春眠昼飯も覚えず。
なぜ何時に寝ても起床が昼を過ぎるのか。
近頃はその辺のコアラよりも優雅な生活を送っている。

さすがにこれだけ寝ると脳味噌が腐ってくるのか、頭の中が虫歯だらけになったように鈍く軋む。

嗚呼、禁断症状だ。

ほうっておくと二度寝をしかねない(これ以上は脳味噌が耳から流出しない保証はない)ので、珈琲を入れて無理やり起こす。

ピアノは朝の日課だ。音が割れた悲痛な響きで悲愴を弾き流すと少し喘ぎながらなんとか浴室に体を運ぶ。
とはいえ、浴室までの道のりが険しいわけでもなく、昨日のうちに殺害しておいた遺体を運んでいるわけでは決してない。

長い間横になっていると、心臓が深刻なモラルハザードに陥るというだけである。

嗚呼、面倒臭ぇ。血液を全身に送るのも面倒臭い。
粘度のある液体が脈打って体内を流れていることを想像すると皮膚の下がむず痒くなるのは俺だけだろうか?

雨足が強くなり、初めて雨が降っていることに気づく。

響くなぁ。やっぱり風呂は。

二十歳にして風呂で唄うのも悪くない。

徐々にボリュームを上げていく。


雨ニモマケズ、風ニモマケズ。

君に届くだろうか?


心のなかで叫ぶ。


「聞いて下さい。モーツァルト'魔笛'より「夜の女王のアリア」。」