　6時45分起床。やはり初めての入院ということで早く目覚めてしまった。K子も３時からねられなくなったという。

　快晴。気温は氷点下10度だった。

　９時過ぎ家を出る。ローソンでイアホンを購入。iPadで音楽や朗読を聴くためだ。

　10時病院着、患者支援センターで身長と体重を測り、薬剤師や看護師の質問をうける。腕にバーコード付きのバンドをはめられる。

　病室は８階でデイケアの部屋でしばし待たされる。諏訪湖が一望の下に見える。遠く雪を頂いた。北アルプスの穂高。看護師に病室へ案内され、ここでK子とは別れる。

　部屋は4人部屋で一人は寝たきりらしい老人である。ときどきタンのからまったような声をあげ咳をする。夜悩まされそうだ。老婦人によろしくと挨拶したら、私は今日で退院ですという。もう一人も老婦人である。

　若い看護師は感じがよい。説明も的確だ。老人の患者に慣れているのだ。

　11時半点滴。初めてだ。正午食事。ぼくの病気を考慮してカロリー計算をした料理だ。今回は一泊だが。22日の手術後は２週間程度の入院になるから体重は減るだろう。両親が入院したときの病院食はいかにも不味そうだったが、普通に美味しく食べられた。

　透視検査が予定よりも時間が早まったと、午後１時前にストレッチャーでレントゲン室に運ばれる。医療ドラマで緊急病棟へ運ばれた患者が手術室へ向かうときに廊下の天井のライトなどが飛び退り、ストレッチャーを押す看護師が患者目線で映し出されるが、まさにあれだと可笑しくなる。

　脊椎のレントゲンを撮影なので、腹ばいにされ背中と尻半分を剥き出しにされる。医師や看護師は笑ったりしているが、何をされるのか、医師が何しているか見えないので恐怖である

　背中の脊椎に造影剤を打つようだ。少し痛いですよと医師がいい、尻の少し上のあたりに鋭い痛みではなく、重苦しい不快な痛みが体の奥に広がる。と、右脚が電気ショックを受けたように跳ねあがった。

　さまざまな角度からレントゲンが撮られる。台がすべすべしているので落ちないように医者や看護師が支える。看護師が腰を揺さぶるのはきっと造影剤を行き渡らせるためだろう。次は別の部屋でCTスキャン。

　１時40分ストレッチャーで運ばれて病室にもどる。看護師たちがめずらしい名前ですねという。バーコード付きのバンドをはめているし商品になったようだ。造影剤を打ってから３時間、４時20分までは安静にしていなければならない。少し頭を高くして、点滴の管を付けた状態でじっとしていなければならず、１時間は水分の補給もできない。トイレにも行けないので尿瓶を用意してくれた。

　看護師が体調のことを聞いてくる。前回は全身がカーッと熱くなったが、今回は前回ほどではない。造影剤は何万人に一人死亡することがあるようで体にさまざまな悪い影響を及ぼすようだ。

　安静にさえしていれば音楽などを聴くのは全然大丈夫と看護師がいうので、iPadに今朝買ったイアフォンをつけてYouTubeの朗読を聴くことにした。しかし、いつも家のベッドで朗読を聴き始めるやすぐに眠ってしまうようにすぐに眠ってしまった。これが狙い目だったのである。3時間もじっと目を開けてはいられない。

　目が覚めると１時間が経過していた。喉が渇いた。看護師に緑茶とミネラルウォーターを買ってきてもらう。造影剤を排出するために２本は飲んでくださいといわれたのだ。

　まだ２時間体は動かせない。YouTubeの朗読で１時間余の長さのを見つける。山本周五郎の「山椿」を聴くことにした。今度は眠らずに最後まで聴けた。いかにも山本周五郎らしい感動的な話である。しかしその感動を100%受け入れられない自分がいる。

　安静解除まで残り40分。次は30分前後の朗読を探す。菊池寛の『新今昔物語』より「好色成道」を聴く。

　夕食の時間までは坂口安吾「都会の中の孤島」と「ドストエフスキーとバルザック」を読む。

　午後6時点滴が外され、夕食が運ばれてきた。夕闇が降りてきて諏訪湖半のきらびやかな夜景が美しい。

1320ＣＴスキャン終わる。1420飲水可。YouTube朗読山本周五郎「山椿」菊池寛「好色成道」（『新今昔物語』）1620安静終了。1800点滴外される。夕食。

造影剤を打たれると右脚が跳ね上がった。（Feb. 16, 2023）