毎度ありがとうございます。

 

さてさて。

 

昨年、つまり令和5年の秋くらいでしょうか?

 

実家から

「歌舞伎のCDが出てきたから取りに来い」

と連絡を受け

まぁ今となっては

さして興味はないのですが

とりあえずどんなCDなのか見に行くと

渡されたのがコレ。

 

 

あぁなるほど。

僕が中学に入るかどうかの頃に買った

『勧進帳』のCDですな。

(中学になるかどうかでこんなCDを買うなんて「渋い」を通り越して、もうアタマがオカシイですね)

昭和60年12月

先代の團十郎さんの襲名披露

京都南座での顔見世の昼の部を

収録したものですね。

 

まぁ

買ったはいいが

たいして聞かなかった気がします。

 

というのも

そのちょっと前に

歌舞伎座百年記念として

先々代團十郎襲名時の

『勧進帳』のカセットテープ(!)が売り出されており

こちらが断然にすばらしく

こっちばかりを聞いていたのでした。

 

上記のCD

配役は

團十郎の弁慶

孝夫(現・仁左衛門)の冨樫

扇雀(後の坂田藤十郎)の義経で

いま考えれば結構な配役ですが

当時としては

どこにでも転がっている

珍しくもなんともない配役で

また團十郎さんも孝夫さんも

40になるかならないか

扇雀さんだって

還暦にも届かず

したがって

技量としても未だしの部分が多く

十一代目團十郎絶頂期の『勧進帳』から比べると

やはりどうしても見劣りがしてしまうのでした。

このカセットの配役は

十一代目團十郎の弁慶

八代目幸四郎の冨樫

七代目梅幸の義経

しかも三代目左團次の口上というオマケがつく

ほぼ完璧といっていい配役。

とはいえこの3人も

昭和37年の収録当時では

團十郎と幸四郎が50代

梅幸が40代後半といったところでしょうか。

CDとカセット

出演者の年齢がそこまで離れていないのに

これだけの魅力の差が出てしまうのは

「鍛え方が違う」

といってしまえばそれまでですが

それ以上に

「平均寿命の違い」が大きいのではないのか?

と思うのですよ。

ちなみに

昭和37年の男性平均寿命は67.23

昭和60年の男性平均寿命は74.78

この「平均寿命」というものについては

いろいろな論説があるところですが

当時の世相や意識についての

ひとつの指針にはなります。

で、このふたつの数字を見ると

7歳以上の差があるのですよ。

つまり「芸の円熟」までの残り時間に対する

役者の意識が違うんです。

僕も40数年生きてみて

つらつらおもんみるに

「人間って寿命の差がどんなにあっても、その一生のうちで成し遂げられることって、驚くほどの差はない」

ということです。

つまり寿命が延びたということは

昔の人が50年で成し遂げていたことを

今の人は80年かけて成し遂げているだけに

過ぎないんですよ。

ということは

平均寿命が延びることによって

芸の成長がゆっくりになるのも

これはこれで仕方のないことで。

実際、先代の團十郎さんも

病気の前後からはぐっと良くなりましたし

(僕はよく「成田屋もやっと藤間から堀越の顔になった」と表現しました)

仁左衛門さんだって

若い頃より80過ぎた今のほうが断然カッコイイ。

坂田藤十郎さんだって

歌舞伎座再開場後の義経の

光り輝くばかりの風格は

歌右衛門梅幸にまったくひけをとらない名品でした。

まぁまぁ

ですからこのCDも

「名優までの一里塚」ってことで……

 

いやいや

話の本題はそんなことじゃないんですよ。

 

このCDジャケットの裏面には

収録時の配役表が出ておりまして。

 

 

はい。

なつかしい名前がたくさん出ています。

三味線の巳太郎さんなんてもちろん先代。

この興行ではたしか

前の幕の『鳴神』の大薩摩も弾いていらっしゃいました。

お元気だったんですね。

役者さんだって

半数ちかくが鬼籍に入られました。

團十郎、扇雀、吉三郎、佳緑……

當十郎さんはまだご健在なんでしょうか?

お元気なのは孝夫(現・仁左衛門)さんをはじめとして……

智太郎(現・鴈治郎)、浩太郎(現・扇雀)、十蔵(現・市蔵)、松之助、千代丸……

 

ん?千代丸?

 

これってもしかして……

 

と調べたら……

やっぱりそうでした。

今をときめく愛之助さんの

前名でした。

 

昭和56年に

十三代目仁左衛門さんの

部屋子になって初舞台を踏んで

まだまだ日の浅い頃だ。

(ちなみに初舞台も『勧進帳』だったようで。そのときの弁慶は故・辰之助さん)

 

へぇ……

これは貴重だ。

 

でもまぁ……

 

「貴重」とは言っても

CDではその舞台姿は

わかりませんがね。

 

だって

この『勧進帳』の太刀持ちは

しどころは多くても

セリフはありませんから。

 

「あの愛之助さん」の

幼き日の音源。

このCDは

それだけでも貴重ですな。

 

ただこれだけを言いたいために

こんなに紙幅を費やしました。

ごめんなさい。

興味のない方

とくにごめんなさい。

言いたいことは

これだけなんです。

 

 

 

次回もよろしくお願いします。

 

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