジメ? | campusxxのブログ

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適格インボイス制度

 国税庁の説明資料である。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

 

適格インボイス制度により、これまで免税事業者の利得となっていた益税部分を適切に納税してもらおうという主旨は、一応、理解できる。しかし、この制度の規定の仕方が気に入らない。

「仕入税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が必要である」(A)という規定の仕方である。

なぜ「適格請求書発行事業者でなければ、消費税を上乗せした金額での請求はできない」(B)としなかったのか?

(A)のような規定の仕方をするから、事業者間で混乱が生じる。

 

例えば、100千円の売上に10千円の消費税を加えた110千円の請求をしていた免税事業者(乙とする。)は、令和5年10月以降も、同様に110千円の請求をすることができるのである。しかし、乙から仕入れた甲(課税事業者)は、乙からの仕入について消費税の税額控除を受けられないのである。

 ここで甲は悩むのである。概ね下記の3択~4択であろう。

①今まで通り110千円の請求をしてもらい、甲が消費税部分を実質負担する。

②乙に対して適格請求書発行事業者登録を要請する。

③乙に対して消費税を上乗せしない金額で請求するよう要請する。

④乙からの仕入は税額控除できないから、もう取引を止める。

 

すると、「下請法違反です!」といって怒られる可能性が生じる、と国は脅しているのである。

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/download/duty_invoice_s03.pdf

「発注者(買手)が下請事業者に対して、免税事業者であることを理由にして、消費税相当額の一部又は全部を支払わない行為は、下請法第4条第1項第3号で禁止されている

「下請代金の減額」として問題になります。」と言っている。

 

しかし、これは契約を110千円で締結しておきながら100千円しか払わない場合に違法になるのであって、100千円で契約すれば問題にはならないはずである。(たぶん。)なので10月以降の甲乙間の取引価格をどのように決めるか、そろそろ話合いが必要になるのである。既存契約がある場合には、契約をいったん9月末までとし、10月以降の条件については契約条件を更新しなければならないと思う。

 

ここで、もし消費税法の規定の仕方を(B)「適格請求書発行事業者でなければ、消費税を上乗せした金額での請求はできない」のようにしていたら、どうだろうか。

10月以降は、免税事業者は消費税を乗せた請求ができないから、乙が免税事業者のままであれば、甲に対して100千円の請求を行うことしかできず、甲に悩みはないし、下請法違反を心配する必要もないのである。

ところが、実際には(A)「仕入税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が必要である」という定め方をしているため、甲乙間で余計な悩みのタネが生まれる。

国は、国民と事業者にワザと悩みのタネを植え付けたのだろうか?