はじめまして。CampusChem(キャンパスケム)です。
僕はかつて、国立大学の医学部医学科に在籍していました。しかし、医学部を辞めて理学部へ進み、最終的には化学の博士号を取得しました。
その後は量子化学・計算化学を専門に研究し、大学では9年間にわたって、化学の講義や学生実験を担当してきました。
医学部から理学部へ。そして、化学の研究と教育の世界へ。
こうして経歴だけを並べると、迷いなく自分の道を選んできたように見えるかもしれません。しかし実際には、進路に迷い、自分の選択を何度も振り返り、ときには強く後悔しながら歩いてきました。
医学部に入れば、将来は安心なのか
医学部は、大学受験の世界では特別な位置にあります。
成績のよい高校生が医学部を勧められることは珍しくありません。本人が強く希望していなくても、学校の先生や保護者から、
「その成績なら医学部を目指せる」
「医師になれば将来は安定している」
「せっかく勉強ができるのだから、医学部に進んだほうがよい」
と言われることもあるでしょう。
もちろん、医学や医療に関心があり、医師として人の役に立ちたいと考えている人にとって、医学部は魅力的な進路です。
しかし、「入試で合格できること」と「その学部や職業に向いていること」は、同じではありません。
僕自身、受験勉強をして医学部に合格することはできました。しかし、入学したあとで、医学という学問にも、医師という職業にも十分な関心を持てていなかったことに気づきました。
医学部に進むことばかりを考え、その先にある長い学生生活や、医師として働く自分の姿を、深く考えていなかったのです。
進路は、偏差値だけでは決められない
大学受験では、どうしても偏差値や合格可能性が重視されます。
けれども、大学は合格したら終わりではありません。入学後には専門科目を学び、その先には就職や職業生活があります。
医学部であれば、医学を学び、臨床実習を経験し、国家試験を受け、多くの人は医師として働くことになります。
理学部であれば、すぐに職業へ結びつく知識だけではなく、自然界の仕組みそのものを探究します。大学院へ進学して、研究者を目指す人もいます。
どちらが優れているという話ではありません。大切なのは、本人の関心や性格、望んでいる生き方に合っているかどうかです。
「成績がよいから医学部へ」
それだけで進路を決めてしまうと、入学後に本人が苦しむことがあります。僕は、そのことを自分自身の経験から痛感しています。
保護者の方に知っていただきたいこと
お子さんの将来を思えば、安定した職業に就いてほしいと願うのは当然のことだと思います。
医学部を勧めること自体が悪いわけではありません。ただ、その前に、
「本人は医学に興味があるのか」
「医師という仕事をしたいと思っているのか」
「人と向き合い、その健康や生命に責任を負う仕事を望んでいるのか」
ということを、ぜひ一緒に考えていただきたいのです。
高校生の段階で、将来の職業を完全に理解することは難しいでしょう。それでも、大学名や偏差値だけではなく、その学部で何を学び、その先にどのような仕事があるのかを調べることには、大きな意味があります。
また、迷っている本人に、すぐ答えを出させる必要もないと思います。
進路に迷うのは、真剣に将来を考えている証拠でもあります。親子で意見が違うときこそ、「どちらが正しいか」を決める前に、本人が何に関心を持ち、どのような人生を望んでいるのかを話し合ってほしいと思います。
このブログで書いていきたいこと
このブログでは、僕自身の経験と、大学で学生を教えてきた経験をもとに、主に次のようなテーマを書いていきます。
・医学部に向いている人、理学部に向いている人
・医学部や理系学部を選ぶ前に考えておきたいこと
・大学化学の学び方
・大学化学でつまずく学生に共通すること
・研究者や大学教員を目指すということ
・進路を変更することと、その後の人生
・僕が医学部を辞め、化学を選んだ理由
医学部を辞めたことについては、今でも「これで本当によかったのだろうか」と考えることがあります。医学部を辞めて化学へ進んだからこそ得られたものもあれば、失ったものもあります。
したがって、僕は「医学部を辞めて正解だった」と単純に言いたいわけではありません。また、医学部進学を否定するつもりもありません。
ただ、一度医学部に入り、そこを辞め、別の学問の博士になった人間だからこそ伝えられることは、きっとあると思っています。
進路を決めかねている受験生の方や、お子さんの進路について悩んでいる保護者の方にとって、このブログが少しでも考える材料になればうれしいです。
